↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第二章 灰色ノ世界ニ生キタ少年
35/78

第三十一話 屈辱の土下座(未遂)

 




 ◇





「昨日ぶりです。亮介先輩」


「はっ。よくもぬけぬけと」


 言葉のわりに、先輩の表情に警戒はない。


「用件は?」


「とりあえず、アルティアはソルを放置することにした。ヘノムの汚職が明るみに出て、しばらくはそっちの対応に追われるだろう」


「………」


「なんでって顔だな。まあなんて言うか、俺もソルに関しては思うところがあったんだ。だが、俺はアルティアの勇者として戦うことを決めた身。自由には動けなかった」


「なるほど。だから昨日、微妙に手加減してたんですね」


「ああ。……よく分かったな。やっぱりお前、只者じゃねえわ」


「まぁある人曰く、僕は英雄らしいですからね」


「ははは!そっかそっか!それもそうだな!」


 誰に言われたのかをだいたい察したのか、先輩は何が面白いのか豪快に笑い始めた。


「あー、笑った笑った」


「笑いすぎですよ」


「はは、悪いな。でも、油断はするなよ?ソルを放置するのは一時的な話だ。第二地区の統治が安定すれば、何かしらの制裁は下されるだろう」


 それはそうだろう。どんな理由だろうと、ここでソルに何もしなければアルティアに対して不信感が募る。


「そんな顔すんなよ。仕方ないことだろ?それに、そこまで悪いようにはしないって」


「……だったらいいですけど」


 まあ、そこに関しては考えがないわけでもない。


「それと、もう一つ」


「?」


「これは警告っつーか、先輩からの忠告だ」


「忠告……?」


 先輩の顔からは完全に笑みが消えていた。


「昨日お前が対峙した花崎香織についてだ」


「っ!……何か知っているんですか?」


「一応な」


 そうだ。

 僕としては先輩より、花崎香織の方が不可解だった。

 先輩の立ち位置は玲達を率いる勇者。ヘノム邸に滞在していたし、僕を阻止しようとするのは理解できた。


 だが、あの場において花崎香織は異色だった。

 彼女はヘノムを守るために戦っていたのではなく、なのに本気じゃなかった。

 意味が分からない。


「花崎香織は初代の勇者。俺達全勇者の中で、二番手の実力者だと言われている」


「二番手?」


「初代の勇者は約四十年もの間、この世界で戦ってきた。その途中、二代目の勇者達が召喚された時に、初代はある組織を立ち上げた」


 初代の勇者は、いわば先駆者。

 誰も歩いていない道を開拓してきた勇者だ。その厳しさゆえに圧倒的な実力を持ち、長年魔族と渡り合ってきた。

 だが、それには限界があった。だから彼らはある組織を作った。


「『祈る者達(プレイヤーズ)』。それが組織名だ」


 その『祈る者達』の目的は、魔王を倒して元の世界へ帰ること。

 突然異世界へ召喚され、先駆者のいない孤独の中で生きてきた彼らは、元の世界へ帰ることに強く焦がれていた。

 そのためにより強い戦力を必要とし、実力のある者を仲間に引き入れているらしい。構成員は勇者が多いが、勇者以外も少なくない。


「恐らく、花崎香織はお前を試した。資格があるかどうかを」


「……なるほど」


「そしてこれも恐らくだが、お前は花崎香織に認められた」


「えぇ……」


「手加減してたとは言え、勝ったんだろ?」


「ああ……僕のスキルで素っ裸にしただけですけどね」


「なるほど、裸にね……ってはぁ!?」


「いやぁ、そんなつもりじゃなかったんですけどね?その、成り行きで」


「どんな成り行きだよ!いや、まあいい。それならちょっと微妙だな」


「僕はどっちでもいいですけど。興味ないですし」


「そうなのか?」


「はい。僕は元の世界に帰りたいなんて思ってませんので」


「へぇ。お前も色々あるんだな」


 色々ってほどじゃないけど。


 ……ん?『も』?


「もしかして、先輩もスカウトされたりしたんですか?」


「まあな」


 よく考えれば先輩のスキルも強力だ。それに、身のこなしや判断も良かった。

 声をかけられていてもおかしくない。


「見ての通り、断ったけどな」


「それは……」


「俺も色々あるってこった」


 先輩はそう言って目を瞑る。詮索はやめろってことか。


「それにしてもお前、良いスキル持ってんだな」


「え?あ、ああ、『模倣』のことですか?」


 一時的に先輩のスキルをコピーした僕のスキルだ。


「あれにもいくつか条件はありますけどね」


「そんなもんだ。スキルってのは多種類ある。だが例外なく、全てのスキルは使いようだ」


「そんなもんですか」


「ああ。二代目の勇者に、『体を高速で回転させる』ってスキルを持つ人がいるんだ」


 なんだそれ。使い道あるのか?


「使い道ないって思うだろ?」


 バレた。


「でもその人は、そのスキルで最強格まで上り詰めた」


「どうやってですか?」


 やりようあるのか?


