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クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第三章 旅ハ道連レ世ハ情ケ
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第三十五話 つまり馬鹿

 




 ◇





 この木の上の町を訪れるにあたり、大きな問題があった。

 それは、空中で歩くことが出来るのは僕だけだということだ。


 ということで、僕が一人ずつ抱えていこうと思ったのだが、


「……人間、ですか?」


 その前に、いつの間にか傍らにいた小さい少年にそう尋ねられた。


「そうだけど……君は?」


「ぼくはリトル。このイクセムトに住む妖精族です」


 妖精族。ってことは、ここは妖精族の町なのか?


「へー、妖精族かぁ。初めて見たぜ」


 ガイウスがリトル君を見下ろしてそう言う。リトル君はその鋭い目にビクッと体を震わせた。

 いやまあ、ガイウスの目は元から鋭いからどうしようもないんだけど。


「リトル君。あの町に泊まる施設とかはあるかな?」


「ありますよ。案内しましょうか?」


「頼むよ」





 ◇





 ……などと、僕達は呑気に会話していた。


 つい30分ほど前までは。


「あのクソガキ!騙しやがったな!」


 ガイウスの叫び声が狭い部屋に響く。あまりにうるさいものだから、僕はガイウスにチョップして黙らせた。


「大将!」


「いや、ちょっとうるさい」


「でも!」


「いいから落ち着きなって」


 なんとかガイウスを宥める。ほんと、子守は大変だ。


「ですが、奏多。どうするんですか?」


「落ち着くのも大切だけど、アタシ達がピンチなのも変わらないよ?」


 そんな僕に、舞とクリネアが不安そうな表情を浮かべて聞いてきた。気持ちは分かる。僕も不安だ。


 僕達は今現在、妖精族の町イクセムトにいる。そう言えば聞こえはいいが、実際にはイクセムト内の牢獄に閉じ込められていた。


 流れとしては、まあ、短いもので。


 リトル君の案内通りにいくと、一際大きな木があり、その内部はくり抜かれていて螺旋階段が作られていた。

 その階段を登りきると、至る所に輝く玉が浮かぶ幻想的な光景が広がっていた。

 のだが、それに感動していた僕達を、妖精族の方々は問答無用で包囲。僕が背負っていた剣を確認すると、乱暴に牢獄に放り込まれた。


 以上だ。


 正直、僕も腸が煮えくり返っている。と言うのも、みんなを乱暴に扱ったからだ。

 そもそも、理由は分からないが彼らが怒っているのはあの剣を僕が持っていたからだ。なら、捕らえるのは僕一人でいいはず。


 なのに奴らは他のみんなも一緒に捕らえた。しかも雑に扱って牢獄にポイだ。


 許さん。


 でも、今ここで僕が怒ってしまったらただの逆ギレだ。なにがあったのか分かるまでは大人しくしていなければならない。


「別にこの程度の牢屋ならすぐに出られるけど、事態が悪くなるだけだろうしね。今は様子見かな」


「分かりました」


「はーい」


「ガイウスも。分かった?」


「……分かったよ」


 よし、とりあえずはこれでいいだろう。これ以上事態を悪くするのは避けたいところだ。


 と、その時、コツコツと足音が聞こえた。

 牢の格子ごしに見える石造りの通路、その曲がり角から一人の男が現れる。


 身長は僕と同じくらいで、黄土色の長髪。がっしりとした体格で、背丈は僕と変わらないのに体の大きさは僕の二倍はありそうだ。


 男は牢の前まで来た。

 その姿を見て、僕は単純に気になったことを質問する。本当に他意はなかった。


「あなたも妖精なんですか?」


「そうだが」


「僕達と変わらないように見えますね」


「ふん、見極める目もないか。愚鈍な人間め」


「っ!」


 何か言い返そうとしたガイウスを手で制する。

 が、僕は自分の頰がヒクついているのを感じた。


「なんの用です?」


「そう急かすな。余裕がないように見えるぞ?」


「余裕はありますけど」


「鉄格子の中で強がっても、憐れにしか見えんな」


「見極める目がないんですね」


「………」


「………」


 僕と男の視線がバチバチと火花を散らしながらぶつかる。ような気がした。


「私の名はユルド。このイクセムトの長をしている」


「聞いてませんが」


「………」


「………」


 無言で睨み合う。


「貴様の名前は?」


「名乗るつもりはありません」


「貴様ではない。隣の獣人に尋ねたのだ」


「………」


「………」


 ガイウスは息を飲んで黙っている。


「なんだ?貴様も聞いてもらいたかったのか?」


「なに言ってるんだか。頭お花畑ですか?」


「………」


「………」


 男の目元がヒクついた。


「いい加減にしなさい!!」


「いっ!てっ!?」


 突然、舞に後頭部を殴られた。痛みと共に反動で頭が前にブレ、でこを鉄格子にぶつける。結果、ほぼ同時に僕の頭を痛みが前後から襲った。

 めちゃくちゃ痛い。


「奏多、なにしてるんですか?さっき落ち着けって自分で言っていませんでした?その本人が怒ってるじゃないですか」


 それはやっぱり腹立つし。


「はっはっは、君達は面白いなぁ」


 くっ、笑いやがって。今すぐあの顔面を殴りたい……!


