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クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第三章 旅ハ道連レ世ハ情ケ
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第三十六話 裏ある占い

 




 ◇





 ある日、妖精族である少女は人間に攫われた。

 妖精は例外なく全員が特殊な力を持っている。

 ゆえに価値があり、高値で売れる。この少女も同じ理由で買われた。

 そして転々と買主が変わり、ある商人に買われた時、少女は剣に封印されてしまったらしい。


 妖精を剣に閉じ込めると霊剣となり、絶大な力を振るうことができる。

 霊剣にされな少女には更に価値がつく。それこそが商人の狙いで、結果、ヘノム・ジョルジュという貴族に買われた。

 しかし、少女は無理やり霊剣にされたのだ。快く力を貸すわけもなく、むしろ魔剣に堕ちそうになっていた。

 そんな時に現れたのが、僕。ヘノム邸に置いてあった剣が、この少女が封印された剣だったのだ。


 ということで、そんなつもりはなかったけれど、僕はこの少女の恩人らしい。


「……それで僕達は捕まったんですか」


 どうやら、僕達が少女を剣に封印したんだと勘違いしたみたいだ。


「ほんと、早とちりしちゃって!あたしはカナタに助けられたのに!」


 少女はユルドさんの頭をぺちぺちと叩く。全然痛くなさそうだ。


「本当に申し訳ない」


「だからもういいですって」


 そう何回も謝られても。


「あたしはシルフィよ!よろしく!」


「え、ああ、よろしく」


 差し出されたシルフィの手を掴もうとして、あまりのサイズの違いに触れておくだけにしておいた。普通に触ったら握り潰してしまいそうだ。


「剣の中であなた達の名前は聞こえてたから知っているわ!カナタ、マイ、ユウ、クリネア、ガイウスでしょ!」


「へー、妖精が剣に封印されてたのか。大将も凄えもん盗んできたな」


「結果オーライってことで」


 もちろん、僕はあの剣にシルフィが閉じ込められているなんて知らなかった。

 単に、武器を持っていなかったから拝借しただけだ。


 改めてシルフィを見てみる。

 サイズは僕の手のひらほどで、半透明の綺麗な羽が生えている。ティン◯ーベルみたいだ。

 桃色の長髪を無造作に後ろへ流し、頭の頂点にはそれはそれは立派なアホ毛がそびえ立っている。こんなアホ毛は初めて見たけど、なかなか可愛い。


「なによ、ジロジロ見て」


「可愛らしいなーって」


「そう?よく分かってるじゃない」


 ふふん、とシルフィは薄い胸を張る。


「それで、そちらの方は?」


 僕はもう一人の厳ついおっさんに視線を向ける。


「わしはゴードン。鍛治師だ。さっきまでシルフィを剣から解放していた」


 凄いな。鍛治師ってそんなことも出来るのか。

 でも確かに見た目は鍛治師のイメージだ。筋骨隆々だし、立派な髭を生やしているし。


「結構厄介な封印だったが、なんとか解除できた」


「僕より全然功労者じゃないですか」


「いや、お前が連れて来なければ始まらなかった。ありがとう」


「シルフィは元からここに住んでいたんですか?」


「いや、違うみたいだ」


「……ねぇ、ちょっと」


 ゴードンさんと話していると、シルフィが口を挟んできた。なにやら頰を膨らませている。


 ちなみに、背後ではクリネアとガイウスが遊び始めていた。多分話し合いに飽きたんだと思う。


「なんであたしにはタメ語で、ゴードンには敬語なの?」


「そうは言われても、やっぱり歳上の方には敬語で話すでしょ」


「確かにゴードンはあなたより歳上だけど、あたしの方がゴードンより歳上よ?」


「……え?」


 いやいやいや、そんなはずないよ。どう見てもゴードンさんの方が歳上でしょ。


「ああ、そこは妖精族の在り方が関係してくるんだが」


 傍らにいたユルドさんが腕を組みながら口を開く。


「私達妖精族は歳をとらない。いわゆる、不老不死ってやつだ」


「不老不死……」


「そう、不老不死。更に言えば、子供というものは存在しない。妖精族は概念から生まれる。君達人間のように、性行為を必要としない」


 概念から生まれる?よく分からない。


「シルフィは風から生まれた。ゴードンは鍛治から生まれた。私は大地から生まれた。概念そのものから生まれるのが私達だ。そして各々がその概念に関する能力を持っている」


「難しいですね」


 でもなんとなくは理解した。確かに、妖精っぽい生まれ方ではあるし。


「要するに、妖精族に関しては見た目はなんの参考にもならないってことだな。生まれた時からその姿で、どれだけ時間が経っても姿形が変わることはない」


「……シルフィは今何歳なの?」


「千から先は数えてないわ」


「………」


 そんなに生きているのか。


「シルフィ、さん」


「シルフィでいいわよ。ちょっと気になったから指摘してみただけ」


「そ、そう?良かった」


 この見た目のシルフィに敬語は、逆に違和感が凄すぎる。助かった。


「ちなみにだが、妖精族には結婚という習慣がない。子供は生まれないし、ゆえに性欲なども全くないからな。妖精族同士が惹かれあったら、とりあえずは共に時間を過ごし、飽きたらまた別々に生きる。それの繰り返しだ」


