↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】『彼方と日常の境界、そのリアル』 ―ある日、大阪上空に未知の紋様が現れたら、現実社会はどう動く?―  作者: そらと ソラ
別れと出会い

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
66/84

第六十四話 同盟


2027年3月28日(日) 23:47


 羽田空港。

 アメリカから到着した便から、乗客が次々と降りてくる。

 その中に、クロフォードの姿があった。

 長時間のフライトを終えたばかりだったが、その足取りに疲れは見えない。

 クロフォードは到着ロビーへ出ると、スマートフォンを取り出した。

 画面には、明日の予定が表示されている。

 総理官邸。

 クロフォードは画面を閉じ、そのまま出口へ向かった。


    ◇


2027年3月29日(月) 09:00


 総理官邸。

 藤堂の前に、クロフォードが座っていた。


「突然の訪問、申し訳ありません」

「いえ。それで、お話というのは?」

「島の調査についてです」


 藤堂がクロフォードを見る。


「今後の島の調査に、アメリカも参加させていただきたいと考えています」

「共同調査ということですか?」

「はい」

「どういうことですか?」

「島は世界中から注目されています。また、今後、世界的な価値を持つものが発見される可能性もあります」


 クロフォードは続ける。


「同盟国として、ぜひ我々も調査に参加させていただきたいと考えています」


 藤堂は少し考えた。


「アメリカの意向は分かりました」

「ただ、現在は島の調査そのものを中断しています」

「中断?」

「はい。今回の事件の影響です。また、死亡した女性が唯一の島との接触者だったため、現在は調査を再開できる状況にありません」

「……そうですか」


 クロフォードは少し考える。


「侵入者の1人が死亡し、残る4人が行方不明であることは聞いています、事件が起きた理由については、何か分かったのでしょうか?」

「捜査の過程で、5人への依頼元とみられる会社を特定しています。ドバイに登記された会社です」


 藤堂は続ける。


「その会社を調べたところ、アメリカ企業との繋がりが確認されています」


 クロフォードの表情がわずかに変わった。


「……アメリカ企業?」

「はい、この企業です」


 藤堂は資料をクロフォードへ見せた。

 クロフォードが資料へ目を落とす。


「……アークウェル・インダストリーズ」

「大統領から聞いていないのですか?」


 クロフォードが、わずかに目を見開いた。


「……はい」


 クロフォードは黙った。

 しばらくして、藤堂を見る。


「事情は分かりました。一旦、失礼します」


 クロフォードは席を立った。


    ◇


2027年3月29日(月) 11:26


 都内のホテル。

 部屋へ戻ったクロフォードは、上着を脱いで椅子へ掛けた。

 藤堂の言葉が、頭に残っていた。


『大統領から聞いていないのですか?』

「……」


 クロフォードはベッドに腰を下ろした。

 ふと、日本へ発つ前のことを思い出す。

 ホワイトハウス。

 大統領執務室へ向かう途中、廊下ですれ違った男。

 FBI長官だった。

 クロフォードはスマートフォンを取り出すと、連絡先から1人の名前を選んだ。

 呼び出し音が数回鳴る。


『もしもし』

「俺だ」

『クロフォード? 日本じゃなかったのか?』

「ああ。今、日本にいる」

『どうした?』

「少し聞きたいことがある」

『何だ?』

「大統領から、何か調べろと言われていないか?」


 一瞬、相手が黙った。


『……何の話だ?』

「アークウェル・インダストリーズだ」

『……』

「どこまで分かった?」

『……』

『待ってくれ。俺の口からは……』

「……」

『……すまない』

「分かった、ありがとう」


 クロフォードは電話を切った。

 しばらくスマートフォンを見つめる。

 そして、再び連絡先を開いた。

 今度は別の人物へ電話をかける。


『珍しいな。どうした?』

「調べてほしい会社がある」

『会社?』

「ああ。アークウェル・インダストリーズと、ドバイのアルディーン・トレーディングだ」

『……何を調べればいい?』

「この2社の間に、金の流れがないか調べてほしい」

『簡単に言ってくれるな』

「できるか?」


 少し間があった。


『……分かった。調べてみる』

「頼む」


 電話が切れた。


    ◇


 数時間後。

 スマートフォンが鳴った。


「どうだった?」

『直接じゃない』

「どういうことだ?」

『いくつか会社を経由している。ただ、アークウェルから出た金が、アルディーンまで流れている』

「間違いないのか?」

『ああ』

「何のための金かは?」

『そこまでは分からない』

「……分かった。十分だ」

『クロフォード』

「何だ?」

『何を調べてる?』

「……ちょっとな」

『……そうか』

「ありがとう」


 クロフォードは電話を切った。

 窓の外へ目を向ける。

 アークウェル・インダストリーズ。

 その先にある、アルディーン・トレーディング。

 この2つは繋がった。

 あとは――

 なぜ、事件が起きたのか。


    ◇


 クロフォードは、リードへ電話をかけた。


『クロフォードか』

「大統領、島で起きた事件についてお聞きしたいことがあります」

『なんだ』

「アークウェル・インダストリーズと、ドバイのアルディーン・トレーディングに繋がりがあることは、こちらでも確認しました」

『……』

「問題は、なぜ事件が起きたのかです」


 クロフォードは続ける。


「アークウェルが、島への侵入を指示したのですか?」

『いや』


 リードは短く答えた。


『今回の事件は、あくまで現場の暴走によって起きたものだ』

「……」

『アークウェルが依頼したのは、島周辺の調査だけだ。島への上陸までは指示していない』

「それを、いつ知ったのですか?」

『……』

「私を日本へ送る前ですね」


 しばらく沈黙が続いた。


『……ああ』

「なぜ、それを日本に伝えず、私を日本へ送ったのですか?」

『……』

「それは、日本とアメリカの同盟関係に亀裂を入れる行為です」

『……』

「この事実も含め、後は私に任せてください。よろしいですね」


 しばらく沈黙が続いた。


『……ああ、分かった』


    ◇


 総理官邸。

 藤堂の前に、再びクロフォードが座っていた。


「総理、分かったことをお伝えしに来ました」

「……聞きましょう」


 クロフォードは、これまでに判明した内容を藤堂へ伝えた。

 藤堂は黙って話を聞いていた。


「以上が、現時点で確認できている内容です」

「……そうですか」


 クロフォードは藤堂を見る。


「我が国の企業が関係したことで、ご迷惑をおかけしました」


 藤堂は何も答えなかった。


「その上で、改めてお願いがあります」

「……」

「島の調査を、アメリカと共同で行っていただきたい」


 しばらく沈黙が続いた。

 やがて、藤堂が口を開いた。


「島の調査は、日本が主体となって行います」

「……」

「今回の事件で、島の方が1人亡くなりました」


 藤堂はクロフォードを見る。


「島は日本の目の前にあります。これから島との関係を築いていく上でも、日本が責任を持って進めるべきだと考えています」

「……分かりました」

「ただ……」


 クロフォードが藤堂を見る。


「アメリカにも、協力をお願いします」


 クロフォードは一瞬、藤堂を見つめた。


「ありがとうございます」


 クロフォードが手を差し出した。

 藤堂もその手を握った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。