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クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第三章 旅ハ道連レ世ハ情ケ
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第三十七話 南無三グッバイ

 




 ◇





 宴から数日が経った。

 あれから僕達はイクセムトでお世話になり、のんびりと時間を過ごした。

 なにせ、妖精族はめちゃくちゃ時間にルーズなのだ。一緒にいると自分も不老不死なんじゃないかって勘違いするほどに。


 ただ、僕達もいつまでもいるわけにはいかない。

 僕には目的地はなくとも、目的はあるのだ。もちろん、悠のことだ。


 妖精族の中には悠を戻せる能力を持っている人(妖精)がいるんじゃないかと思ったけど、生憎ここにはいなかった。

 ただ、ここから南西の方角にある竜王国という場所に、もしかしたら治せる人物がいるかもしれないと教えてもらった。


 というわけで、目的地を竜王国として、僕達はまた旅立つことにした。


「今までお世話になりました」


 見送りに来てくれた妖精達に頭を下げる。

 始まりこそ最悪だったけど、結果的にはとても良い場所だった。


「ああ。また来てくれ。私達はいつでも歓迎する」


 ユルドさんは僕に手を差し出す。僕もその手を握り返した。


「じゃあね!行ってくるわ!寂しいかもしれないけど、我慢しなさい!」


 そして、僕の肩にシルフィが座っている。


 ……え?


「いや、え?シルフィ?」


「なに?」


「なんで僕の肩に座ってるの?君、あっち側でしょ?」


 見送りに来てくれた妖精達を指差す。が、シルフィはやれやれと首を振った。


「あたしもついていくに決まってるでしょ?何言ってるのよ」


「それ僕のセリフだよ。え?ついてくるの?」


「当たり前でしょ!」


 シルフィに頰を殴られた。全く痛くない。


 と、そこにゴードンさんが寄ってきた。手には布の塊を持っている。


「これは餞別だ。シルフィに頼まれていてな。急遽叩き上げた」


 そう言って布から取り出したのは一本の剣だ。薄緑色の、綺麗な刀身をしている。


「これはシルフィの霊剣だ。シルフィは任意でこの剣に宿ることができる。お前の力になりたいと言って頼んできたものだ。うまく使ってくれ」


「……ありがとうございます」


 僕は素直に剣を受け取った。

 ずっしりと重いけど、不思議な力が流れ込んでくる。ような気がした。

 多分気のせい。


「シルフィも、ありがとうね」


 肩にいるシルフィの頰をぷにぷにしながら礼を口にした。力になりたいと言われるのは素直に嬉しい。


「ふ、ふん!感謝しなさい!」


「してるよ」


 思ったよりも柔らかかった頰に少しやみつきになりながら苦笑した。


「良き旅になることを願っている」


「はい」


 こうして僕達は竜車に乗り込み、竜王国へ向けて出発した。


「……ねぇ、今回アタシ出番なくなかった?」


 などと呟くクリネアを無視して。





 ◇





 旅は順調に進んでいる。


 そもそも、魔物なども陰大陸に行かない限り強力なのはそうそう遭遇するものではないらしい。

 危険なものはなく、目的地も決まった。


 だと言うのに、荷車の中には微妙な空気が漂っていた。


 ガッツポーズを作る舞と、四つん這いになっている僕が原因だ。

 理由は、今しがたクリネアとシルフィが話してくれた内容に関係する。


 ちなみに、今はガイウスがモグを走らせている。獣人の彼もまた、問題なく土竜を操れるらしい。


 さて、こんな状況に陥った経緯だが、始まりは僕の言葉だった。


「スキルと魔法って何が違うの?」


 この世界に魔法が存在するのは知っていた。けど、スキルとの違いがよく分からなかった。


「簡単よ。スキルは特定の人しか使えない力。たまに同じスキルを持つ人達とかいるけど、基本的にスキルはその個人しか持っていないわ。ここまで言ったらもう分かると思うけど、魔法は魔力さえあれば誰でも使える。工夫すればスキルと同じような効果を発揮したりもするわね」


 ということらしかった。

 クリネアからこんな真面目な返答があったのは正直驚いたけど、よく考えたらクリネアは時の魔将。知っていて当然か。


「ちなみに妖精が使うのはどっちとも違うわ。アタシも詳しくは分からないけど、自分の元になった概念を操る感覚に近いらしいわ。よね?シルフィ」


「そうよ!」


 つまり、魔力さえあれば僕達も魔法が使えるのだ。


 と、意気込んだのだけど。


「マイは魔力容量が多いけど……カナタはゼロね。魔力を全く感じられないわ」


 クリネアのその無慈悲な言葉を前に撃沈した。


 僕だって年頃の男だ。魔法と聞けば憧れるし、使ってみたいと思う。

 その夢が叶う世界に来て、魔法の話を聞いて、キタコレ!みたいなノリになったのに、僕には素質がない。


 こんなのって……残酷すぎる。


「魔法……!私も魔法が使えるんですね!」


「アタシで良かったら教えてあげるわよ?」


「ぜひお願いします!」


「ちょっと、マイにクリネア!カナタが死にそうな顔してるじゃない!もっと気を遣ってあげなさいよ!」


「だ、大丈夫ですよ奏多!頑張れば奏多だって使えるようになります!」


「そうよそうよ!魔力容量ゼロなんて初めてだけど!」


「ああ!ほら、カナタが三角座りしてるじゃない!クリネアが余計なこと言うから!」


「えぇ!……ごめん」


「謝ったらもっとみじめになってしまいます。ここはそっとしておいた方が」


 やめて!僕のHPはもうゼロよ!


