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デスゲームの悪役になった俺の生存戦略  作者: ハチ


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第42話 ここは違う世界②(sideエマ)

 彼が助けたもう一人の男の人と一緒に、手近な部屋へ転がり込む。

 物置のような、狭くて埃っぽい部屋だった。


「はあっ、はあ……な、なんなんですか、さっきの……」

 声も体も震えているのが、自分でも分かって壁にへたり込む私に、彼は静かに答える。

「分からない……でも、今は動かない方がいい」

 落ち着いた声だった。

 この人だって動揺しているはずなのに、それを表に出さない。

(不思議な人……)

 チラッと見ると、彼は倉庫の中の鏡を見て何事か考え込んでいる様子だった。


 息が整ってきた頃、ようやく言葉が出た。

「さっきは、ありがとうございました。助けてもらって……」

 礼を言う私を見て、少し間を置いてから、彼はそっけない調子で答える。

「――たまたま近くにいたから助けただけだ。あのままだと俺にも被害が及ぶかもしれなかったからな」

 その皮肉な言い方に、一瞬戸惑ってしまう。

 危険な状況で誰かを助けられるような人なのに、こんな物言いは彼に合っていないように感じて、ますます不思議だった。


(なんだか、彼じゃない人が話しているような感じで変だわ)


 自分でも何を言ってるんだろうと思ったが、何故かそう感じた。

「私、柊(ひいらぎ)と言います。柊エマです」

「…… 鴉城透真(あじょう とうま)だ」

 私が名乗ると一瞬体を硬直させた彼は、じっと私を見た後、短く名前だけ名乗る。

 返ってきた名前に、わたしは丁寧に頭を下げた。

「鴉城さん、ですね。よろしくお願いします」

 鴉城さんは少しだけ黙り込んだあと、なぜか気まずそうに視線を逸らした。

(何を考えているのかよく分からない人……でも、それでも)

 それでも――この人と一緒にいれば、大丈夫な気がした。


 しばらくは沈黙していたが、突然鴉城さんが音が聞こえるくらい掌で顔を叩いて、それっきり動かなくなってしまったので心配で思わず声をかける。

「あの、鴉城さん、大丈夫ですか?」

 恐る恐る尋ねると鴉城さんはこちらを見て「……透真でいい」と返した。


 もしかして、気遣ってくれているのだろうか?

 目覚めたときも恐ろしい化け物が現れたときも、冷静で動揺してなくて、自分だって危ないのに私や男の人を助けたり、話して見ると何故か皮肉な言葉で喋って、今は見ず知らずの私を気にして名前で呼んでいいと言ってくれている。

 本当に分からなくて不思議な人。

 でも目が覚めてから今まで、不安や恐怖で強張っていた心が、ゆっくりと解けていくような気がした。

「はい、透真さん」

 なんだかそれがおかしくて、こんな状況だというのにやっと私は笑うことができた。


 その後私は透真さんが助けた男の人から、ここはデスゲームの世界で、ミッションをクリアしないと死ぬと聞かされる。

 血の気が引いていくのが、自分でも分かった。

「死ぬって、そんな、嘘ですよね……? だって、ここ、研究施設で……事故があったって、そう放送で……」

 唐突なことで、内容が頭に入ってこなくて、混乱した。

 男の人は私の反応に少し気の毒そうな顔をして「放送は嘘じゃない。ただ、それだけがルールの全部じゃないってことだ」と答える。


(どうしよう……どうしたら、いいんだろう……)

 死、という言葉だけが頭の中をぐるぐるとまわって、どうしたらいいのか分からない。

「――フン、ずいぶん面倒な話に巻き込まれたもんだ」

 そんなとき、ふいに透真さんの皮肉めいた声が聞こえた。

 隣を見ると、その横顔は多少強張ってはいるものの、この事実を受け入れているみたいに見える。

(どうして? 私はこんなに混乱してるのに……)

 分からないことだらけだけど、どうということはないという態度の透真さんの姿を見ていると、少しずつ気持ちが落ち着いてくるのが分かった。

 話し合いの結果、皆で一緒に動いてミッションをクリアすることになった。


 私は正直ホッとしていた。

 ここでそれぞれ別れることになったら、それこそどうしていいか分からない。

 それに今、透真さんと離れることになったら、きっと私は生き残れない――何故かそう強く予感した。


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