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第六十一話 世界召喚

世界樹が輝く。

それは光ではなかった。

世界そのものだった。

根が脈打つ。

枝が揺れる。

葉が輝く。

そして。

世界中へ広がっていく。

海へ。

山へ。

森へ。

街へ。

人々の住む場所へ。

生きとし生ける全てへ。

世界樹の光が届いていく。

ゼロの表情が初めて変わった。

黄金の瞳が細くなる。

『やめろ』

静かな声だった。

だが。

その声には確かな焦りがあった。

『それは許されない』

アーサーが笑う。

百年前。

最強と呼ばれた男の笑み。

『だから百年間隠していたんだろ』

世界樹が震える。

守護者達が咆哮する。

フェン。

ノア。

イグニス。

三柱の力が共鳴する。

そして。

シモンの胸の奥。

契約紋が燃えるように輝き始めた。

ドクン。

ドクン。

ドクン。

心臓と重なる。

世界樹と重なる。

世界そのものと重なる。

『契約者』

世界樹の声。

『思い出してください』

シモンの脳裏に記憶が蘇る。

百年前。

サービス終了の日。

最終レイド。

終焉の王。

攻略組。

守護者達。

そして。

最後の瞬間。

完成しなかった巨大術式。

召喚陣。

世界を覆うほど巨大な魔法陣。

誰も発動方法を知らなかった。

いや。

違う。

発動する前に。

サービス終了が来た。

だから未完成だった。

だが。

今は違う。

全て揃っている。

世界樹。

守護者。

終焉の王。

攻略組。

そして。

最後の召喚士。

シモンだった。

『主』

フェンが呼ぶ。

銀狼の身体が光になる。

風が舞う。

『百年間待ちました』

青い瞳が細められる。

『あなたと共に戦うこの瞬間を』

フェンの身体が粒子へ変わる。

銀色の風となって。

召喚陣へ吸い込まれていく。

『主』

今度はノア。

蒼い海が揺れる。

優しく微笑む。

『どうか』

『最後まで』

『あなたらしく』

海が光になる。

無数の水滴が空へ昇る。

召喚陣へ溶け込んでいく。

『相棒』

イグニスが豪快に笑った。

炎の巨神。

百年前から変わらない。

『最後くらい派手にやろうぜ』

紅蓮の炎が爆発する。

太陽のような光。

その全てが召喚陣へ流れ込む。

守護者達が消える。

だが。

消滅ではない。

力へ変わった。

召喚陣の一部となった。

ゼロが前へ出る。

初めてだった。

自ら動いたのは。

『やめろ』

虚無が溢れる。

世界を消し飛ばす黒い波。

終末そのもの。

だが。

その前へ立った者がいる。

終焉の王だった。

黒い剣を構える。

百年間。

世界の終わりを押し留めた存在。

『行け』

短い言葉。

だが。

十分だった。

終焉の王が斬る。

黒と黒。

終焉と虚無。

二つの災厄が激突する。

世界が揺れる。

さらに。

カインが剣を掲げる。

『攻略組』

黄金の声が響く。

『総力戦だ』

全員が武器を構える。

ヴァルク。

エリオス。

ガルド。

ミリア。

そして。

百年ぶりに目覚めた仲間達。

『おおおおおおおおおおっ!!』

咆哮が響く。

攻略組が突撃する。

百年前。

最後まで諦めなかった者達。

その全員が。

シモンのために道を開く。

アーサーが笑った。

『任せたぞ』

シモンは頷く。

蒼雷を握る。

世界樹の光が集まる。

守護者の力。

攻略組の願い。

百年間の想い。

全てが集まる。

召喚陣が完成する。

世界を覆うほど巨大な陣。

その中心で。

シモンは詠唱を始めた。

古い言葉。

失われた召喚術。

誰も知らない。

最後の術式。

世界が共鳴する。

空が震える。

海が揺れる。

大地が鳴動する。

そして。

召喚陣の中心に。

巨大な影が現れ始める。

ゼロの顔から笑みが消える。

初めて。

本当に初めて。

恐怖に近い感情が浮かぶ。

『馬鹿な』

黄金の瞳が揺れる。

『それは』

『存在してはならない』

召喚陣の向こう側。

光の奥。

ゆっくりと。

何かが目を開く。

それは守護者ではない。

終焉の王でもない。

神でもない。

世界樹でもない。

もっと根源的な存在。

世界が生まれる前から存在したもの。

世界樹が静かに告げる。

『契約者』

『これが最初で最後の召喚です』

光が爆発する。

ゼロが初めて後退る。

そして。

光の中から。

巨大な白銀の瞳が。

ゆっくりと開いた。

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