第十九話 大統領特使
2027年3月11日(木) 22:18
東京都 横田基地。
夜の滑走路には誘導灯が並び、その先から航空機の灯火がゆっくりと近づいてくる。
やがてアメリカ政府の専用機が滑走路へ降り、タイヤが接地した。機体は速度を落としながら誘導車に従い、駐機位置へと進んでいく。
エンジン音が静まり、タラップが接続される。
待機していた外務省職員とアメリカ大使館関係者が、機体を見上げた。
やがて扉が開き、姿を見せた一人の男が、ゆっくりとタラップを降りてきた。
外務省の職員が一歩前へ出る。
「お待ちしておりました。」
「ありがとうございます。」
二人は短く握手を交わした。
「総理との会談は。」
「明朝、予定されています。」
「分かりました。」
男は一度だけ振り返り、背後の専用機へ目を向ける。
機体後方では米軍関係者たちがすでに作業を始めていた。貨物扉が開き、大型のコンテナが慎重に地上へ降ろされていく。
その様子をしばらく見ていた男は、何も言わず待機していた車へ向かった。
扉が閉まり、数台の車が静かに動き始める。
赤いテールランプが、夜の闇へ消えていった。
ウィリアム・ナルカミ・クロフォード。
大統領から日本との調整を託された男。
その男はまだ、日本政府が何を掴んでいるのか知らなかった。




