↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
クラスごと召喚 〜自由気ままに異世界生活〜  作者: 剣玉
第一章 招カレシ欠落者達
13/78

第十一話 勇者の旅立ち



 




 ◇





 僕が街に帰った時には、既に討伐組は街中を歩き回っているところだった。国民にその姿を見せてから、この第一地区を出発するのだ。


 ちなみに、このアルティアには五つの街がある。

 僕達が召喚されたこの街が、中央の第一地区。首都の役割を持つ。

 そして北にあるのが第二地区。そこでは特に貿易を司っている。

 南にあるのが第三地区。商人や旅人がよく集まり、商業がよく発達している。

 東にあるのが第四地区。闘技場や職人が集中しており、鍛錬を目的とした猛者が集まる。

 最後に、西にあるのが第五地区。アート作品によって街が形成されており、芸術都市と呼ばれている。また、カジノなども多数あり、娯楽都市とも呼ばれているらしい。

 これらは門を出てから約半日程度かかる距離がある。


 討伐隊とは言っても、まだあまり調査は進んでいなく、魔王の居場所さえ掴めていない。いや、陰大陸と呼ばれる大陸にいるのは分かっているらしいのだが、正確な位置が分からないのだ。

 魔族も一体一体が手強く、聞き出そうにもその前に殺してしまうか殺されてしまう。仮に捉えることが出来ても、忠誠心が高く情報を引き出すのが難しい。


 だから、魔王の場所が分からず、単に情報が足りないだけなのか、もしかしたら陰大陸を探すことが間違っているのか、それとも、何か条件があるのか。

 それすらも分かっていない。


 正直、それでよく魔王討伐なんて言えるな、と思う。


 まあとにかく、そういった背景から討伐隊はいくつかのグループに分かれている。ひとまず『クラスE』の第一回遠征は一組で移動し、この世界に慣れることを主な目的と設定されているらしい。

