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クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第四章 記憶ノカナタ
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第五十五話 記憶の奏多



これで四章は終わりです。

読んでいただき、ありがとうございます。



 




 ◇





「まったく、なんで私がエルフなんかに……」


 いつまでもぐちぐち呟いているシャーラが、そろそろ鬱陶しい。


 僕達は竜王国を出た。目指すのはもちろん、エルフの国ヘーダルムだ。


 僕が竜王の元から悠達のところへ戻った後、少ししてシャルルさんがシャーラを担いでやってきた。

 シャーラは物理攻撃をほとんど無効化できるようなスキルを持っていながらも全身はボロボロで、満身創痍と言う他ないほどの姿になっていた。

 だが、対峙したヴィラネドゥが魔法を使ったわけではなく、素手で攻撃してきたらしい。やはり、別格の相手だ。


 まあとにかく、今はどうでもいい。

 問題は、シャルルさんがシャーラを担いで来たことだ。


 僕からすれば可愛い女の子が可愛い女の子を担いで来たのだから眼福だったのだが、その可愛い女の子であるシャーラは不服だったらしい。


 なぜ、エルフなんかに助けられてしまったのか、と。


 シャルルさんは心境の変化があったのか、シャーラに毒を吐くことはなかった。

 シャーラが一方的に言っているのだ。


 僕は知ってるけどね。シャーラがツンデレだってこと。


「……なによ」


「なにも」


 ガタンゴトンと、土竜のモグが引く荷車が小気味よく振動する。

 微妙に尿意を催すような、気持ちいい揺れだ。


 ……あ、やばい。おしっこしたくなったきた。


「可愛いねぇ……」


「ふん!あなただって可愛いじゃない!」


 ふと、悠とシルフィの声が聞こえてきた。見ると、悠が小さなシルフィの頬を指で撫でてデレデレしている。

 デレデレされているシルフィは、褒めちぎる悠に対して同じくデレデレしていた。


 ……悠、小さいものが好きなのかな。


 それにしても、さっきから舞が静かだ。ガイウスはまだ眠っているのだけど、舞は起きているし、さっきまでは悠と楽しそうに話していた。

 だが、今は静かだ。

 シルフィと歓談している悠を眺めながら、どこか思いつめているようにも見える。


 いや、理由はだいたい分かるけどさ。


 本人なりに気にしているらしい。別に、気にしなくていいと思うけど。舞は悪くないんだし。





 ーーー僕に、それを言う資格はないのだけれど。





 荷車の隅に視線をやる。そこには小さく縮こまっている魔族のセナがいた。

 悠が戦った相手らしいのだが、そのまま悠は殺さずに命だけは見逃したため、身柄を預かることになった。


 ………どうしたもんかなぁ。





 ◇ 





 外に出たのは、まあ、他にやる事が無かったからだ。


 内容は忘れたけれど、悪い夢を見て目を覚ました僕は、なかなか寝付けなかった。だから、気晴らしにでもと外に出たんだ。

 そして、さっきまで焚き火を囲んで座っていた丸太の上に座る。焚き火が無い分さっきよりも少し肌寒く、毛布を被った。


 テントの外は、真っ暗だった。空には数え切れない程の星が輝いている。


 ……こんな時、たまに元の世界を思い出す。あの世界なら、夜中に外に出ても街灯などで星なんて満足には見えない。

 それでも、あの世界を少し懐かしく感じてしまうのは、僕にもまだ未練があるからだろうか。


 背後から、ガサガサと音が聞こえた。すぐに気配を探ったが、それも杞憂に終わる。

 気配は悠のものだった。


 僕と同じようにテントから出てきた悠は僕に気付くと、無言で隣に腰掛け、もぞもぞと毛布に入ってきた。

 僕も、何となく無言のまま悠を毛布に入れてやる。それでも、気まずさはない。


 二人で何をするわけでもなく、ぼんやりと焚き火を見つめる。

 まあ、無言で平静を装っているけど、悠と密着しているからか僕の心臓は物凄い速度で脈打っているが。


 こうやって悠といると、今までの事を思い出してしまう。


 長かった。ひたすらに長かった。悠が感情を失ってから取り戻すまで、約四年。

 数字にすればそれほどでも、僕にとっては永遠に等しい時間だった。


 ……思えば、僕が平然と人を殺し始めたのは、悠の家を襲ったあの暴力団を潰してからだ。それまでは、あの通り魔しか殺していなかった。

 多分、タガが外れたんだと思う。罪悪感は感じなくても、悪い事だとは理解していたから。……いや、理解している(・・・・)から。


 ただ、悠が感情を失ったことで、僕も自分を抑える事が出来なくなった。

 邪魔な存在は消す。その事に、少しずつ躊躇が無くなっていったんだ。


 ……僕は悠が好きだ。大好きだ。その気持ちに変わりない。

 この想いが無かったら、僕はきっと、今ここにいないだろう。


 悠を意識し出したのはいつだったかな。

 初めて会った時の事はあまり覚えてないけど、確か最初はうざいとすら思ってた気がする。まあ、あの頃の僕はちょっと荒れてたし。

 それでも悠と仲良くなったのは、悠が僕を救おうとしてくれたからだ。


 あの時、悠が僕に、友達になろうと言ってくれた事だけはしっかりと覚えている。

 だから僕も、悠が感情を取り戻した時に、同じセリフを言った。ずっと前から、そう言おうと決めていた。


 悠が僕のことをどう思っているかは、分からない。両想いなら嬉しいけど、もしかしたら嫌われているかもしれない。


 悠が感情を失ったのは、ある種の防衛本能が働いたからだと医師が言っていた。辛い出来事によって精神的なダメージを負うのを防ぐために、感情を手放したのだと。

