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デスゲームの悪役になった俺の生存戦略  作者: ハチ


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第31話 二枚目の地図(前編)

「あの、それなら残りの地図がある宝の場所、分かるかもしれないです」

 エマが声を落として言った。

「さっき逃げて隠れてた建物の窓から、向かいの建物の部屋に何か光るものが見えて」

「光るもの……宝で間違いないのか?」

 俺が首を傾げて確認すると、エマは頷いた。


「はい。昨日、宝を見つけたときの反応と同じ光り方でした」

「向かいの建物って言っても結構距離があって、俺は全然分からなかったんですけど」

 陽太が苦笑しながら頭を掻く。

 エマの目のよさは、俺も一度見て知っている。

「場所は分かるか」

「ここからそう遠くないです。ただ――」

 エマが迷うように言葉を濁した。

「ただ?」

 その続きを促すように尋ねる。

「その建物の入り口が潰されていて、中に入れないかもしれません……」


 俺たちはエマの見たその建物の場所へと移動を始めた。

 これまでなら視界の端にちらつく程度だった白い人影が、今はいたるところに滲んでいる。

 リストバンドの示す数字は『2』、特別な宝とその在処を示す残りの地図の二つだけだ。

 宝が見つかった数だけ、敵の数も二十八体に増えてこの街の幽霊は今が一番多い。

 ボウガンを構えた陽太の矢が飛び、輪郭のぼやけた人影が霧のように散った。

 物量で押し寄せられると厄介だが、一体一体はまだ対処のしようがある。

 ただそれもまたすぐ再生されるので結局はこちらの消耗戦だ。

「こんなの、キリがないですよ……」

 新たに現れた幽霊を矢で撃退しながら陽太が呟いた。

 それに頷きながら俺も目の前の幽霊に鉄パイプを振るう。

 そうやって進みながら、目的の場所へ急いだ。


「これは……」

 目指す建物の前にたどり着いたものの、俺は言葉を失った。

 その入り口は上階から崩れ落ちてきたコンクリートの巨塊と、へし折れた鉄骨によって押し潰されていた。

 ガレキのあちこちから錆びついた鉄筋の先端が鋭く突き出していて、さらに放置された大型の自動販売機がそれを塞ぐように倒れ込んでいる。

 ただその中で、横を向いて慎重に滑り込めるかどうかの細い隙間があった。

 その隙間から入り口の奥を覗くと、潰されているのは入り口だけで建物の中自体は広い空間になっていて大丈夫そうだ。


「この建物で間違いないのか?」

 振り返ってエマに確認すると、頷いて建物の二階の端を指差した。

「はい、あの奥の部屋で光るものが見えました」

 確信めいた言葉に「そうか」と返して再び目の前の建物を見る。

 足早にぐるりと移動しながら全景を確認すると、四方はコンクリートの壁になっていて、出入り口や窓らしきものは見当たらない。

 この建物に入るには、正面の入り口からしか手段がなさそうだった。

 確かに小説でも入り口が潰された建物の中で、特別な宝への在処を示す地図を手に入れていた。

 俺が行ければ行きたいが、体格的にあの入り口を抜けていくのは無理だろうことが分かる。

 残る手段は一つだけだが、その方法が……。


 迷う俺にエマが声をかけた。

「透真さん、入り口からのあの隙間、私ならあそこから中に入れるかもしれません」

 決意したような固い声だった。

 エマの表情は緊張していて、でもその目の中に譲らない意思が見えた。

 その方法しかないだろうことは分かっている。

 だがそれは至る所にいつ敵が現れてもおかしくないこの状況で、誰の助けも借りれないなか、彼女一人で宝を取ってこなければならないということだ。

「そんな?! エマさん一人でなんて、危険ですよ! なにか別の方法を考えたほうが……」

 陽太が慌てて反対するが、玲は入り口の瓦礫の隙間とエマを見比べて「たしかに細身の彼女であれば、ギリギリ通れるかもしれませんね」と頷いた。

 俺の答えに迷う様子や陽太の心配の滲んだ反対の言葉、玲の賛成ととれる淡々とした発言、それぞれの反応を見てエマは笑った。

「私、前回も今回も、ミッションの中で透真さんに助けられてばかりでした。ここで私にしかできないことがあるなら、私も役に立ちたいです。行かせてください」

 エマはもう決めているようで、ここで俺が行くなと言っても聞かなそうだった。

 それに、役に立ちたいという彼女の意思が頼もしくも見えて、俺は思わず笑みが溢れた。

「……せいぜい、頑張ってくるんだな」

 任せたぞ、と意図した言葉と違うセリフが出たが、エマは「はい!」と頷いた。


「行くならこれを持っていけ」

 早速とばかりに入り口へと向かうエマへ、俺は懐から取り出した札を手渡した。

 俺が最初に見つけた宝から出た札だ。

 本当だったら小説の中では玲がエマに手渡していたはずだが、玲の札はさっき俺を助けるために使ってしまった。

「これがあれば幽霊が現れても撃退できる、危険なときは札を破るんだ」

 使い方を説明すると「ありがとうございます」とエマは札をぎゅっと握った。

「あの、エマさん、良ければこのボウガンも一緒に……」

 心配と不安でいっぱいな顔の陽太がボウガンを差し出す。

 それに首を横に振って断ると、エマは安心させるように明るい声で言った。

「陽太くん、ありがとう。でも私はこの武器をうまく扱えないから、宝の持ち腐れになっちゃう」

 冗談めかした返事に、眉を下げながらそれでも陽太も笑顔を返した。

「それじゃ、行ってきます」

 俺たちを見渡したあと、エマはそう声をかけて入り口を塞ぐ瓦礫の隙間に体を押し込んだ。

 肩周りで突っかかって一度動きが止まったが、少しずつ体をずらしながらじりじりと進んでいく。

 肩が隙間を抜けると、後は危なげなくその体が奥の方へ入っていった。


「大丈夫でしょうか……?」

 エマが消えた入り口を見て陽太が心配そうにぽつりと呟く。

 同じ気持ちを抱えながら「エマなら、きっと大丈夫だ」と返した。

いつも読んでいただき、ありがとうございます。

10月より、更新頻度を週3回(火・木・土)に変更させていただきます。

ストックの都合によるもので、より安定した形で長く続けていくための調整です。


また、皆様の応援のおかげで、なろうで1000PVを突破しました!ありがとうございます。

記念に作者の魂を込めた「透真&玲の記念イラスト」を大公開いたします!公開の際は、またこちらでお知らせいたします。


感想・ブックマークも、とても励みになります。

引き続き、どうぞよろしくお願いいたします。

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