「それにしても、魔力が全くないっていうのも珍しいわね。初めて見たかも」


「あたしも見たことないわ!カナタってスキルは持ってるの?」


「うん……一応、十個ほど」


「ぶっ、十個!?」


 なにやらシルフィが驚いている。妖精から見てもやっぱり多いらしい。


「確か、十個目が思い出せないのよね?」


「そうなんだけど……よく知ってるね、クリネア」


「前の時(・・・)に教えてもらったから」


 ああ、時間を巻き戻す前の話か。

 よく考えてみれば、クリネアに僕達のことを聞かれたことがない気がする。やっぱり、ほとんどのことは知ってるのだろうか。


 一応、ガイウスとシルフィには僕の感情の欠落と悠の現状について話している。共有しておくべきことだと思ったからだ。

 だけど、クリネアには話していない。なのに最初から何も聞かれなかった。


 やっぱり、クリネアの話は本当なのだろう。


「なに?」


「いや……クリネアって、本当に魔将なんだなって」


「なによ今更。でも、多分もう違うわ」


「そうなの?」


「ヴィラネドゥの時はまだしも、シーファの件では明確に拒絶したもの。もう除籍されてるだろうし、恐らくだけど違う魔族が後釜に入ってるわ」


「……良かったの?僕達についてきて」


「もちろん。カナタはアタシの恩人だから」


「………」


 クリネアが言っているのはあくまで巻き戻す前の僕で、今の僕じゃない。

 それはクリネアも分かっているはずなんだけど、それでも彼女の目に迷いはない。


「まあ、自分が納得してるんならいいけど」


「うん」


 はあ、とため息を吐く。

 なんだか、変なプレッシャーがかかった気分だ。


「それにしても、十個のスキルか……。あたしも長い間生きてきたけど、そこまでは見たことないわ。もしかしたら、それが原因なのかも」


「魔力がない原因ってこと?」


「そーそー。それだけのスキル持ちだったら、何かしらの副作用があってもおかしくないしね」


 ふむ、まあ今まで魔法が使えなくて苦労したことはない。スキルがあればなんとかなるとは思う。


 ここは……我慢するしかないか……。


「そ、それでクリネア。いつ魔法を教えてくれるんですか?」


 珍しく舞がわくわくしている。見ていて微笑ましい。

 この異世界に来て、舞はより『自分』を出すようになった気がする。良いことだ。


「そういえば、悠の魔力はどうなの?」


「ユウの保有魔力は化け物レベルよ」


「即答だね」


 でも、そうか。流石悠だ。

 悠が魔法を使ってるとことか見てみたいなぁ。


「カナタはあたしを使う練習したらいいじゃない!霊剣を使いこなすって、思ってるより難しいわよ!」


「へぇ、じゃあ付き合ってくれる?」


「もちろん!」


「大将」


 シルフィと訓練の約束をしていると、御者台にいるガイウスから声がかかった。


「どうかしたの?」


「ああ。前方で人が魔物の群れと戦ってやがる。助けるか?」


 僕はゴソゴソと御者台の方へ移動し、前を見る。が、


「何も見えない」


「結構遠いからな」


「目、いいんだね」


『身体能力強化』を使って、やっと遠くに動く豆粒のようなものが見えた。獣人って凄いな。


「ああ、あれですか」


「結構遠いわね」


「あたしの力を使えば一瞬だけどね!」


「………」


 僕以外みんな見えているらしい。

 舞は『千里眼』があるからいいけど、クリネアとシルフィの場合はなんなんだろう。種族柄?魔法?


 それに、聞き捨てならない言葉が聞こえた。


「一瞬?」


「そうよ!あたしなら余裕だわ!」


 一瞬ってなんだろう。テレポート的なやつかな。


 ……体験してみたい。


「ぜひ」


「じゃあここに立ちなさい!」


 シルフィに言われた通りに御者台に立つ。ガタガタ揺れるから不安定だ。


「着地は自力で頑張ってね!」


「……着地?」


 なに?着地ってなに?


「ふぅ」


 背後で、シルフィが息を吹いた。本当に軽く、だ。


「えっ」


 それと同時に、激流のような風が僕の背中を襲った。

 凄い勢いなのに痛みはない。ただ、問題があるとすれば、その勢いで僕が吹っ飛ばされたことだろう。


「テレポートじゃねぇのかよぉぉぉぉぉぉ!!?」


 速度は凄い。モグの走行速度を軽く上回り、魔物の群れにぐんぐん近づく。

 ここまできてやっと人の姿が……あ?


「目がぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」


 あまりの速度で、目が一瞬で乾燥した。もう開けてられない。


「やっ、やばい!死ぬ!」


 これは本気でやばい!地面に激突するのもいつか分からないし、着地以前の問題だ!


『身体能力強化』で体を限界まで頑丈にする。下手したらこれ、全身バラバラになるかも。


 もし死んだら、シルフィを呪ってやろう。存分に苦しめてやる。


 ああ、さようなら。僕は今日ここで死んでしまいます。お父さん、お母さん、待っててください。すぐ行きます。


 南無三。


 ……バラバラになった瞬間なら、『自己再生』でなんとかなるかな。







この章は短く、あと五話ぐらいで終わります。

なので、毎日投稿します。

頑張ります。



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