未知の捜索
オレたちは洞窟から森に戻り再び豊潤草を探し始めようとしたが、いったんミコとウィネを落ち着かせるために休憩を取っていた。
「ヘルミー、あと何本?」
「そうですわね――――あと80本ぐらいですわ」
結構な数だけど、4人で探せば今日中には終わるかな。
「マスター、またたび見つけました!」
「……ん?」
「ヒーロよ、催淫草を見つけたぞ!」
「……お前らはそのことしか頭にないのか!」
というか、催淫草なんてものがあるのか!? そんなものそこらへんに生えてたらダメでしょ。
「はいはい! もう真面目に豊潤草を探すよ」
「こうなれば虎に戻って全力で探すしかありません」
「ミコよ、勝負だ。多い方が先にヒーロに抱いてもらえることにするぞ」
「ほぉ、マスター絡みで私に勝負を挑むと後悔しますよ」
だから、オレの意見は!? まぁ、真面目に探してくれるならそれでいいけど。二人が力を出しても問題ないようにこのあたり一帯に空間でも張っておくか。
その後30分ほどの間、ミコとウィネはあたりを駆け回っており、オレとヘルミーは一緒に豊潤草を探していた。
「ヘルミーは何本見つけた?」
「わたくしは、7本になりますわ」
「オレが5本だから、あと70本ぐらいか」
ここで2人の勝負がついたのか人化した状態のミコとウィネが豊潤草を持って戻ってきた。
「マスター、80本取ってきました!」
「我は38本だ……やはり虎の嗅覚には勝てんか」
いや、取り過ぎだから! でも、頑張ってくれたから誉めておくか。
「ミコもウィネもよくやってくれたよ……動機があれだけど」
「マスター!」
ミコが持っていた草をすべて放り投げて抱き着いてきた……ミコにとって草なんてどうでもいいんだろうな。
「ヘルミー、とりあえず100本は集まったから今日は帰るか」
「はい……若干何もしていない感が否めませんが」
ミコとウィネも我慢の限界が近づいているみたいなので、冒険者ギルドへの報告は明日行うことにしてこの日は家に帰ることにした。
ヒーロが豊潤草を再び探し始めたころ、ロリアデラがシーにラーを起こすように指示を出していた。
「ラーを早く起こしてください」
「はい、承知しました」
シーがラーを起こすために念話を使用する。
『ラー! ラー! 起きなさい! いつまで寝ているのですか!』
『……ん……うーん…………あれっ!? ――シー様!?』
『起きて状況を確認しなさい!』
『はい! わかりましたです』
ラーが起き上がり部下たちも起こしてから周りの状況を確認し始めた。ラーはオスヴァーズがいたところを確認し、部下たちが周りの部屋にいる女性たちを確認している。
『どう? 何かわかった?』
『オスヴァーズや相手の魔族は誰もいないです。あと、この部屋もそうなんですが私たちや誘拐された女性がすべてキレイになっているです』
『キレイに? どういうこと?』
『詳しくはわからないです。ただ、生活魔術でキレイにしたあとのような感じがするです』
ここで、千里眼でも見ていたロリアデラがシーに指示を出す。
「シー、まずは誘拐された女性の保護を優先してウォルテスキアの冒険者ギルドにも手伝わせるようにしなさい」
「承知しました」
シーによってラーにもこの指示が伝わり、ラーの部隊の一部がウォルテスキアの冒険者ギルドに向かうことになった。
一方でロリアデラは千里眼で見た人族と魔族が気になっており洞窟の周辺を千里眼で探し始める。
(まだそこまで離れていないと思いますが。――――!? 何も視えないエリアがある!? ここもただの森のはずですが……。いまは女性の保護を優先するしかないので落ち着いたらラーに調査させますか)
ヒーロがミコとウィネが豊潤草を探すために全力を出してもいいようにと張った空間のせいで、またもやロリアデラの千里眼が使えない場所ができてしまっていた。
ラーたちによって女性の保護が進み、シーとラーが定期的にやり取りを行っていたところロリアデラにシーから報告が上がってくる。
「ロリアデラ様、誘拐された女性で話を聞けた者がいたそうです。その女性によればインキュバスの魔族に連れていかれたのは間違いないそうですが、何をされていたのかはボンヤリとしか思い出せないそうです」
「オスヴァーズはおそらく催眠や催淫を使っていたはずですが記憶の残り方に違和感がありますね」
「そのオスヴァーズですが、オスヴァーズの部屋と思われるところも痕跡がそのままでいなくなっているそうです」
「やはり、意味がわかりませんね。周辺を見ましたがオスヴァーズもいませんでした……」
ロリアデラは今回の事件についてバンジャックに問いただしたいところだったが、オスヴァーズの行方がわからない以上言い逃れられる可能性が高かったのですぐにはできなかった。
「ラーに伝えてください。女性の保護が終わったら、人族と魔族を含む4人組が周辺にいないか探し出すようにと。あと、悪い感じはしませんがくれぐれも戦闘にならないようにだけ注意してください。間違いなくラーでは太刀打ちできない相手です」
「えっ!? そのような者がうろついているのですか?」
「はい。急ぐ必要はないと思いますが、明日中に見つからなければ私が出ます」
「!? ロリアデラ様自らが出られるのですか?」
「千里眼で見えないということは、私と同格の可能性が高いです」
「ロリアデラ様と同格!? 承知しました、ラーに伝えます」
その後シーからラーに4人組の捜索が命じられた。
ラーたちによって女性の保護がいったん終わりキリが良くなった夕方ごろ、ラーは4人組を捜索するために部下たちとウォルテスキアの門の外で話をしていた。
「誘拐された女性たちを運ぶときも森周辺を見ていたですが、人族や魔族の気配は感じられなかったです」
「では、ウォルテスキアの街の中の可能性が?」
「そうです。いったん街の中で聞き込みをするです。明日中に見つければ大丈夫だから5人は休むです」
「はっ! ありがとうございます」
ラーは部下5人を休ませ、自身はまず冒険者ギルドに聞き込みにいった。
冒険者ギルドでは事件が解決したことでぴりついていた空気がなくなり酒場もそれなりに人が入っている。ラーは4人組のことを聞くために受付に向かった。
「失礼するです」
「ラー様、この度はお疲れ様でした。本当にありがとうございます」
「私はほとんど何もしていないです。そんなことより聞きたいことがあるです」
「はい、なんでしょうか?」
キャロメリアも事件が落ち着いたことで表情や口調も少し柔らかくなっているように見える。
「人族と魔族を含む4人組を見なかったですか?」
「人族と魔族ですか…………あっ、そういえば1組いましたね」
「いたですか!?」
「えぇ、お昼ごろですがこのギルドに初めて来られたみたいで依頼を受けていましたね」
「どんな者たちですか?」
「男性が1人と女性が3人で冒険者カードは2人だけお持ちでした。ただ、第7級の冒険者でしたよ」
「第7級ですか……であれば、その者たちではなさそうです」
冒険者のランクを聞いたラーがロリアデラと同格と聞いていたためその者たちではないと判断してしまった。
「その4人組ですが、明日までの依頼を受けていますので、おそらく明日ギルドに来ると思いますが」
「大丈夫です。別をあたることにするです」
ラーが探している4人組というのがまさにその者たちであるというのに、ラーは冒険者ギルドを後にして他のところに聞き込みに行ってしまった。
結局このあともラーは街では有力な情報を得ることができず、少し休んでから改めて森を探すことにした。




