第40話 報酬(後編)
「ま、命があっただけ儲けもんだな。今回は助かったぜ、ありがとな」
「ああ、協力してくれて感謝する」
渡とレオが揃って頭を下げるのに、エマと陽太も慌てて礼を言いながら頭を下げる。
俺は頷きを返し、玲はとくになにも反応をみせなかった。
「これでしばらくは白夜でゆっくりできるな」
何気なしに呟いた渡の言葉に陽太が反応する。
「白夜? って、何ですか?」
「ん? ああ、そっかお前たちまだ参加し始めの初心者だったか。白夜都市っていう黄昏都市のもうワンランク上のエリアだよ」
「白夜都市、ですか。不思議な名前ですね……」
「都市に、ランクなんてあるんですか!?」
聞き慣れない単語に、エマと陽太が揃って声をあげた。
(――白夜都市、か)
俺は表情を動かさないよう、意識して呼吸を整えた。
「そりゃそうだろ。ミッションにランクがあるんだから、住む場所だって同じだよ」
渡は当然のことのように言ってのけ、その続きをレオが補足するように説明する。
「俺たちみたいなDやCランクが拠点にしてるようなエリアだな。たぶんここが一番プレイヤーが多く集まっている」
「ちなみに、もっと上のエリアもあるぞ」
「もっと上?」
目を丸くしながら驚く二人の反応がよっぽど楽しいのか、ニヤニヤ笑いながら渡が答えた。
「黎明都市っていうすべてがハイランクなエリアだ。噂じゃ黄昏、白夜より高ランクなアイテムやサービス、娯楽が充実してて車や電車も走ってるらしいぞ」
「ただ払うポイントも桁違いらしいから、この都市にはAランクまたはBの上澄みか、その辺の連中しか拠点にしてない」
レオが付け加える。
玲がちらりと視線をこちらに向けた気がしたが、俺は気づかないふりをした。
「車、電車……」
エマは呟くとハッとしたような顔をして、渡へ向けて話しかけていた。
「あの、渡さん! 黄昏都市には何か、移動できる乗り物ってないんですか?」
真剣なその様子に戸惑いつつ、渡は「黄昏には移動手段はなかったはずだぜ、白夜にはバスくらいならあるが」と答えている。
「そう、ですか……」
あからさまに気落ちしたようなエマの様子に、まわりが不思議な顔をしていると、エマは今度は俺のほうへ顔を向けてきた。
「透真さんと陽太くんが同じ黄昏都市にいるなら、合流できたら嬉しいなって思ったんですけど、難しいみたいです」
その表情は笑ってはいるが、眉が下がり明らかに落ち込んでいるようだった。
「エマさん……」
陽太が慰めようとして、でもなんと声をかけたらいいのか分からないようで、伸ばしかけた手をうろうろさせている。
「今は合流できなくても次のミッションでランクが上がれば、白夜都市へ移動してそこで合流できるはずだ」
エマを安心させたくて、そう確信して答える俺をその場の全員が見た。
渡とレオは驚いた顔をして、エマと陽太は驚きのあとパァッと明るい笑顔になる。
玲はその表情からは何も読み取れなかったが、こちらをじっと見つめているその視線が何か物言いたげだ。
ふいにその薄い唇が開いたかと思うと、いつもの淡々とした調子とはどこか違う低い声が俺に向けられる。
「あなたー」
と言いかけたところで、俺たちの体が光に包まれて薄くなっていく。
「お、もう時間か。それじゃお前たち、またな!」
「俺と渡は白夜にいるから、もし都市に来て見かけたらいつでも声をかけてくれ」
そう言い残して渡とレオの姿が消えていく。
「透真さん! 私、次のミッションも頑張ります、それで絶対ー」
最後まで言い終わることもなく、エマの姿が消えた。
「透真さん、またー」
エマとほぼ同時に陽太の姿も消えていく。
俺もあと一瞬のうちには転送されるだろう。
ふと、さっき玲が何か言いかけていたのが気になって玲の姿を探した。
もうほぼ消えかけている玲も、こちらを見ている。
消えかけているのに、その赤い瞳がなぜか鮮明に見えて目が離せなかった。
玲の口が動いて何かを言っているみたいだったが、読み取れそうで読み取れない口の動きに答えの出ない苛立ちを感じる。
結局、それを確かめる前に俺もその場から転送された。
祝・40話到達!&ミッション2回目クリアです!
ここまでお付き合いいただき、本当にありがとうございました! これにて本編は一区切りとなります。
次回からは、他キャラ視点での【番外編】に突入します!もし「あのキャラのこんな話が見たい!」といったリクエストがあれば、ぜひコメントで教えてくださいね。
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