「落ち着きなさい」


「あふ」


 舞に横腹を突かれて変な声が出た。

 キッと睨むが、舞の方が眼力が強い。僕は萎縮する。


「今は様子見なのでしょう?」


「はい」


「それなら大人しくしておきなさい」


「はい」


「私が許可を出すまで発言を禁止します」


「そんなっ!」


「分かりましたか?」


 ニッコリと笑みを浮かべた舞が、ずいっと顔を寄せてくる。

 もはや断れない。断ったら食われる。

 くそぅ、無慈悲だ……僕が一体何したって言うんだよ……。


「はい……」


 僕はしょぼんとするしかなかった。


「申し訳ありません、ユルドさん。ご無礼をお許しください」


「ふむ、気にするな。少し揶揄(からか)っただけだ」


 揶揄っただけだと?この野郎、僕で弄びやがって!


「それにしても、君は礼儀がなっているな。君からすれば私達はいきなり拘束してした憎き相手だと思うのだが」


 自覚あるんならなんとかしろよ!


「確かに思うところはあります。ですが、あなた達にもなにか事情があるように見えました。理由も聞かずに荒ぶるのは、愚か者のすることでしょう」


 ……そうですよ。どうせ僕は愚か者ですよ。


「随分と身内に厳しいのだな」


「はて、そのような覚えは。奏多が腹を立てていたのは私達のためです。彼は多少馬鹿ですが、愚か者ではありません」


 舞……!


 いやいや、待て待て。

 なんか感動したけど、なんだ多少馬鹿って。それつまりただの馬鹿だよね。僕ナチュラルにディスられてるじゃん。


「そうか。失言だったな。申し訳ない」


「いえ、お気になさらず。奏多の自業自得ではありますので」


「そうか」


 そうか、じゃないよ!お気になさって!

 ていうか舞はなに勝手に許してんの!?


「……大将」


 ほらぁ、ガイウスが僕を憐れな目で見てるじゃんかぁ!

 もうこれ絶対大将の座から滑り落ちたよ。次は一等兵とか呼ばれるに違いない。いや、もしかしたら雑兵とか言われるかも。


「それで、なんの用でここへ?」


「ああ、君達に謝罪しにきたんだ」


 謝罪?


「君達を捕らえた理由は、まあ後で説明するとして、とにかくそれが誤解だったことが分かった。すまない、こんなところに閉じ込めてしまって」


 男は頭を下げた。誠意は籠っているように見える。


「……らしいですが、どうします?」


「まあ、アタシはいいわよ」


「俺もいい」


「奏多は?」


「……僕も」


「発言の許可はしてません」


 理不尽過ぎない!?聞いたよね!?今名指しで聞いたよね!?

 喋らずに頷いて答えろってこと!?


「冗談ですよ」


「そろそろ泣くよ?」


「その時は慰めてあげます」


 なにそれエロい。


「エロくはありません」


 舞ってほんとに僕の心読めてるんじゃないかな。


「すまなかったな、カナタとやら。今回の件はろくに確認しなかった私達が悪かった」


 ……素直に謝られると断れない。


「いいですよ、もう。それで、何があったんですか」


「ああ、それは外で説明しよう」


 そう言ってユルドさんは本当に牢屋の鍵を開けた。


「こっちに来てくれ」


 僕達は頷き、前を歩くユルドさんについて行く。

 連れていかれたのはレンガで作られた建物の中だった。木造建築が立ち並ぶこの場でレンガ造りは珍しい。


「ここに入ってくれ」


 言われるがままに入ると、中には二人の妖精がいた。多分、妖精なんだと思う。

 鍛冶場のような場所に、厳ついおっさんとちっさい女の子が僕達に気付く。


 僕の三倍はあるほどの体格のおっさんと、僕の手のひらサイズの女の子だ。


「おっ、ちっ、……ええ!?」


 大きいのか小さいのかよく分からない。

 いや、大きくて小さいんだろうけど。


「よく来たわね!」


 小さい女の子が、ふよふよと浮きながら僕達を睨みつける。と言うより、僕を睨んでる……?


「待ちくたびれたわ!」


「え、いや……………………え?」


 反応に困る。これ、どう答えたら正解なの?


「遅すぎて死んだのかと思ったわよ!!」


 僕達そんなに遅かった?ていうか、いつから待ってたんだ?


「呼び出した理由は他でもないわ!」


 他でもないとか言われても、この女の子が僕達を呼んだことを今知ったよ。


「感謝を伝えたかったの!」


 ……は?


「ありがとう!!」


「………」


 ほんとになんなの?







これで毎日投稿は終わりです!

ですが、出来るだけ早く更新するよう頑張ります!



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