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クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第四章 記憶ノカナタ
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第四十八話 急襲

 




 ◆





「なんだ……?」


 遠くから聞こえた爆発音に、ドルシとゲルドラが眉をひそめる。

 奏多は最初、この国の脳筋共が原因だと思っていたのだが、その考えは一瞬で捨て去った。


 ぞくりと、悪寒が走ったからだ。


「……北と東に百近い反応。これは……魔族です」


『気配察知』を全力で展開したところ、竜王国に大勢の魔族が雪崩れ込んできているのが分かった。


 奏多の言葉に二人が反応する。


「坊主、本当か?」


「こんな嘘はつきませんよ」


「なんでここにいてそこまで分かるのか聞きたいんだが……今はいいか。ゲルドラ、お前は竜王様の元へ向かえ。俺は迎撃に……!」


「竜将、二人見っけ」


 その声に三人が振り返ると、そこにはいつの間にか一人の少女が立っていた。

 紫色の肌に、真っ黒な瞳。いかにもという雰囲気の魔族だ。


「……速いな」


 ゲルドラが呟く。


 そして、その通りだった。

 爆発音が聞こえてからまだ一分も経っていない。それなのに、この魔族はもう竜王国の中心部である三人の元まで来ていた。

 しかも単身で。


「行け。ここは俺がやる」


 そう言って、ドルシはローブを脱ぎ捨てた。指の骨を鳴らして前に出る。


「でも」


「坊主。お前はあの嬢ちゃんについてやった方がいいんじゃねえのか?緊急事態だ、誰も責めやしないさ」


「っ!」


 ドルシが言うのは悠のことだ。

 今この国で一番危険なのは悠だ。そばには舞かルイゼが一緒にいるはずだが、本人が動けない状態である限り何があるか分からない。


 既に街の至る所から戦闘音が聞こえている。ドルシの言う通り、今は緊急事態だ。

 奏多がこの場を離れて悠の元に向かっても、誰も何も言わない。


「カナタ君、俺は竜王様の元へ行く。多分、君にも指令が下される。だがそれまでは自由にしているといい。連れの女の子を安全な場所に隠したりする時間はあるはずだ」


 相変わらずの暗い表情のゲルドラはそう言うと、奏多の返事も待たずに走り去ってしまった。


「……うん?君のそれって竜将の正装だよね?もしかして君も竜将?」


 急展開に驚いていると、魔族の少女が奏多を指差しながら訊いてきた。

 それに対し、奏多は渋々と頷く。


「ふーん、増えたのかぁ……。めんどくさいなぁ」


「行け坊主!」


「……任せます」


 叫んだドルシに答えると、奏多は一瞬でその場から姿を消した。


 奏多とゲルドラがいなくなり、ドルシと魔族の少女だけが残された。

 だが、魔族の少女は動く気配を見せない。


「……お前、俺たち竜将を狙ってるんじゃねえのか?」


「そうだよ?」


「じゃあなんで追わない?」


「必要ないから」


 飄々と答える少女に、ドルシは眉を吊り上げる。


「あのねぇ、あんたらを殺すために来たのが私だけだと思う?」


「あ?」


「こうやって敵陣に侵入したんだよ?そりゃあ、戦力は揃えてるよ」


「ああ、それもそうか」


「……焦らないんだね?」


「心配してないからな」


 元の戦力なら、そうはいかなかっただろう。竜将の欠員による戦力不足は否めなかったからだ。

 だが、今は奏多達がいる。彼らの一味は一人一人が竜将レベルに達してることを、ドルシは既に察していた。


「へぇ……まあいいや。やろうか」


 刹那、空気が変わった。

 ジリジリと肌を焼くような圧に、ドルシは警戒を高めた。


「『炎の魔将』フラスゴーの眷属、ネル」


「……『二ノ竜』ドルシ。異物を排除する」


 二つの影が、轟音を伴って激突した。





 ◇





