↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
デスゲームの悪役になった俺の生存戦略  作者: ハチ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/47

第23話 罠(前編)

 ゲーム開始から、エマや陽太と合流するまで数時間が経過していた。

 真上にあった太陽も今は西へ傾き、あたりを夕暮れが照らしている。

「自己紹介はそのくらいにしろ、暗くなる前に移動するぞ」

 廃墟を彷徨う白い影が増えつつある中で、夜に動くのは危険だ。

 完全に日が落ちる前に、落ち着ける場所を見つけなければならない。

 俺は二人に声をかけ移動を開始した。


「透真さん、あそこ」

 エマが指差した先、崩れかけた通りの向こうに、看板の文字が半分剥がれ落ちたホテルらしき建物が見えた。

 ――『◯◯◯テル』

 元の名前はもう読み取れない。

 だが屋根と壁がまだ立っている、というだけでこの廃墟と化した街ではマシだった。

 俺たちは顔を見合わせ、無言のまま頷き合う。

 今日はもう、ここで休むしかない。

 エントランスのガラスはほとんど割れていて、踏み込むたびに靴の下で細かい破片が鳴った。

 ロビーには倒れたシャンデリアと、朽ちたソファが横たわっている。

 一階の奥、比較的原型を保った小部屋を見つけて、そこを今夜の拠点にすることにした。

 窓はないが、その分入り口を絞れるし、外から見えにくいというのも都合がいい。

 腰を下ろすと、緊張に張り詰めていた体から力が抜けていくのが分かった。

 エマがそっと息を吐く音が聞こえる。

 陽太はまだ気を張っているのか、扉の方に視線を向けたままだった。

「ずっと移動してたからな。食事にしよう」

 俺が言うと、二人の視線がこちらに向いた。

 宝から出た食料は、俺とエマが見つけた分だけだった。

 水と缶パン、栄養バーが数本、チョコやクッキーといったお菓子が目の前に並ぶ。

 陽太が食料を見つけられなかったことに落ち込むが、有無を言わさず皆で均等に分ける。

「俺、何も持ってなくて……すみません」

「まだ言ってるのか。いい加減落ち込むのをやめて今後のことに頭を向けろ」

 パンを口に放り込みながら呆れたように言うと、陽太は「……はい」と頷きながらクッキーを齧りはじめた。

 そのやり取りを見守っていたエマがふふと笑う。

 等分すると一人分はお世辞にも十分とは言えない量になったが、それでも今日一日歩き通した体には染み渡るようだった。


 食事を終えた頃には、外はすっかり暗くなっていた。

 リストバンドに視線を落とすと、数字は『17』、変わらず減り続けていて、いつどこから敵が湧いてもおかしくない状況に眉を顰める。

 三人で顔を寄せ、今夜の見張りの順番を決めることにした。

「俺が先に見張る。二人は休んでくれ」

「透真さんばっかりずるいですよ。俺、まだ全然元気なんでやれます!」

「俺はまだ眠くないから遠慮する」

「私だってまだ全然起きてられますよ」

 軽口を叩きながらも、結局は俺が最初、次に陽太、最後にエマという順番に落ち着いた。

 三人で回せば、誰か一人に負担が偏ることもない。

 それぞれの持ち時間を大まかに決めて、エマと陽太が腕を枕に体を横たえ、目を閉じるのが見えた。

 俺は入り口近くに座り、暗闇に耳を澄ませる。

 建物の軋む音、遠くで何かが崩れる音。

 その合間に、二人の寝息が微かに聞こえてくる。

 それだけのことが、今はひどく貴重に思えた。


 交代の時間が来るたび、無言で肩を叩き、場所を入れ替わる。

 そうして、長い夜がゆっくりと明けていった。

 窓のない部屋にも、扉の隙間から外の光が薄く差し込み始める。

 朝が来たことを、俺たちはそれぞれの体で感じ取った。


 翌朝、二人の顔にはまだ拭いきれない疲労の色が残っていた。

 それでも、リストバンドの数字が昨夜のうちにまた一つ減っていて、俺たちも動き始めなければならない。

 ホテルを出て、崩れた通りを進む。

 陽太とエマは、昨日よりも自然に言葉を交わすようになっていた。

「宝には武器もあるなんてすごいのね。私もスクロールが出たけど使い方が分からなくて」

「スクロール? ってなんですか?」

「使い方次第ではお助けアイテムになる、らしいですよ」

 陽太の問いにエマが冗談めかして答えると、陽太は目を丸くして驚いた。

 軽いやり取りにまざる呑気な声が、張り詰めた空気を少しだけ緩めていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。