 彼らは引率係の亮介先輩に連れられて北に向かい、交易都市である第二地区を経由して旅に出る。


 一度旅に出れば、異常自体が起きない限り次に帰還するのは早くても半年はかかる。だから、挨拶をしておきたかった。


「すいません」


「はい?」


「勇者のパーティって、今どこら辺を歩いてるか分かりますか?」


「あぁ、今は北へ向かってるよ。もう出発するらしい」


「なるほど、ありがとうございます」


 頭を下げ、北へと急ぐ。あまりこんなことは考えたくないけど、全員が生きて帰ってこれる保障はどこにもない。


 北門に近付くにつれ、歓声が大きくなってくる。


「はぁ、はぁ、」


 北門前に着くと、人垣ができていた。キャーキャー言っている。凄い人気だな。


 これを掻き分けるのはちょっと申し訳ない。まだ距離はあるし、門前に先回りしておこうかな。


「あ、カナタ様じゃないですか」


「リリさん?」


 途中で誰かに声をかけられたので振り返ると、そこにはリリさんが立っていた。

 彼女は冒険者ギルドの受付嬢というイメージが強かったから、立ち姿を見るのは新鮮な感じがする。いや、よく考えたら初めてだ。


 って言うより、


「リリさん、僕より背が高いんですね」


「え?あ、そうみたいですね」


 僕は別に、背が高いわけではない。175センチ程度だから、平均的な高さだ。

 それを考えると、リリさんは女性の割には背が高いように思える。


「それにしても、もう依頼をこなしてしまったんですね。それも無傷で。流石です」


 ……何が流石なんだよ。


「もしかして、カナタ様も討伐隊の旅立ちを見に行くんですか?」


「はい。一応、友達なんで」


「ふふ、そうですか」


「でも、人混みが凄かったんで、先に北門まで行っておこうかなって思いまして」


「なるほど。なら、私もご一緒してもいいですか?」


「もちろんです」


 雑談しながら北門へ向かう。

 カウンターに座る彼女は色気の漂う美人さんだと思っていたけど、こうして並んで立つと、背の高いかっこいい系のお姉さんにも見える。

 なんか良い香りもするし、緊張するな。


「カナタ様は元の世界で、どんな生活をしていたんですか?」


 北門前に着いて討伐隊を待っていると、ふいにリリさんがそう聞いてきた。


「元の世界での生活?」


「はい」


「………」


 リリさんはただの好奇心で聞いてるんだろうけどなぁ……。

 僕、あんまり人に話すような人生過ごしてないんだよなぁ……。


「そんなこと聞いても、面白くないと思いますよ?」


「ダメ、ですか?」


 ……その目はせこいな。


「……軽蔑しません?」


「もちろん」


 即答か。


「僕は……、あ」


 僕が話し始めようとすると、ちょうど討伐隊がやってきた。それと共に人混みが迫ってくる。


「……また、あとで」


「そうですね」


 お互いに苦笑して、ベストポジションへと移動する。こんな状況が会話はできないかもしれないけど、せめて一目でも見ておきたい。


「あれがカナタ様と同じ第五期の勇者様方ですね」


 歩いてきたのは、ギラギラと輝く装備を身につけた玲達だった。なんだか様になっていて面白い。


「あ、おーい!奏多!」


 玲が僕に気付いて声をかけてきた。周囲のギャラリーがなんだなんだと僕に注目する。


「やぁ、玲。一週間ぶり」


「ほんとだぜ!奏多、全然会いに来ないしさ!何してたんだよまったく!」


 寄ってきた玲は、銀色に輝く鎧を身につけていた。なんか、微妙に似合っていない。


「はは、ごめんごめん。ちょっとのんびりしてたよ」


「ったく、相変わらずマイペースな奴だな。世界は変わってもお前は変わらねえってか」


 世界が変わったからと言っても僕はそのままだしね。まぁ、みんなそうだけど。


「奏多君!」


「やあ、栞」


 修道服のようなローブを着ている栞も、僕の方に来た。相変わらずの美人だ。


「奏多君はほんとに行かないの?」


「うん、行かないよ。僕としては、栞が討伐隊に参加したのが意外だったけど」


 栞は大人しく系だったし、正直王城に残るかと思っていた。


「だって、私も帰りたいもん。なのに待ってるだけなんて、卑怯でしょ?」


「気にしなくていい!例え一人だろうと俺が魔王を倒してみせるから。だから木嶋さん、無理して同行しなくていいんだよ?」


 どこから湧いて出たのか、いつの間にか快斗が僕達のそばに来て、胸を張ってそう言った。


「ううん、大丈夫。私は行くから」


「そうか、分かった。奏多、お前は残るんだろう?きっと魔王を倒してくるから、待っていてくれ」


 今度は快斗は僕を見る。気持ちは嬉しい。


「ありがとう。でも、僕は帰らない」


「……は?何言ってるんだよ奏多」


「僕は帰らないよ、玲。もう決めてる。君達が魔王を倒して帰る手段を得たとしても、僕はあんな世界には帰らない」


「奏多、お前……」


「おーい、お前ら!そろそろ行くぞ!」


 遠くから亮介先輩の声が聞こえた。見れば、他のメンバーは既に門で待っている。


「ほら、行ってきなよ」


「あ、ああ、そうだな」


「玲。またね」


「奏多……。そうだな、また会おうぜ」


「私も!」


「俺も必ず結果を出して帰ってくる」


「玲、栞、快斗、行ってらっしゃい」


 こうして、盛大な歓声に包まれた第五期の勇者による討伐隊は旅に出た。

 僕はただ黙って、その背中を見送った。





 ◆





「あ、勇者様ではないですか」


 討伐隊が旅立ち、夜の王城には少し寂しさが漂う。


 それでも変わらず働かなければならないメイドは、いつも通り回廊の窓を拭いていた。そこに、ある『勇者』が歩みよる。


「………」


「どうしました?あ、もしかして迷子ですか?このお城は本当に広いですからね。もう数年はいる私でも、時々構造を忘れちゃいますし」


 それはどうかとも思うが、そのメイドは笑ってそう言った。


「……いえ、ちょっと、疼いちゃって」


「………?疼く?」


「ええ。その、欲求不満で仕方ないんです」


 顔を俯かせるその『勇者』の表情は、垂れた前髪で隠れて見えない。


「欲求不満?」


「はい。要するに、気持ちいいことがしたいんです」


「気持ちいいこと、ですか?そ、それって……」


 メイドは少し顔を赤くして頰に手を当てる。


「だから、メイドさんに手伝ってもらいたくて」


「わ、私がですか!?だ、ダメですよ!女の子同士だなんて!」


 メイドは更に顔を赤くする。ダメだとは言っているが、満更ではないのかもしれない。


「ダメ、ですか?」


「そんな……でも、少しだけ……な、ら……?」


 メイドはチラチラと『勇者』を見ながら答えようとし、途中で異変に気がついた。突如、体が軽くなった(・・・・・)からだ。そして、見た。


 自分の右腕がない。


「あ、ああ、ああああああああああ!!?」


 絶叫が、静まり返っていた廊下に響き渡る。だが、何故か反響はしない。


「ハァッ、ハァッ、あぁ!良い!良いよその声!思わず濡れちゃったよぉ!!」


 それを聞いた『勇者』は恍惚とした笑い声をあげる。


「ちょっとなら良いんだよねぇ!?なら、次は左腕っと!」


 ヒャンと風を切る音が鳴る。と同時に、ポトリと音が聞こえた。

 メイドがそちらを見ると、そこには見慣れた腕が落ちていた。


「ぎっ、ぃやぁぁぁぁぁぁ!!!」


「やばいやばい!君、良いねぇ!最高だよぉ!」


「ひっ、や、やめっ!」


「だーめぇ」


 ごとり、どさり、と何かが倒れたような音が続いて響く。

 メイドが最後に見たのは、離れた場所に倒れる自分の体だった。


「あーあ、イっちゃった。下着洗わないと」


『勇者』はその凄惨な現場をあとにする。


 気持ち良さそうな、本当に気持ち良さそうな表情を浮かべながら。






そろそろ主人公が気持ち悪くなってくると思います。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。