質疑応答
リアさんのあとについて20分ぐらい歩いたところで体育館ぐらいの大きさの部屋に案内され、その中央には10人掛けぐらいのソファが対面に置いてあり、間にはそれに合う大きいテーブルがあった。
ものすごく部屋の無駄遣いな気もするが、これぐらい大きい城だと自ずとこんな感じになるのかな。
案内されたままオレたち3人がソファに座りミコはソファの後ろで伏せになる、対面にはリアさんが座って三蛇華姫の3人はソファの後ろに立っていた……立っていたという表現でいいのかな。
オレたちが座るとメイドさんがオレたちの前にだけ紅茶と茶請けのお菓子を置いてくれた。そういえばこの世界に来て初めてメイドさんを見た。
「改めて、ヒーロさん。誘拐事件の件、ありがとうございました」
「いえ、オレたちはたまたま近くにいて、何も知らずに消しただけですから」
「それでも誘拐された女性たちが解放されたわけですから感謝いたします」
「そういえば、誘拐された女性ってそのあとどうでした? 精神的な面とか」
ウィネが対処してくれたおかげで大丈夫と思うが念のため気になったので聞いた。
「それがどの女性も口をそろえてボンヤリとした記憶しかないみたいで、ショック自体は受けていましたが後遺症があるとかはありませんでした」
「それは良かったです。ボンヤリした記憶というのはウィネが対処してくれたおかげです」
「そうなんですか」
「我が精神干渉で女たちの記憶を薄れるようにしてやったのだ。あと催眠状態でもあったから我が解除しておいたぞ」
「そんなことができたのですね。モデウィネさんもいろいろとありがとうございます」
「我のことはウィネで良いぞ。我もヒーロと同様リアと呼ばせてもらう」
ウィネがそう言うとシーさんが少し前のめりになって反応した。
「失礼ですよ! 魔王様に呼び捨てなんて!」
これに対してウィネが力を解放して答える。
「我にとって魔王などどうでも良い。我はヒーロさえ良ければそれで良いのだ」
「「「ッ!?」」」
リアさんはどうとも思っていないが、うしろの3人は動けないまでも結構な圧を感じているようだ。
まぁ、シーさんの言いたいことはわかるけど、ウィネの性格的にこうなるとは思っていた。
「ウィネ、力まで出さなくていいから」
「シー、あなたは黙っていなさい」
オレがそう言うとウィネが力を抑え、リアさんが指示してくれたことでシーさんは引いてくれた。
「ウィネさん、失礼しました。お好きに呼んでいただいてかまいませんので」
リアさんがそう言ったが、ウィネはすでに興味なさそうな表情をして紅茶を飲んでいる。
「実はウィネはこう見えてダンジョンマスターなんですよ」
「「「「えっ!?」」」」
これにはリアさんも驚いたようだ。
「どういうことですか? ダンジョンマスターが外に出ているのですか?」
ダンジョンマスターだけでなく階層主もウロウロしてるけどね。
「ウィネのダンジョンは変わってまして、階層主も含めて好きにしています。そもそも冒険者が攻略に来ないということもありますが」
「はは、私も長く生きていますが、ヒーロさんといるといろいろ常識が変わりそうですね。――ところで、今回の件でヒーロさんに褒賞金をお渡ししようと思うのですが」
「そうなんですか? もらえるものはもらいますが」
そう言うとリアさんがメイドに指示を出しオレの前にお金が入った袋がドサッと置かれた。これいくらぐらいだろ、たぶん相当だよね。
「1000万リシア入っています。もし足らなければ足せますが」
「逆にこんなにいただいてもいいのですか?」
「もちろんです。今回ですが最悪の場合ラーの部隊もオスヴァーズの手にかかる可能性がありましたので」
「そうですか、ではいただいておきます」
オレはその袋をインベントリにしまう。リアさんの前ではいろいろと隠す意味はないと判断したので力に関しては遠慮なく使うことにした。
「ヒーロさんは保管庫の能力をお持ちなんですか?」
「いえ、これは違う力です。詳しく説明すると長くなるのでしませんが」
「はぁ、そうなんですね。――いろいろとお聞きしたいことがあるのですが大丈夫ですか? 一国の主として確認しておかなければなりませんので」
「えぇ、話せる範囲であれば大丈夫ですよ」
と言っても、あまり隠すようなこともないけどな。アースターの話はさすがにできないけど。
「まず、誘拐事件の犯人側の魔族ですが、どのように消したんですか? それと洞窟も」
「こんな感じです」
オレは目の前にあったお茶請けのお菓子を1つ手のひらに乗せ消滅させた。
「ッ!?」「「「えっ!?」」」
