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クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第三章 旅ハ道連レ世ハ情ケ
44/78

第三十八話 出会って5秒(ぐらいの感覚)でバトル

 




 ◆





「ああああああああああ!!!」


 絶叫をあげながら飛んできた何かは、目を閉じた人間の少年だった。

 死にそうな顔をしている。


「もぉぉおおダメだぁぁぁぁあああ!!!」


 そして男のくせに情けない声をあげて、私の近くに墜落した。

 舞い上がった砂煙でどうなったのか見えない。


「……死んだのかしら」


 象型の魔物の牙を剣で受け流し、根元から切り飛ばす。怒り狂った魔物は暴れ出す。けど、この程度問題ない。


 斬って、斬って、斬りまくる。足りない。まだまだ足りない。

 私はもっと強くなりたい。


「あー……死ぬかと思ったぁ」


 魔物を斬り伏せていると、背後の少年が立ち上がる気配がした。


「……無傷なのね」


「え?ああ、ご心配どうも」


 目の前で私が戦っているというのに、随分呑気な口調だ。

 しかも……


「フツメンね」


「はい?」


 イケメンじゃない。もう興味がないわ。


「あの、手伝いましょうか?」


「は?」


「いえ、それだけの魔物を相手に一人はしんどいかなーって」


 なにこいつ。雑魚そうな見た目してるのに、この私を助けようとか思ってるわけ?

 なんなの?惚れちゃったの?


「そこまで言うなら、手伝わせてあげてもいいわよ」


「そこまでって、僕そんなに言ったかな……」


「どっちなの?」


「……じゃあ、手伝わせてもらいます」


 こんなヘナチョコになにが出来るのか知らないけど、お手並み拝見といきましょうか。


「『光の剣(フォトンソード)』、『千刃』」


 そして。


 少年は魔物の群れを瞬殺してしまった。





 ◇





 まあ、この程度の魔物なら問題ないかな。数でごり押し攻撃は得意だし。


「それにしても……」


 一人で戦っていた女の人を見る。


 黒いローブに身を包んだ女性だった。すらりとした長身に、鋭めの赤い瞳と僕と同じ黒い髪。そして、とんがった耳に黒褐色の肌。

 キツそうな雰囲気がするけど、凄い綺麗だ。


「もしかして、ダークエルフ……ですか?」


「そうよ。聞く必要ある?」


 ……ちょっと怖いな。


「おーい、カナター!!」


 びゅーん、とシルフィが飛んでくる。そしてちょうど僕の前に来たタイミングで、『未来予知』を使ってその小さな額にデコピンをした。


「いたー!?何するのよ!」


「こっちのセリフだよ!なに、あの移動法!殺す気!?」


「一瞬だったでしょ!?」


「本気で死を覚悟したけどね!?」


「……なにギャーギャー騒いでるんですか」


 少し遅れてやってきた舞が呆れたようにため息を吐いた。


「カナタがデコピンしたー!」


「僕は死にかけたー!」


「はいはい、少し落ち着きなさい。みっともないですよ」


「み、みっともない……」


「あはは、カナタみっともなーい!」


「シルフィもだから!」


「……はぁ」


 やばい!今の舞のため息はガチため息だ!


「シルフィ。ここはとりあえず休戦だ。舞は怒らせたら怖いぞ」


「そ、そうなのね……分かった。一旦引いてあげるわ」


 なんとかシルフィを宥め、事なきを得た。


「あなた、名前は?」


「……名前を尋ねる時は、自分から名乗るものよ」


「む……それもそうね。アタシはクリネア」


 クリネアが名乗ると、ダークエルフの女性は無言でこっちにも視線を向けてきた。


「あたしはシルフィよ!」


「俺はガイウス。ソルの獣人だ」


「三上舞です。彼女は間宮悠。よろしくお願いします」


 次々と名乗る仲間達。なぜか始業式後の自己紹介を思い出してしまった。


「あんたは?」


「僕は氷室奏多です」


「ふーん」


 ふーんて。ふーんてあんた。


「アタシ達は名乗ったんだから、あなたも名乗りなさいよ」


「ダークエルフのシャーラよ。名乗ったついでにヒムロ・カナタ。剣を抜きなさい」


「……え?」


 シャーラと名乗った彼女は、僕が背中に差している霊剣に視線を向けて言った。


「なんでですか?」


「武器を構えたらすることは一つでしょう?」


 つまり、手合わせをすると。


「嫌です」


「あなたが拒否しても私は襲うわよ?見た目は雑魚そうだけど、魔物を一掃したのは事実。それなりの実力者として挑ませてもらうわ」


 ちょっと待って。流石に勝手過ぎない?


