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【完結】『彼方と日常の境界、そのリアル』 ―ある日、大阪上空に未知の紋様が現れたら、現実社会はどう動く?―  作者: そらと ソラ
別れと出会い

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第七十二話 対面


 突然の出来事に、警備にあたっていた警察官もSPも、まったく動くことができなかった。

 いや、動く余地がなかったと言った方が近いかもしれない。

 それほどまでに、一瞬の出来事だった。

 我に返ったSPたちが、一斉に藤堂のもとへ駆け寄る。

 周囲に配置されていた警察官たちも動き出した。


「総理!」

「大丈夫です。下がってください」


 藤堂が片手を上げて制止する。


「しかし――」

「大丈夫です」


 藤堂はもう一度、はっきりと言った。

 SPたちは警戒を解かないまま、それ以上前には出なかった。

 カガリは地面に突き刺さった大剣を蹴り上げる。

 引き抜かれた大剣を掴むと、そのまま小さな背中へ戻した。


『こいつ、反応もできなかったぞ』


 カガリは藤堂を見ながら不服そうな顔をする。


『この国では、一番偉い人が一番強いとは限りません。気をつけてください』


 そう言って、ナギは刀を鞘に収める。


『でも、こいつ刀持ってるぞ』

『でも、強いとは限りません!』


 カガリはそれでもブツブツ文句を言っている。

 ナギは辺りを見回した。


『ひよりさん!』


 ひよりを見つけ、声をかける。

 ひよりが駆け足で近寄ってくる。


『通訳をお願いします』

『はい、分かりました』


 ナギは藤堂に向き合った。


『大変ご迷惑をおかけしました』


 そう言って、頭を下げる。

 ひよりがその言葉を藤堂へ伝えた。


「いえ……突然のことで多少驚きはしましたが、大丈夫です」

『すみません。大隊長はこういう人なので、注意はしていたのですが……』


 ナギは藤堂と浅間の間に残された傷跡へ目を向ける。


『しかし、動かないでいてくれて助かりました』

「リツ氏より、そう聞いていましたので」


 ひよりがその言葉をナギへ伝える。


『それでも動く人は多くいるので、助かりました』


「総理!」


 入管の担当者が走ってやってくる。


「上陸意思の確認がまだです。今、よろしいでしょうか?」

「はい、分かりました」


 担当者はひよりを見る。


「水城さん、日本の地に上陸するにあたり、意思確認が必要です。聞いていただけますか?」

「分かりました」


 ひよりは2人へ向き直り、事情を説明する。

 すぐにこちらへ向き直った。


「上陸するとのことです」

「はい、これで大丈夫です。それでは、船にいる2人にもお願いします」

「分かりました」


 ひよりは入管の担当者とともに、巡視船へ向かった。

 藤堂は、先ほど大隊長と呼ばれていた少女を見る。

 どう見ても、自分の孫ほどの少女だ。

 だが、先ほどの動きは普通ではない。

 その少女が今、藤堂の腰にある刀を興味深そうに見つめている。

 藤堂はもう一度、片手を上げて周囲の警備を制した。

 そして、ゆっくりと刀を抜く。

 少女の目が、まん丸に見開かれた。

 藤堂は刀を横にし、その刀身を少女の前へかざして見せる。

 少女は、まるで宝物でも見るような顔で刀を見つめ、何かを話している。

 隣に立つ青年は、どこか申し訳なさそうな顔をしていた。

 そうしているうちに、ひよりが戻ってきた。


「今、どういう状況ですか?」

「いや、これは――」

『おい、これは何ていう刀だ!』


 そこへカガリが割って入る。

 ひよりはカガリの言葉を聞き、藤堂を見る。


「総理、この刀は何という刀か聞いています」

「これは藤堂家伝来、備前長船長光の一振りです」


 ひよりがカガリへ伝える。


『いい刀じゃ! わらわにも一振り打ってくれ!』

「残念ながら、大昔の人間で今は……」


 ひよりからその言葉を聞いたカガリは、残念そうに刀を見る。


『そうか。それじゃ、これをわらわが――』


 その時、ナギがカガリの背中を押した。


『はい、大隊長。これ以上ご迷惑をかけないでください』

『お、おい!』


 ナギはそのままカガリを押しながら、藤堂の前から下がっていった。

 下がった2人のもとへ、ヤシロとリツが合流する。

 4人が揃うと、カガリが3人に何かを言った。


 それと同時に、こちらへ振り向く。

 カガリは背筋を伸ばし、直立不動に立った。

 その横にナギ。

 後ろにはヤシロとリツが控える。


「総理」


 浅間が藤堂に声をかける。


「分かっています」


 藤堂はカガリの前まで歩いていく。

 浅間はその斜め後ろに立った。


『わらわはツクシノ辺境方面軍、第三大隊、隊長カガリ』

「私は日本国、内閣総理大臣、藤堂真です」


 ひよりが互いの言葉を伝える。

 そして――。

 藤堂とカガリは、同時に刀と剣を前へ出した。

 カガリが、にこっと笑う。

 それに合わせるように、藤堂の頬も緩んだ。

 その後、それぞれが挨拶を済ませていく。

 その後藤堂は、リツの前まで歩いていった。

 間近で見ると、確かに姉妹だと分かるほどよく似ている。

 藤堂は何も言わず、ただ深く頭を下げた。


『……』


 リツも何も言わない。

 ただ黙って、その謝罪を受けた。

 しばらくして、藤堂はゆっくりと頭を上げる。


「それでは、会談場所へご案内します」


    ◇


 会談会場 控え室。

 藤堂たちは会談を前に、控え室へと入る。

 部屋の一角には、島側の武器を一時的に保管するための保管庫が用意されていた。


「会談の前に、皆さまの武器をこちらで一時お預かりします」


 ひよりがその言葉を4人へ伝える。

 事前に話が通っていたこともあり、ナギが最初に腰の刀を外した。

 続いてヤシロ、リツもそれぞれの刀を預けていく。

 担当者が1本ずつ確認し、保管庫へ収めていった。

 そして最後に、カガリが背負っていた大剣を下ろす。

 担当者が受け取り、保管庫へ運ぶ。


「……」


 保管庫の前で、その動きが止まった。

 大剣と保管庫を見比べる。


「……入りませんね」

「入りませんね……」


 担当者は少し考えたあと、何かを思いついたように顔を上げた。


「おい、あれ持ってこい」


 もう1人も意図を察したのか、すぐに走っていく。


    ◇


 カガリの大剣が、太い鎖でぐるぐる巻きにされていく。

 最後に南京錠をかけられ、保管庫の横に固定された。


『これじゃ今朝のわらわと同じじゃ!』


 カガリが不満そうな声を上げる。

 その隣で、ナギが肩を震わせていた。


「それでは、時間までこちらでお待ちください」


 担当者がそう告げ、部屋を出ていく。


 しばらくして――。

 コンコン。

 扉がノックされた。


「時間です」

次回、第四部完結。

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