「オレより弱ければこんな感じで一瞬で消せます」
おそらくリアさんは消滅の力を感じたかもしれない。お菓子を消すのなら本当の一瞬だから普通なら気づけないがリアさんほどであれば気づけるだろう、しかも視覚に頼らず感覚で見ているだろうし。
「なるほど、納得しました。その力であればオスヴァーズも跡形もなく消せますね。恐ろしい能力ですね」
「ちなみにですが、これは能力とは異なる力です。これも詳しくは話せませんが」
「そ、そうなんですね……。次の質問ですが、ラーから聞きましたがワープホールというものがあるそうですね」
さすがに突っ込んできたな。遠くを行き来できるなんて不思議だろうし。
「これがワープホールです。見知った場所であれば作れます」
オレは自分の家の庭とつないでワープホールを実際にこの部屋の開いているところに出した。
「今これを通るとオレの家に着きます」
「家とは?」
「オレは人族大陸のグーモンスの森に住んでいますのでそこに着きます」
「えっ!? そこを通ればグーモンスの森に着くのですか」
オレは口で説明してもあれなので、4人には実際に通ってもらい確認してもらった。
「もう意味がわかりません。どうりで視ていて急にいなくなったりしたわけですね」
「現実にこんなことができるなんて」
「転移門がいらないですねぇ」
「すごいです、すごいです。ヒーロさん、すごいです」
ただこれって転移より下の力だからな、本当は転移できたら一番楽なんだけど。
4人はしばらく興奮していたが落ち着いたようで元の場所に戻った。
「失礼しました。次の質問をさせてください。なぜ私の領土に来られたのですか?」
「今回初めて魔族大陸に来たんですが、最初は穏健派のリアさんのところを選んだわけです。魔族大陸に来た理由はなんとなく来たかったからです、目的はありません」
「なるほど、そうなんですね。ウソはついていないようですし、私は今回そのおかげで恩恵を受けたのでこのことについてはこれ以上聞かないことにします」
ウソをついてるかどうかもわかるのか、魔眼の力なのかな。
「次の質問なんですが、ミコさんは魔物ですよね?」
「えぇ、魔物です。オレと初めて会ったときは普通のホワイトタイガーでしたよ」
「それがどうしてそんなに強くなったんですか?」
「ミコの能力ですね。ミコの能力によってオレとミコは主従関係にありますが、ミコは主であるオレが強くなればなるほどそれに合わせて力の上限が上がっていきます。あとはオレとのトレーニングで強くなっていきました」
「人化に関してもその能力が関わってるということですね」
「そういうことです」
「魔物で能力を持っているものは視たことはありますが、そのような能力は聞いたことがありませんね」
リアさんがオレたちで注意しておかないといけないのはオレとミコだろう。今のリアさんであれば確実にオレとミコのほうが力が上である。
「失礼な話になるかもしれませんが、ヒーロさんたちの中でヘルミーさんだけ違和感があるのですが」
「最近の話ですが、ヘルミーが死にかけていたところをオレが助けました。その流れでオレが育てることになったんですよ」
「死にかけていた?」
「えぇ、魔女の呪いで」
「「「「えっ!?」」」」
そりゃ、そういう反応になるよね。
「ま、魔女の呪いは治らないはずですが!」
「オレが治しました。少しギャンブル要素が入りましたが運良く治せました」
「そ、そんな……魔女の呪いを治したなんて……」
リアさんが今まででの回答で一番驚いている、治せないと言われている病気だから仕方ないか。
「誰でも治せるわけではないので注意してください。オレの仲間が魔女の呪いになったら同じことをするかもしれませんが、それ以外には絶対にしませんので」
「わ、わかりました……」
なんかショックを受けてる感じの反応だけど大丈夫かな。
その後リアさんは何か思うところがあったのか元に戻るまで少しだけ時間がかかった。
「失礼しました。まさか治せた事例があったとは」
「まぁ、かなり特殊ですけどね」
「ありがとうございます、いったん私からは以上で大丈夫です」
「オレからもいいですか?」
「えぇ、もちろん大丈夫です」
「リアさんのそのフードって取ることは出来ないんですか?」
「「「!?」」」
ん? なんかマズイ質問したかな。三蛇華姫の3人の反応があまり良くない。
「すいません、取ることは絶対にできません」
「絶対にですか?」
「はい、私はもう誰も何も石にしないと心に誓いましたから」
ヘルミーが言ってた石化の話か。
「ちなみに、オレであれば効かないと思いますが」
