側近との接触
豊潤草をいっぱい採取し夕方になる前に家に帰ってきたが、ミコとウィネがさきほどからものすごくソワソワしている。
「……ヘルミー、ミコとウィネがこんな感じだからオレはウィネの部屋に行ってくるよ」
「はい、お楽しみください」
16歳の女の子に楽しんでと言われ見送られるのはちょっと恥ずかしいな。
「マスター! 早く行きましょう!」
「ヒーロよ、あの嫌なニオイを早く忘れさせてくれ!」
2人がグイグイ来るので、とりあえずウィネの部屋に行くか。
ウィネの部屋に移動してから少し時間が経ち、現在は日が変わるぐらいの時間になっていた。
3人ともウィネのベッドで寝ていたがオレはベッドから出て外へ行く格好に着替えていた。
「マスター、どこに行かれるのですか?」
「あぁ、ちょっとだけ外に行ってくるよ。すぐに戻れると思う」
「ヒーロよ、今日のあの洞窟を消すのか?」
「よくわかったな」
オレはウォルテスキアの北西にある洞窟を消しに行こうとしていた。残っていてもオレには特に問題はないが、あのような場所が残っているのも何か癪だったので消すことにした。
「すぐに戻れると思うから寝てていいよ」
「いえ、私も行きます」
そうか、ミコはオレがいないと寝られないとか言ってたな。まぁ、向こうで一緒に夜風にあたるのも悪くないか。
「それじゃ、ミコも一緒に行くか」
「それなら、我もいくぞ!」
「了解。それじゃ、準備が出来たら出発するよ」
オレたちはワープホールで例の洞窟の上空に移動し、空から洞窟の周辺や中に誰かいないか探っていた。
さすがにこれだけ時間が経っていたら洞窟の中にいた女性たちは無事に移動させられたかな。
「洞窟の中や周りは何もいなさそうだけど、ミコはどう?」
「はい、問題ないかと思います」
念のためミコにも確認して問題ないことがわかったので、さっそくオレは洞窟を囲うように立方体を想像しその中のすべてを消滅させた。
「あいかわらず凄まじいな。一瞬であれだけ消えるとは」
「当たり前だけど、でっかい穴ができてしまったな」
洞窟があった場所には立方体にくり抜かれたでっかい穴が出来てしまった。このままだと誰かが来て穴に落ちてしまったらものすごく申し訳がない。
「我が魔法で埋めてやろう」
「そんなことできるのか?」
「簡単な土系の魔法ぐらいは使えるからな」
こういうとき魔法が使えるのは羨ましいな。
オレたちは地面に降りウィネが10分ほどで穴を埋めてくれた。これで誰かが間違って落ちることはなくなったので良かった。
「よしっ、これでスッキリしたな。ちょっとだけ夜風にあたってから帰るか。――ん!?」
「マスター、何かがこちらに向かってきていますね」
遠くから1人でこちらに向かってる者がいることに気づいた。
「念のため誰かだけ確認したいから気配を消して隠れるぞ」
洞窟を消したことを気づかれても問題はないが、もし今後に影響があるなら対処する必要があるのでどんな奴か確認することにした。念のため空間を張って力が漏れないようしつつオレたちは少し離れた森の中に隠れる。
しばらく待っているとあの洞窟にいたラミアの魔族が近づいてきた。
「ロリアデラ様からこちらで何かを感じたと聞いて急いできたですが、何もいま――!? どういうことですか、洞窟がなくなってるです!」
さっき「ロリアデラ様」って言ってたな。ん? あのラミア耳に手を当てて何をやってるんだ? なんにせよ、こちらは空間を張ってるからあの程度の魔族であれば気づかれないはず。
「ロリアデラ様が言うにはこちら側にいるはずです。――――いたです! 見つけたです!」
えっ!? なんで見つかったの? ――仕方ないな、このまま去っても後味が悪いし出ていくか。
オレはミコとウィネに目配せをし出ていくことにした。
「やっぱりいたです!」
「どうして気づいたんですか? 念入りに気配が漏れないようにしていたつもりでしたが」
「ふふん、ラミアは熱でもわかるです!」
そういうことか、たしか蛇って熱を感知できるとかどっかで見たような気がするがラミアもできるのか。さすがに体温をどうするとかまでは考えていなかったな。
「なるほど……。オレはヒーロと言います。こちらの銀髪の子がミコ、こちらのサキュバスがモデウィネです」
「私はロリアデラ様側近の一人、ラーです。ラー・リールゥです」
覚えやすい名前で助かる。それよりこのラーさん、魔王ロリアデラさんの側近か。