「僕にメリットは?」


「見たところ旅の途中みたいだけど……私に勝ったら、私の里に招待してあげるわ」


「ダークエルフの里!?」


 シャーラさんの提示した条件になんのメリットがあるのか理解出来なかった僕の肩の上で、なぜかシルフィが驚いて声をあげた。

 耳元でうるさいと視線を向けるが、シルフィは興奮して気にしていない。


「あたしも千年以上生きてきたけど、一度もダークエルフの里に行ったことないの!噂によると、ダークエルフしか入れない結界が張られているらしいわ!」


「アタシも、ダークエルフの里に行ったって話は聞いたことないわね……」


 おお、凄い情報だ。


 長生きしているシルフィと、魔将だったクリネア。その二人でさえ行ったことがない、ダークエルフの里。


「僕はあんまり興味ないけど」


 そんな事より、早く竜王国に行きたい。


「行きたいわ!」


「アタシもー!」


「俺はどっちでもいい」


「………」


 なにより、舞の無言の視線が突き刺さる。凄い行きたいって訴えかけられてるみたいだ。


「……まあ、僕も強くなりたいし」


 第二地区での一件で、僕は実力不足を実感した。

 この世界に来てスキルをたくさん与えられて、自分は強くなったんだと勘違いしていた。

 でも、それが通用するのはある程度までだ。


 恐らく、と言うより間違いなく、本気の花崎香織と里村亮介先輩には勝てない。今のままでは。


「いいですよ。やりましょう。ただこの剣はまだ扱い慣れてないので、こっちで」


 僕はそう言って、『光の剣』を両手に生み出した。

 だって、霊剣まだ使ったことないし。


「なんでもいいわよ」


 シャーラさんはローブを脱ぎ捨てた。

 その手には、腰の鞘から抜いた一本の剣。細身の両刃直剣だ。少し長めのように見える。

 肌にぴっちりと合った軽そうな服だけを着ていて、防具らしきものは身につけていない。

 あとは肩甲骨あたりまでの小さなマントだけしかないから、メリハリのあるボディラインがモロに見えてしまっている。


 けど、今はそれが気にならなかった。

 シャーラさんの全身から、僕を突き刺すように殺気が放たれていたから。


「……防具、ないんですね」


「あんたもじゃない」


 そうだけども。

 でも僕の場合、変に動きを制限されるのが嫌だったからだ。今までつけなかったものをつけたら、色々と動きづらくなるのは明白だ。


「私は必要ないからいいのよ」


「凄い自信ですね」


「自信とかじゃなくて……いや、やっぱりいいわ。やりましょう」


 そして、シャーラさんの姿が消えた。


「っ!?」


 瞬きの瞬間に目の前まで移動していたシャーラさんの剣を、横っ飛びで躱す。

 速すぎて目で追えなかった。


「そんなもの?」


「なっ!」


 飛んだ先に、またもいつの間にか移動していたシャーラさんが剣先を突き出してくる。

 僕はそれを左手の剣で受け流し、右手の剣で反撃を放つ。

 が、軽々と躱された。


 飛び退いたシャーラさんは一瞬、両足が地面から離れる。その隙を狙って『身体能力強化』で体を強化し、全速力で間を詰めた。

 彼女が地面に足をつける前に距離を埋める。

 シャーラさんは苦し紛れに剣を突き出すが、容易く躱せる。そう判断した僕は剣先をギリギリまで引きつけ、両手の剣をクロスし斬りつけようとして―――


 シャーラさんの剣が伸びた。


「うおっ!?」


 なんとか右足で地面を蹴り、反作用で自分の体を横に飛ばす。

 それでも、頰に熱を感じた。手の甲で頰を拭うと、やはり血がついている。


「思ったより速いのね。思わず使っちゃったわ」


「……スキルですか?」


 剣が伸びるスキルなら、野村さんも使っていた。

 そう言えば、野村さんもそろそろ落ち着いたかなぁ。


「多分、あなたが思ってるようなスキルではないけどね」


 またも神速での肉薄。

 だけど僕も『身体能力強化』を発動している。今度はその動きを目で捉えた。


「ふっ!」


 シンプルな横薙ぎの斬撃。それを僕は右手の剣を逆手に持ち、受け止めた。

 空いた左手で剣を振るうが、それは呆気なく受け止められる。今度は右手が空いたから突き刺すが、それも受け流される。


 剣捌きが早すぎる。


「『閃光弾《スタングレネード》』!」


 目の前で光を破裂させると、シャーラさんは即座に後退した。

