第14話 クリア報酬(後編)
デスゲームの最初のミッションクリアです!
序盤が終わり、ここから物語が始まりますので皆さんにも楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。
振り返る間もなく爆風が俺たちの背中を押し出し、地面に転がりながら、俺は炎に呑まれていく施設の姿を視界の端に捉えた。
あの化け物の絶叫が、炎の中に消えていく。
息を切らしたまま、俺はそのまま仰向けに倒れ込んだ。
抜けるような空が、頭上に広がっている。
終わったのか……安堵とともに大きく息を吐き出した。
緊張に強張っていた体の力がゆっくりと抜けていく。
どれくらい、そうしていただろう。
空を見上げたまま、しばらく動けなかった。
焼け落ちていく施設から立ち上る黒煙が、青空に不吉な筋を描いている。
「……終わった、のか」
隣で、男が呆然と呟いた。
同じように仰向けに倒れたまま、まだ現実を飲み込めていない様子だった。
「生きてる……本当に、生きてるんだ」
エマの声には、涙が滲んでいた。
俺はゆっくりと身体を起こし、周囲を見回した。
玲は少し離れた場所に立って、額の傷を確かめるように触れている。
その顔にはミッションをクリアしたにも関わらず、とくに喜びは見られなかった。
「――ありがとう、ございました」
エマが、震える声で俺たちを見て涙ながらそう言った。
俺は頷いて、玲は一瞥をくれただけで、何も答えなかった。
沈黙が流れる中、男がゆっくりと身体を起こし、俺たちに向き直る。
「……礼を言うのは、こっちの方だ」
いつになく、真剣な声だった。
「お前らがいなかったら、俺はとっくに死んでた。ここまで、世話になったな」
「まだ礼を言うのは早いんじゃないか。この後どうなるか、分からないだろ」
「そうだな。だが、一応――名乗っておこうと思ってな。今さらだがずっと名無しのままっていうのも、締まらないだろ」
男は小さく笑った。
「篠崎だ。篠崎修一」
その名前を、俺は静かに胸に刻んだ。
ここまで一緒に生き延びてきた相手の、初めて聞く名前だった。
俺とエマは顔を見合わせて笑う。
「鴉城透真だ」
「柊エマです」
二人がそれぞれ名乗り返す。
篠崎は満足そうに頷いた。
その時だった。
突如大音量でパンパカパーンと辺り一帯にファンファーレが鳴り響く。
俺とエマは驚いて周りを見回したが、篠崎と玲は落ち着いていた。
それと同時に視界の端に、半透明のウィンドウのようなものが浮かび上がる。
『――生き残った皆様、おめでとうございます。ミッションクリアを確認しました』
文字が、宙に浮かぶようにして表示されている。
エマと篠崎も同じものが見えているらしく、視線を宙に向けていた。
『ミッションF:バイオ研究施設からの脱出 クリア』
『功績に応じて報酬ポイントを付与します』
文字の下に、一覧が現れた。
『鴉城透真:初回クリアボーナス +300pt/特別功績ボーナス(囮行動)+150pt』
『凍黒玲:継続クリアボーナス +150pt/特別功績ボーナス(討伐貢献)+200pt』
『柊エマ:初回クリアボーナス +300pt』
『篠崎修一:継続クリアボーナス +150pt』
俺はその名前を目にした瞬間、思わず息を呑んだ。
エマがその表示に目を丸くしながら、玲のほうを見て確認するように尋ねる。
「凍黒、さん……? そういう、お名前だったんですね」
篠崎も驚いた様子で玲を見た。
玲は表示を一瞥しただけで、特に反応を示さなかった。
「聞かれなかったので」
素っ気なくそう言うと、玲は視線をこちらに向けた。
感情の読めない赤い瞳が、一瞬、俺を捉える。
あの土壇場で、俺は咄嗟に玲の名前を呼んだ。
玲は、あの時のことを覚えているはず。
俺は内心で冷や汗をかいていた。
だが玲はとくに何も言わなかった。
ただ値踏みするような視線を寄越しただけで、すぐに興味を失ったように目を逸らす。
(――何を、考えてるんだ?)
その沈黙が、かえって不気味だった。
何か言われるより、何も言われない方がよほど落ち着かなかった。
俺はその居心地の悪さを押し殺しながら、表示された自分のポイントを見つめた。
『所持ポイント:450pt』
これが、この世界でのはじめの一歩だった。
ここまで駆け足で読み進めていただき、ありがとうございました。
明日からは1日1回のペースでの更新に切り替わります。
物語もこれからさらに動いていきますので、気長にお付き合いいただけると嬉しいです。
感想・ブックマークも、とても励みになります。
どうぞよろしくお願いいたします。




