俺氏異世界でさらに無力。
どれくらい走っただろうか。
あたりはすでに夕闇で俺がここに飛ばされたのがまだ日が傾き始めた時だったから結構な時間走ったのだろう。
疲れ果てて立ち止まるも、さっき目の前で起きた惨劇がフラッシュバックして吐き気が込み上げてきた
。
嘔吐するも、吐しゃ物は胃液ばかりでもう吐き出すものがないと体がうったえている。
「はぁはぁ」
女の子を助けられなかった自分の無力さと目の前でまざまざと見せつけられる弱肉強食というどうしようもない無常感に打ちのめされる。
「くそっ!なんで・・・・・なんで・・」
「君に責任はないよ。」
神様は慰めるように言った。
異世界に飛ばされていきなり目の前で人が死ぬなんてラノベでもあり得ないような展開にまだ心も体もついてきていない。
ふと神様が「町が見えてきたよ。」と言った。
顔をあげると門があるのが見えた。
「とりあえず、あの町へ行ったみたら?」
「あぁ、そうするよ」神様の問いにぶっきらぼうに答える。
歩きだした俺も神様も無言だ。
数分も歩かないうちに門が見えてきた。
金属製の両扉のもので門でとても頑丈そうだ。
門の両脇には鎖帷子の上に鎧を着こんで槍を持ついかにも門番然とした男が二人いた。
俺をみると門番二人は槍を構え警戒する。
「何のようだ?」
あまり友好的ではない邂逅にとまどいつつも、まぁ、俺は異世界から来たわけで服装も違うし警戒してもしょうがないと腹をくくり
「この町に入りたいんです。」とできるだけやわらかくいった。
「身分証をみせろ。」門番の返答はこうだった。
異世界から飛ばされてきました。何て言っても信じてくれるわけないだろうと思いつつ、他に理由も見つからなかったから本当のことを言うしかないか。
「異世界から飛ばされてきました。」
「・・・はぁ」
まぁ、そういう反応されるだろうなと思ってはいたが門番が
「異世界から飛ばされてきたなら身分証は持ってないってことか?」と続けた言葉に、ん?これはいけるパターンか!と内心驚いた。
「はい。異世界から飛ばされてこの世界にきたので身分証は持っていません。」
正直に答える。
「じゃあ、金はあるか?」
「いえ・・・」
「じゃあ、入れることはできない。」
「!?」
さっき明らかにはいれる流れだっただろと思いつつも
「なんで入れてもらえないんですか?」
と丁寧に聞く俺も、門番の態度は相変わらずすげない。
「身分証をもってないってことはお前の素性がわからないってことだ。そんな素性もわからないようなやつをこのトワ王国ギルランド第一区アシエン領にいれることはできない。金を持っているなら話は別だがな。」
「っ!」
金が全ての世界だと忘れていた。全くの正論に言い返せない俺に門番はさらに続ける。
「さぁ、もう用はないだろ。さっさと立ち去れ。」
「・・・・」
あたりはもう夜のとばりおりていて、闇の中に時おり響く獣の声が不気味な雰囲気を醸しだしている。
当てもなくとぼとぼ町を離れる。
「神様は俺がさっきみたいに追い返されることわかっていたのか?」
「まぁ、ちょっと予測はできてたね。この世界は金が全てだから。君には身分を証明する手段がない、それにお金もない。じゃあ追い返されるのは自然の摂理だよね。あ、あと言い忘れてたんだけど、今このトワ王国は隣の国と戦争中だからよけい町に入る審査とか厳しかったんだった。」
てへっと、悪びれる様子もなく、いけしゃあしゃあと言う神様に俺はもう怒りもわいてこず、言葉も出ない。
無言のままの俺に神様は続ける。
「どうだい?お金が全ての世界って君が想像していた通りの世界かい?」
「・・・・・」
異世界召喚なんていうから楽しいものだとばかり思っていた。ラノベみたいなハーレムで俺TUEEEEみたいな世界とは違う現実に打ちのめされる。
「まぁ、でも私は君をこの世界へ飛ばした張本神だからねー。機会はちゃんとあげるよ。」と言うと神様はどこかへ消えてしまった。
何かこの国で使える通貨をくれたり、魔法を使えるようにしてくれるのかと期待したが神様は一向に帰ってくる気配を見せない。
ぼっ立ちのままいたずらに時間だけが過ぎてゆく。
もしかしたらもう神様が言う機会とやらは俺に与えられていて魔法を使えるのかもしれないと身振り手振りで某ナンバリングゲームのケア〇ガやファ〇ガを唱えてみたが、自分の体力が回復すらわけでもないし、炎がでるわけでもなかった。
神様からの機会とやらが全く実感できずにいる俺に前方からなにやら光が近づいてきた。だんだんその光は大ききなって、馬のかける音も聞こえ、馬車に取り付けられているランタンだとわかった。
神様が言う機会とはこのことだと悟った俺は馬車が走ってくる方向へ思い切り手を振った。
「おーい、助けてく・・・・れ・・・・・え?」
ひゅん、という音がしたかと思うと俺の横を何か物体がすごい勢いで通り過ぎて行った。
頬が熱くなり触れてみると、触れた手が真っ赤に染まり、そこで初めて俺は攻撃されたことに気が付いた。