「!? ――――えぇ、おそらくはそうでしょうね。ただ、ヒーロさんが効かない可能性が高くても何があるかわかりませんから私はこれを外しません。また、私のこの【石化眼】は自動発動なうえ、視界に入ったものをすべて石にするのでヒーロさんが無事でも背後の壁とかは石になります」
石化の仕組みがわからない以上オレも100%石化されないとは言えないから、リアさんの気持ちもわからなくもない。それに、人とかではなくありとあらゆるものを石にしたくないってこともフードを取らせるのが困難な原因の1つだな。
「そのフードですが、オレが無理に取ったらどうなりますか?」
「すいません、実はこれは私しか取れない仕組みになっています」
「もし強制的に取ったら」
「私は死にます」
おう! そんなキツイ条件じゃないとリアさんの力を抑えられないのか。
「踏み込んだ質問をしてしまってすいません。リアさんが力を解放した状態がどのくらいなのか見たかったので」
「なるほど、ヒーロさんぐらいであればたしかに興味をもたれるかもしれませんね」
「さきほど石化眼と言ってましたが、リアさんは魔眼を持っているんですよね」
「はい、7種類持っています。ただ、この封印状態で使えるのは3つだけで千里眼、感知眼、予知眼になります」
予知できるのか、すごいな。
「千里眼って相手のことはハッキリ見えるんですか?」
「いえ、姿形までハッキリとはわかりません。ざっくり言うと距離に依存することなく対象の情報が得られるという感じですね。それに千里眼の視点は俯瞰した感じになります」
千里眼で普段の生活の視界を補っているわけではないのか……そもそも生活のために魔眼は利用していないか。
「なるほど、ありがとうございます。オレからはこれで大丈夫です」
「わかりました。このあとですが、いかがしますか。ワープホールがあればいつでも帰られると思いますが、もし良ければ気が済むまでここにいていただいてもよろしいですよ」
そんなに良くしてくれるのか。家に帰ってもいいけどたまには気分転換もいいな、どうしようかな。
『ミコはどっちでもいいか?』
『はい、私はマスターと一緒であればどこでも大丈夫です』
「ウィネはどうしたい?」
「我はどちらでも良いぞ。ダンジョンでもこちらでもヒーロとまぐわうことができればそれで良い」
相変わらず目的がはっきりしてるからわかりやすいな。あと、それを聞いた三蛇華姫の3人が何かヒソヒソと話をしているんですが。
「ヘルミーはどうする?」
「わたくしもヒーロさんの意向に従いますわ」
ヘルミーはもしかしたらここでコネクションを作っておけば貴族になるときに役に立つかもな。なにせ人族大陸にとってリアさんは相当重要な人物だろうし。
「それじゃ遠慮なくここで過ごさせてもらいます」
「わかりました。さっそく部屋を用意させますのでしばらくお待ちください。この城は好きに移動していただいてかまいませんし、街に行っていただいても大丈夫です」
「ありがとうございます。助かります」
ヒーロたちをメイドによってそれぞれ用意した部屋に案内させたあと、ロリアデラと三蛇華姫の3人は別室で話をしていた。
「ロリアデラ様、あの者たちはいかがですか?」
「悪い方たちではないと思いますので問題ありません」
「それにしてもあの人族の子以外はバカ強ですねぇ」
「ですです。私泣かされたです」
ロリアデラはヒーロと会ったことでいろいろと認識を改めることがあり頭の中を整理していた。
「ちょうどいいので、あなたたち3人はヒーロさんたちに訓練でもしてもらいなさい。特にシーは」
「えっ!? 私ですか……」
「長らくこの国でシーより強いのは私しかいなかったわけですから、たまには違う方とも戦わないと鈍りますよ」
「は、はい……」
シーの実力は超級相当であり他の魔王にも引けを取らないほどであるが、どうしても訓練の相手が限られてしまうのでマンネリがちになっている。
「私はヒーロさんに尻尾でも触ってもらおうかなぁ」
「ちょっとクー、またはしたないことを言って」
「えぇ、でもぉ、ヒーロさんであれば私の毒も効かないような気がしますよぉ。それにあんな強い男滅多にいないですよぉ」
「そうかもしれませんが……」
「私はヘルミーさんと一緒に頑張るです」
「ラーはミコさんに相手してもらいなさい!」
「噛まれるです。絶対噛まれて振り回されるです!」
ロリアデラは三蛇華姫の3人のやり取りを聞き流し、椅子に座って何かしら考え事をしていた。
(ヒーロさんがもしあの時代にいてくれればトリーニデ様は……)