「体をその場で回転させることが出来るってことは、その力を上手く使えれば助走なしで高速移動が出来るってことだ。俺も詳しくは分からないが、本人がそう言ってた」


 なんだそれ。意味が分からない。


 でも、なるほど。スキルは使いようか。

 僕の『光の賢者』で光を屈折させたりするのも同じか。

 ……いや、待てよ。光を操るってことは、他にも出来ることがあるんじゃないか?


「とにかく、スキルだけでは強さは測れない。知っといて損はないだろ」


「……そうですね。ありがとうございます」


「悪いな。この程度の情報しかやれなくて」


「いえいえ、充分ですよ」


 少しでも情報があれば、それは僕の目的に役立つ。


「桐川と木嶋が結構ショック受けてたぜ。何も言わなくて良かったのか?」


「ええ。大丈夫です」


「……そうか」


「先輩達はこれからどうするんです?」


「俺達はとりあえず陰大陸に行く。あいつらも色々と認識が甘いからな。魔物と実戦をやらせるつもりだ」


「なるほど」


 意外とスパルタらしい。


「お前は?」


「僕はまだ決めてません。ひとまずは第一地区に戻るつもりです」


「それは……危なくないか?」


「考えはあります」


 その後僕は先輩と少し話、いつか再会することを約束して別れた。





 ◇





 ソルに帰った僕は、次の一手のために動き出す。


「ジオラさん」


「なんじゃ?」


「ヘノムの身柄、貰ってもいいですか?」


 ヘノムは今、ソルの端で柱に縛り付けて晒されている。

 ジオラさん達も本当なら殺してしまいたいと思っているが、それだとやる事が変わらない。

 だからどうするべきか少し迷っているらしい。


「ふむ……理由を聞いても?」


「ヘノムをアルティアに返します。その代わり、ソルへの不干渉を約束してもらう」


「出来るのかの?」


「これでも僕、肩書きは勇者ですから。少しぐらいのわがままは聞いてもらえると思います」


「なるほど……それでソルに本当の平穏が訪れるというのなら、儂としても頼みたいところじゃ。任せていいんだな?」


「はい」


「うむ。ならばヘノムはカナタ殿に返そう。若い衆も納得するじゃろ」


「お願いします」


 恐らく今の第二地区は、責任の押し付け合いのような状況に陥っているだろう。ヘノムが姿を消したからといって、事実をなかったことには出来ない。

 そして、周囲の人間がそれを黙認していたのは明らかだ。

 そこにヘノムを返せば、一気に事態は収束するに違いない。その交換条件として、ソルへの不干渉を約束させる。


 それが僕の目的だ。


 そしてその二日後、再びヘノムを受け取った僕は、クリネアをソルに残して第一地区へ向かった。





 ◇





「おいガキ」


「おいガキ」


「図が高いんだよ」


「図が高いんだよ」


「俺と話したければ、もっと腰を低くしろ」


「私と話したければ、もっと腰を低くしろ」


「………」


 王城の医務室へ招かれた僕は、厄介な二人に絡まれていた。


「あの……」


「おいガキ。聞いてなかったのか?」


「おいガキ。聞いてなかったのか?」


「俺と話したければ、もっと腰を低くしろと言ったんだ」


「私と話したければ、もっと腰を低くしろと言ったんだ」


「………」


 そんな尊大な言葉遣いをする、僕の腰ぐらいまでの背丈の男の子と女の子。衝撃やらなんやらで、もはやなんと言ったらいいのか分からない。

 そもそも僕はガキじゃない。いやガキだけど、この子達よりはガキじゃない。


 て言うより、この子達はなんなんだ?なんで王城にいるんだ?


「なんとか言ったらどうなんだ?」


「なんとか言ったらどうなんだ?」


「………」


 僕は目の前の二人を注意深く観察する。


 二人とも、透き通るような真っ白な肌をしている。お揃いの茶髪で、男の子はサラサラの短髪、女の子はサラサラの長髪。眠たそうな瞳は青色だ。


 クリソツってやつだな。


「えーっと、とりあえず中に入れてもらっていい?」


 僕は膝をついて目線を合わせ、静かにそう言った。言った通り、僕はまだ医務室に入れていない。

 扉をノックして入ろうとしたら、中からこの二人が出てきて僕に絡み出したのだ。


「ああ?もっと頼み方ってのがあるだろ?」


「ああ?もっと頼み方ってのがあるだろ?」


「………」


 落ち着け、奏多。クールになるんだ。クールに。

 こんなところで時間をかけたくない。早く舞の安否を確認したいんだ。


「……中に入れさせてください」


「おいおい、態度も改めろよ。目線が一緒じゃねえか、目線が」


「おいおい、態度も改めろよ。目線が一緒じゃねえか、目線が」


「………」


 お、落ち着けぇぇぇぇ!

 ガキ相手に怒るんじゃない!冷静になるんだ!僕は冷静!冷静だ!


 ゆっくりと手を床につけ、額も床に近づけていく。いわゆる土下座だ。


 そして僕が土下座(必殺技)を繰り出そうとして、


「……なにしてるんですか?」


 医務室から出てきた舞に、絶対零度の視線を向けられた。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。