「カルチャーショックって、こういうことを言うんだね」


「ですね」


 人間との違いに驚くほかない。


「もちろん、殺されれば死ぬ。だがそれだけだ。寿命で死ぬことはない。妖精族の一生の終え方としては、殺されるか、自分の生まれた概念と一体となるか、だ」


「僕達とは本当に全然違いますね」


 なんていうか、規模が違う。スケールが大き過ぎる。


「永遠に等しい時間を生きる私達だからこそ、同胞を何よりも大切にしている。重ねて礼を言わせてくれ。ありがとう」


 こうしてその夜、僕達を歓迎した宴が開かれた。





 ◇





「もし、そこの勇者よ」


「………」


 宴は大いに盛り上がっている。

 最初は僕達も持ち上げられていたけど、途中からは妖精の皆さんが勝手にはしゃぎ出した。

 もはやただのお祭りだ。楽しそうでなにより。


 と考えながら、なんだかんだで興奮していた僕は少し熱を冷ますために、片手にコップを持って静かな端の方を歩いていた。


 そんな時だ。声をかけられたのは。


「どうした?苦い顔をして」


「……あまり、勇者と呼ばれるのは好きじゃなくて」


 声をかけてきたのは、黒いローブに身を包んだお婆さんだった。

 椅子に座り、目の前の机に大きな水晶を置いている。占い師みたいだ。


「そうか、それはすまんかったの」


「いえ、別に。僕のわがままなんで。それで、なにか用ですか?」


「ああ、どうせだから一つ占ってやろうかと思っての。座ってくれないか?」


 お婆さんが指を差すと、彼女の対面にあった椅子が勝手に動いた。

 僕は大人しくその椅子に腰掛ける。


 占いに興味はないけど、せっかくの厚意だし、異世界の占いなら当たりそうな気がしないこともない。


「ぬしは様々な運命を持っているな」


「……様々な運命?」


「本来、生物が持つ運命は一つ。じゃが、ぬしはいくつもの可能性(・・・)を持っておる。運命を変える力を持っているのじゃ」


 運命を変える力。響きはかっこいい。

 でも、あまりしっくりはこないな。そんな大層なもの持っている自覚はないし、必要性もあまり感じない。


「それに、ぬしは近い将来、運命の出会いをすることになる」


 ピクリと反応したのが自分でも分かった。

 運命の出会い。ボーイミーツガールかガールミーツボーイか知らないけど、まあ、要するにそういうことだろう。


 なるほど、僕にも運命の相手がいるのか。しかも、そのうち会える。


 なんて喜ぶわけがない。


「それはつまり、僕はまだ運命の相手と出会ってないってことですよね?」


「じゃな」


「……そうですか。ありがとうございました」


 僕は席を立つ。正直、不機嫌になっていた。


 だってこれはつまり、僕の運命の相手は悠じゃないってことだろう?


「待て待て、落ち着くがいい」


「いえ、もういいです」


「……運命の出会いはあるが、その先どうなるかは分からん。全てはぬしの選択次第じゃ」


 立ち去ろうとする僕に、お婆さんはそんなことを言った。それでも、もう足は止めない。

 チラリと振り返ると、お婆さんの被っているフードから見覚えのある赤い髪が覗いていることに気がついた。

 誰のかは思い出せない。


「まあいいや」


 どこかで見たことがあるようなその赤い髪を、しかし無視して、僕は喧騒の中へ戻っていった。





 ◆





「はぁ、あいつ結構短気だなぁ」


 奏多を占った老人は、その後ろ姿を眺める。


「あん時は散々私のことを弄ってくれたからな。ちょっとした仕返しだ。いやまあ、嘘はついてねぇからな?」


 一人でブツブツと呟く老人の姿は、なかなかに不気味だ。

 全身をすっぽり覆うローブを着ていることもあり、その雰囲気は尚更強調される。


 が、その姿は徐々に変化していく。

 すらりとした長身、真っ白な肌。足元にまで届くほど長い真っ赤な髪。そして、この世のものとは思えないほどの美貌。


 完全に姿を変えた女は宴の賑わいとは逆方向に歩きながら呟いた。


「それにしても、十個目のスキルはまだ(・・)思い出せ(・・・・)て(・)ない(・・)のか。先は長そうだなぁ」


 ニヤリと、口に笑みを浮かべさせて。





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