 僕はその隙に両手の『光の剣』を回転するように左右へ投げ捨て、素手のままシャーラさんへと肉薄する。


「得物もなしに……!」


「『光の大剣(フォトンラージソード)』!」


 そしてシャーラさんの目前で両手を振り上げた状態で『光の大剣』を生み出した。

 もちろん、両手の中に。


「速さで勝てないなら、パワーだ!!」


 思い切り振り下ろした。


 シャーラさんはそれに反応して『光の大剣』を受け止めるが、流された衝撃は地面を破壊し、僕達を中心にクレーターが出来た。

 それでも、僕の仕掛けは終わらない。


「くっ!」


『必中』を発動させて投げ捨てた二本の『光の剣』が、両脇からシャーラさんを襲う。


 シャーラさんは僕の剣を斬り上げ、体を捻って両脇の剣の背を蹴り飛ばす。だが『必中』を使っているため、剣は不規則な軌道で再びシャーラさんを襲った。


「気持ち悪い!」


 二本の剣と斬り結ぶシャーラさんは、ジリジリと後退する。しかしここは抉れたクレーターの中。言うまでもなく足場は悪い。

 そこを狙い、シャーラさんの足元で光を炸裂させた。不意打ちを受けた彼女は狙い通りバランスを崩した。


「あ」


 そこへ、二本の『光の剣』。命中することを確信した僕は、殺さないように途中で中断で消す準備をする。


「やるわね」


 だが、その必要はなかった。


 シャーラさんは剣を槍投げのように僕へ飛ばし、空いた両手の人差し指と中指の間で二本の『光の剣』を受け止めた。

 そして地面で叩き割る。


「うそん」


 飛んできた剣を弾いた僕の眼前に、シャーラさんが何度目かの瞬足で迫り、空中で弾いた剣をキャッチした。

『光の大剣』を力任せに振ったが、まるで水を斬ったかのようにするりと流された。


 シャーラさんは身を翻す。肩の小さなマントで一瞬、僕の視界が遮られる。

 僕はそのマントごと斬り捨てようとしたが、それを成す前に、自分の腹に剣が突き刺さっていることに気がついた。


「……こふ」


 咳き込むと、生温かい血の塊が口の中に広がった。堪らずそれを吐き捨てる。


「ほっ」


「がっ!」


 身を翻しつつ剣を僕に突き刺したシャーラさんは、そのまま一回転して僕の顔面に足裏を叩き込んだ。

 体が後ろへと飛ばされる感覚と同時に、ズルリと剣が腹から引き抜かれるのを感じた。


「『桜花爛漫』!!」


 追撃をさせないための牽制の意味合いを込め、千の『光の剣』を咲き乱れさせる。

 なのに、


「ごほ、なんで普通に来るんだよ!?」


 今日の分の『自己再生』はシルフィに吹き飛ばされた時に使ってしまった。多分使わなくても無傷だったけど、恐怖心が勝って着地の瞬間には使っていたからどうしようもない。


 だから傷を治すことも出来ず、血を吐く。が、今はそれを気にしていられなかった。


 シャーラさんは剣が降る中を平然と走ってきている。

 当たっているように見えるのだが、傷一つついていない。


「くそ、どうしろってんだ!」


 傷を手で押さえる。当然、そんな事で血は止まらない。


【カナタ、あたしを使いなさい!】


 突然、脳内に声が響いた。

 あまりの事態に頭がおかしくなったのかと思ったが、よく聞けば知っている声だった。


「シルフィ?」


【そうよ!今は霊剣に入っている(・・・・・)わ!早く抜きなさい!】


 前からシャーラさんが迫っていることもあり、慌てて霊剣を抜いた。

 エメラルドグリーンの綺麗な刀身が露わになる。


【今は制御なんて出来ないだろうから、とにかく力一杯振り下ろしなさい!今すぐ!】


「は、はいっ!」


 まだシャーラさんは僕の間合いに入っていない。だが、シルフィに言われるがままに霊剣を振り下ろした。


「っ!?」


 最初、僕には何が起きたのか理解出来なかった。

 シャーラさんの息を飲み、全力で横へ回避したのは見えた。

 そしてその直後、暴風の衝撃がシャーラさんがいた場所を巻き込んで通過する。


【………】


「………」


 その発生源は、僕が握る霊剣だった。シルフィの能力が宿った霊剣は、ただ振り下ろしただけでこの威力を出せるらしい。


【やり過ぎたわ!】


「やり過ぎだよ!」


 僕の心臓に悪いわ!





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