↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲームの悪役になった俺の生存戦略  作者: ハチ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

25/47

第25話 状況整理(前編)

 風が収まったあとも、しばらくは耳の奥で音が鳴っていた。

「危ないところでしたね」

 玲の声はさっきの騒ぎが嘘だったみたいに静かで、俺は何か言おうとして、でも喉の奥が勝手に震えて結局何も言えなかった。

 このミッションに、玲は本当に参加していた。

 物語の通りにエマだけじゃなく、玲もこの廃墟の街のどこかにいた。

 分かっていたはずなのに、実際にこの目で見るまではどこかで信じきれていなかったのか、安堵が遅れて胸に落ちてくる。


(さっきの暴風は、まさかスクロールの力を使ったのか……?)


 エマが見つけた青いスクロールと同様に、このミッションにはもう一つ、緑のスクロールも隠されていたはず。

 小説の内容通りにエマと玲が、それぞれに手に入れたんだ。

 スクロールはミッションの中でしか入手できない、貴重なアイテムだ。

 その威力は凄まじく、先程のように絶体絶命の状況の中でも、起死回生できる程の効果を持っている。

 (実際にこの目でスクロールの力を見るのは初めてだが、あれ程の威力なら皆が欲しがるのも分かる気がする)

 玲が現れた状況にあれこれ考え込んでいると、先に動いたのはエマだった。

「凍黒さん……!」

 駆け寄って、それから少し照れたように立ち止まる。

「お久しぶりです。よかった、生きてて……って、変ですね。凍黒さんが無事かどうかなんて、聞くまでもなかったのに」

「あなたたちの方が心配でしたよ」

 玲は短くそう返して俺の方に目を向けて、ほんの一瞬だけ、その視線が長く止まった気がした。


「あの、透真さん」

 陽太が、俺の袖を軽く引いてくる。

「この人……知り合いですか? なんか、雰囲気が……」

 言葉を選びかねているのが分かった。

 たぶん「怖い」と言いかけて、直前で飲み込んだのだろう。

「前のミッションで世話になった男だ」

 俺はそれだけ答える。

 短すぎる説明だが、でも今はそれ以上を、うまく言葉にできそうになかった。

 陽太は「そうなんですね……」と言いながら、玲から半歩、距離を取る。

 敵意というより、得体の知れないものへの本能的な警戒に見えた。

「陽太くん、大丈夫ですよ。凍黒さんは噛みつきませんから」

 エマがからかうように言うと、陽太は「べ、別に、ビビってないですけど」と慌てた様子で早口に答える。

 その空気に、少しだけ肩の力が抜けた。

 俺は改めて、玲を見る。


「――なんで、ここに?」

 我ながら素っ気ない聞き方だと思うが、玲は一瞬だけ俺を見て、ふいと顔を逸らしながら答えた。

「こういう宝探し系のミッションは、思わぬアイテムが出ることが多いので。参加するプレイヤーは、案外多いんですよ」

 嘘ではないんだろう。

 でも、それが全部でもないんだろうということも、なんとなく分かった。

 聞き返すべきかどうか迷っているうちに、玲はもう俺たちの周りに視線を巡らせていた。


「幽霊の数、今は散らばっていますが奴らはまた再生して戻ってきます」

 その一言で、空気が切り替わった。

 白い影の姿はもう周囲に見えなかったが、風に飛ばされて霧のように消えたそれを、俺は警戒するようにまわりを見渡す。

「あまり長居すると、人の気配にまた集まってくるかもしれません。今のうちに、状況を整理しておきましょうか」

 口調にはさっきまでの淡々とした余裕とは少し違う、切り替えるような冷たさがあった。

 エマが頷いて、リストバンドに目を落とす。

「宝の残数、かなり減ってますね……昨日の夜より」

「宝を見つけるたびに敵が増えるってルールを考えると、当然っちゃ当然ですよね」

 陽太がぼそりと呟いた。

「それにしても、多すぎませんでしたか、さっきの数」

 エマの言葉に、俺は頷いた。

 明らかに異常と思えるくらいに、まるで俺たちを狙っているかのように集まってきた。

 あの量は、ただ探索を進めていて自然に湧いた数じゃない。

「あれは、貴方達を狙って仕組まれたものです」

 玲の確信めいた言葉に、やはりと予想していた事態に俺は胸の中で頷いた。

「仕組まれた……って」

 陽太が聞き返す。

「俺たちを狙って、誰かが罠を張ったってことだろ」

 俺の言葉に、玲は俺の方を見ると微かに頷く。

「はい。それと、少し話しておきたいことがあります」

 その言い方に、俺は嫌な予感がした。

「貴方達のところに向かう前に、私は他のプレイヤー三人組と接触しました」

 玲はそのまま、表情を変えることなく淡々と続けた。


「一人は左頬に蝿のタトゥーのあるプレイヤー、その男が残り二人のプレイヤーに指示を出して、三人がかりで幽霊をこの周辺に誘導していました」

「そんな……」

 エマが息を呑む音がした。

「あの、大きな音がした宝も、その人たちが……?」

 信じられないというような顔で言葉を詰まらせる。

 あの蝿のタトゥーの男は、小説の中で執拗にエマのスクロールを狙っていた。

 小説の中で唆されていたのは他でもない、俺自身――鴉城透真だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。