第十一話 動き出す世界
2027年3月10日(水) 11:02
首相官邸 官邸対策室。
「P-1、厚木基地へ帰投しました。」
「観測データは防衛省で一次解析を進めるとともに、理化学研究所をはじめとする各研究機関へ順次提供します。」
総理は静かにうなずいた。
「解析結果が判明次第、順次報告いたします。」
短い沈黙が流れる。
「ご苦労。」
総理はモニターから目を離さず、静かに言った。
「次の手を。」
その一言で、官邸対策室が再び動き始める。
◇
同刻 アメリカ合衆国 ワシントンD.C.。
ホワイトハウス。
執務室のモニターには、鳥が紋様を通過する映像が繰り返し映し出されていた。
英語でのやり取りが、静かな執務室に響く。
「解析は。」
「日本側の報告と一致しています。」
「正体は。」
「現時点では不明です。」
机に座る男は、モニターから目を離さなかった。
「日本は、まだ何もつかめていないか。」
「そのようです。」
男はゆっくりと肘掛けに腕を置いた。
「こちらも動く。」
傍らに立つ男が静かにうなずく。
「日本政府に首脳会談を申し入れろ。」
机に座る男は、視線をモニターに向けたまま言った。
「今すぐだ。」
◇
同刻 中国 北京。
中南海。
複数のモニターには、衛星画像や日本の報道映像、各地から集められた情報が映し出されていた。
「解析結果は。」
「現時点では判明していません。」
「正体は。」
「不明です。」
沈黙。
「監視を続けろ。」
「衛星観測も優先します。」
◇
同刻 韓国 ソウル。
大統領室。
大型モニターには、日本から共有された映像が映し出されていた。
「国内に同様の現象は。」
「現在まで確認されていません。」
「日本の追加報告は。」
「まだありません。」
「現時点で共有された情報は以上です。」
短い沈黙。
「監視を強化しろ。日本にも引き続き情報提供を求めろ。」
「はい。」
◇
同刻 ロシア モスクワ。
クレムリン。
「極東は。」
「異常ありません。」
「監視を。」
「継続します。」
「続けろ。」