ラーさんは髪型が赤髪のショートで、下半身が赤色の蛇、上半身が人の女性の体をしているのだが、上は体にフィットしたシャツを着ておりその上に白色の胸当てをつけていた。あと、何より胸がすごくでかい、オレがこの世界であった女性の中で一番でかいと思う。
「少し待つです。指示をもらうです」
ラーさんがそう言うとまた耳に手をあて何かを始めた。指示をもらうって、あれってオレがミコに初めて声をかけられたときにしたしぐさだよな。
『マスター、おそらくですが誰かと話をしていますね』
『やはりか……相手の出方を見てから決めるか』
ラーさんが何か指示をもらったようでこちらを向いた。
「今日の昼頃、ここにあった洞窟にいたですか?」
これはオレたちが洞窟にいたことを知っていて聞いてる感じだな、ということは変に隠さないほうがいいかも。
おそらく魔族大陸に着いたときにこちらを見ていたのはロリアデラさんだろう、つまりある程度はバレてる可能性が高い。
「えぇ、いましたよ。ラーさんが倒れているときに」
「どういうことですか!?」
「あの部屋にいた全員の気を失わしたのはオレです」
「それじゃ、バンジャック側の魔族はどうしたですか?」
バンジャックって、たしか強硬派の魔王さんだったよな。といことは男の魔族はその魔王さんのとこだったわけか。
「あの部屋にいた男の魔族はオレがすべて消しましたよ……そこの洞窟と同じように」
「!? 少し待つです、報告するです」
再びラーさんがロリアデラさんに報告し始めた。
「はぁ、自分から面倒事に足を突っ込んだ気がする」
「ヒーロよ、ただでは終わらないと思っていたぞ」
「マスターは何も悪くありません!」
まぁ、もしかしたらロリアデラさんに会えるかもしれないし、これも何かの縁ということでいいのかな。
「決まったです。ロリアデラ様の城に来て欲しいです」
おぉ、本当にロリアデラさんに会えるかも。
「それはかまいませんが、明日でもいいですか? 冒険者ギルドで受けてる依頼を報告したいのと、一緒に行動している者があと1人いるのでその子も一緒のほうが助かります」
「わかったです。こんな時間なので出発は明日の昼前にするです。ウォルテスキアの冒険者ギルドで待ち合わせです」
「了解しました」
「逃げても無駄なので注意するです。ロリアデラ様が見ているから逃げられないです」
こちらもロリアデラさんに会いたいから逃げるつもりはないけど、あまり見られるのも癪なのでそこだけ言っておくか。
オレはロリアデラさんの監視が不要と伝えるためラーさんが気を失わない程度に力を解放して強めに言うことにした。
「あまりジロジロ見られるのは不快なので、ロリアデラさんに控えるように言ってもらえますか?」
「ッ!?」
あっ、ちょっとやりすぎたかな。ラーさんが動けなくなってしまった。
「ヒーロ、ちょっとやりすぎだぞ」
「うっ、このぐらいかなと思ったんだけど」
オレはすぐに力を解放するのをやめる。
「ラーさん、すいません。ちょっと忠告しようかなって思っただけで」
「うぅ……わぁぁん、怖かったですぅ、死ぬかと思ったですぅ」
泣かせてしまった……。というか、ラーさんってロリアデラさんの側近だよね、こんなことで泣いてても大丈夫なのか。
「本当に申し訳ない……大丈夫ですか?」
「うぅ……だ、大丈夫です。ロリアデラ様に報告するです」
なんかこれ、悪いことをして先生にチクられる流れに似てる気がする。ちょっとドキドキしながら報告結果を待っていると。
「うぅ……私が怒られたです……怒らせたらダメだって怒られたです」
もう何が何だかわからん。報告相手が何を言ってるのか知りようがないから意味が分からない。
「ま、まぁ、とにかく明日の昼前に冒険者ギルドで待ち合わせで大丈夫ですよ」
「分かったです、よろしくです」
はぁ、夜風にあたってから帰ろうと思ったのがこんなことになってしまった。
洞窟でも使ったからもうワープホールもラーさんには見せてもいいだろうしすぐ帰ろう。
「ミコ、ウィネ、帰ろう。なんか疲れた……」
「はい。帰ったら私がマスターを癒します!」
「ミコよりも我のほうが癒せるぞ」
「ウィネは癒すのではなく疲れさせるの間違いでしょう」
オレは2人のやり取りをスルーしてワープホールで帰っていこうとしたが、消えていくオレたちにラーさんが何かを言っていた。
「それなんですか? ――消えていくです、どういうことですか!?」