 だから、僕がした事は余計なお世話かもしれない。悠を悲しい現実に向き合わせた僕は、彼女からすれば憎い相手かもしれない。


 それでも、こうして二人で並んで座っていられるのが嬉しい僕は、おかしいのだろうか。


 それに。


 もし、悠が本当に感情を失ったままを望んでいたとして、それを僕が知っていたとしても、僕は変わらず悠の感情を取り戻したと思う。

 だって、悲しい現実から目を逸らして生きていくのは、とても苦しいことから。

 その現実と向き合うことの方が辛いけど、それはいつか乗り越えられる。

 乗り越えられず、現実逃避し続けていたら、いつか心が死んでしまう。悠にそんな風にはなって欲しくない。


 ………。


 悠が無言で、焚き火の中へ木片を放り投げた。パチパチと火花が弾け、少し炎の背が高くなる。


 僕の目は、その悠の手に釘付けだった。白く滑らかで、柔らかそうな手。


 ふと、思った。

 いつか、あの手を繋ぎたい。あの手で撫でられたい。あの髪に触れたい。あの腕に抱かれたい。あの唇にキスをしたい。悠とセックスをしたい。


 情欲だ。悠に対する、どうしようもない情欲。


 僕は悠がどうしようもないぐらい大好きで、どれだけでも尽くせる自信がある。

 それでも、これは僕がそう思っているだけで、悠は望んでいないかもしれない。いや、望んでいない可能性の方が高いと思う。


 もしも、悠が違う人が好きだと言えば、僕はその恋を応援したい。そう思う。


 もしも、悠が僕といたくないと言えば、僕は素直に立ち去りたい。そう思う。


 僕は悠が好きで、それと同じぐらい大切で、だから望む事を叶えてあげたい。

 初めて会ったあの日、絶望していた僕に声をかけてくれた悠に恩返しが出来るなら、僕はなんだってする。


 ……これから、僕はどうすればいいんだろう。


 今までは、悠の感情を取り戻すためにがむしゃらに生きてきた。でも、その目的は果たした。


 これからはどうしよう。

 悠に僕の気持ちを伝えたい。でも、告白しても断られたらって思うと怖いし、何より……少し、恥ずかしい。


 悠が好きという事に、恥ずかしさはない。ただ、本人に伝えるのが恥ずかしい。

 僕もまだ高校生だしね。


 悠の横顔を眺めた。悠は少し寝かけている。


 ……悠は、僕のことをどう思っているんだろう。


 今はまだ、あまりまともに喋れない。喋ろうとすると、なぜかお互いに気まずくなったしまうから。


 でも、いつか。


 いつか、この気持ちを伝えたい。


 例え、届かなかったとしても、それでも僕は。





 ◆





 ーーーあの日、あの時、奏多は言った。





『過去は忘れることが出来る。でも、過去をなかったことには出来ない。だから、いつかは乗り越えないといけないんだ』


 それは、確信と覚悟が込められた言葉だった。

 その時は、何を言ってるのか分からなかった。その意味が分からなかった。


 今なら、その言葉が分かる。

 その言葉の意味が分かる。


 奏多は、あの時からずっと背負い続けてきたんだ。私がやっと向き合えたものに。


 やっぱり凄いなぁ。


「………」


 焚き火の炎を見ながら、ぼんやりとする。隣には同じ毛布にくるまる奏多が座っている。

 さっきから無言のままだけど、なぜか気まずさはない。


 と言うより、自分の心臓が高鳴る音がうるさい。


 奏多、かっこいいなぁ。

 少し大人っぽくなったなかな?変わらない癖っ毛もかっこいいし、優しげな目元もかっこいい。もう、全部がかっこいい。


 正直、私はまだこの異世界召喚を受け止めきれていない。

 突然違う世界に召喚されて、特別な力を与えられて。人間とは違う種族が多く、魔王が存在する世界。そこに、勇者として召喚された私達。


 やっぱり、信じられない。


 でも、これは紛れもなく現実で。生きる死ぬの世界で生きていかないといけなくて。


 怖い。戦神様に最強のスキルをもらったけれど、それでもやっぱり怖い。


 でも、こうして奏多の隣にいると不思議と落ち着く。


 触れ合う肩から、奏多の熱を感じる。


 ドキドキ、ドキドキとうるさい。これがなんなのか、分からない。本当は分かっているけど、まだ分からなくていい。


 この甘酸っぱい何かを、もっと感じていたい。


 四年の空白を、取り戻すためにも。







次の五章ですが、正直更新がいつになるか分かりません。

めちゃくちゃ遅くなるかもしれないし、案外早いかもしれないしって感じです。

要するに、書き溜めが完全になくなってしまったわけです。シナリオ自体は考えてますので、そこまで遅くならないと信じているのですが、なにせ最近バタバタと忙しくしてまして。


そういうことですので、とりあえず予告的なものだけ書いておきます。

はぁ!?って思って下さる方には申し訳ありませんが、ご了承ください。


なんだかんだ言って、多分早めに更新できるんじゃないかなぁ……










◯五章 予告


竜王ファルグが示した、『死の魔将』ヴィラネドゥへの手掛かりを得られる可能性のある地、ヘーダルム。エルフが支配するその国で、奏多はかつて受けた老婆の予言通り運命の出会いを果たす。

そして、自分の気持ちが分からなくなり苦しむ奏多の前に現れた、新たなる『魔将』。

クリネアを取り戻すため、奏多達は奮闘する。


思惑が、想いが、交差する。クリネアの行方を巡る戦いの中、恋が始まり、恋が終わり、恋が暴走する。


行き着く果てはーー




第五章『恋ノ物語』




ーーー繰り広げられるは、悲恋の物語。












近日公開、したい。





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