「至るところで戦ってるな……」


 屋根の上を跳び移りながら戦況を確認する。


 既に、この竜王国が戦場と化していた。だが流石と言うべきか、国民の対応が有り得ないぐらい早い。

 なにせ誰も混乱していないのだ。誰もが襲いくる魔族と戦っている。


「見えてきた……!」


 竜王から借りた屋敷が見えてきた。あそこに悠がいるはずだ。


 とりあえず悠を連れて安全な場所に逃げないと。

 やっぱりお城かなぁ。


「よっ」


「え?」


 突然、声が聞こえた。

 ふと隣に視線をやると、跳んでいる僕の隣に男がいた。

 有り得ないぐらいの殺気を放ちながら、拳を握っている。


「どーん」


「がっ!?」


 その拳が僕に振り下ろされた。

 ギリギリでなんとか受け止めるが、勢いは受けきれない。


 僕の体はそのまま、かなりの高度から地面へと叩きつけられた。

『身体能力強化』でダメージは軽減したが、堪え難い痛みが全身を襲う。


「おお、凄え!受けやがった!」


 男は僕の前に着地した。

 ヒョロヒョロなガリ男だ。頰は痩け、はだけている胸元からは皮と骨しかないような肉体が覗いている。

 そしてなにより、印象的だったのは燃え盛る髪だ。


「……危ない髪の毛ですね」


「だろ?超イカすだろ?」


「そんなこと言ってませんが」


 僕はゆっくりと立ち上がる。

 地面には大きな亀裂が入っていた。この衝撃でも死なないって、僕も人間離れしてきたな。


「お前が新しい竜将か?」


「……なぜ?」


 知ってる?


「こいつに聞いたんだよ」


 そう言って男は手をあげた。さっき僕に挑んできた国民の生首の髪を鷲掴みにしている。


「顔色一つ変えねぇのか」


「別にどうでもいいでしょう」


 僕は腰から宝剣を引き抜く。パレードの途中だったから得物がこれしかない。


「そこ、どいてもらっていいですか?その先に用があるんですよ」


 早く悠の元に行かないと。


「なら、どうする?」


「……あんたを殺す」


「ははっ、いいねぇ!その殺気!」


 男は掴んでいた首を投げ捨てると、肩を回してゴキゴキと鳴らした。


「『炎の魔将』フラスゴーだ。よろしくな」


「………」


 やっぱりか。

 嫌な予感はしてたんだよ。


「『四ノ竜』氷室奏多」


 次の瞬間、僕の視界を炎が覆い尽くした。





 ◆





「ファルグ様!」


 バタンと勢いよく扉を開けたゲルドラの前には、玉座に座るファルグとその前に集まる大勢の貴族達だった。

 ファルグは慌ただしく指示を出しており、ゲルドラの声は届かない。


「ゲルドラ様!」


 と、そこにメイド長のプリムラが駆けてきた。


「状況は?」


「襲撃があってすぐに貴族の方々がファルグ様の元に集まり、それからはずっとこの状態です。ファルグ様も出たいみたいなのですが、今は国の被害を把握することを先決させています」


 ファルグも一国の王。王である限り、やはり優先すべきは国だ。

 戦場ならば話は別だが、今回はその戦場が守るべき国なのだ。まずは被害を抑えることを優先しなければならない。

 それを出来るのはファルグだけだ。一癖も二癖もあるこの国の民達を纏められるのは竜王だけで、だから彼は自分は出ずに指示を出し続けている。


「……うずうずしているな」


「ですね」


 とは言っても、それは役目の話であって、本人の感情は別だ。

 ゲルドラとプリムラの目には、ファルグが戦いたくてうずうずしているのが丸分かりだった。


「ゲルドラ様はどうしますか?」


「俺は……そうだな、襲撃地に向かう。さっき対峙した魔族の言動からすると、奴らの狙いは竜将だ。俺がここにいるのはまずいだろう」


「……私もお供します」


「いや……そうか、分かった。行くぞ」


「はい!」


 結局、ゲルドラはファルグに声をかけることなく城を出た。





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