11.復讐と解放
頑張った。
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目を覚ます。目の前には下卑た笑みを浮かべる炎猿がいる。
何とも言えない悪寒が、僕を襲う。炎猿の目線はただ1点をずっと見ている。言わずともわかるだろう?
僕の腰をずっと見据えている。♂が♂の腰を見つめるなんてもう、アレしかないだろう?
はぁ、周りは火の手があり目の前には下卑た炎猿が仁王立ち。君ならこんな時、どうするだろうか?武器も無いのに立ち向かうだろうか?火に包まれる覚悟で逃げるのか?それともまた意識を手放すだろうか?
僕は.........。
タックルをカマして、突き進む!
嫌だ、あんな奴に襲われるなんて、走り抜けた先には…………え?
炎猿を切り刻む女騎士だった。
「くっ、次はゴブリンだと!?
次から次えと...!死ねぇっ!」
ファッ!?
ちょっ、危なっ。何コイツ!
「ちょこまかと逃げようとも無駄だ!
ゴブリンの様な下賎な種族は死ぬ事がこの世の為になることだっ!」
あ、これはヤヴァイ……おっふ。
「『滅殺!輝魔斬』」
ダッセェよ、技名
そして、避けきれない!
『危機予測を発動しました。回避行動の選別を実行しました。被弾まで4秒
選別中
回避行動を選別しました。実行しました。回避成功しました。
最善策を実行した為、敵から武器を奪取しました。』
なんということだ、「危機予測」が有用過ぎる......!
「な、なんだと。我が剣を避けるのみならず、剣を奪うだと?
…………ぐはっ」
あ、女騎士が炎猿にのしかかられた。
どうしようか、助けようか?でもなあ、僕のこと、下賎な種族とか非難したしなあ。
「くっ、こんな所で。姫様、最期まで御護り出来ず、申し訳ありませんでした。
姫様に神の御加護がありますように...。」
よし、助けるか。
ベッ、別に報酬なんて考えてなんかないんだからね!?
女騎士から奪い取った剣は、とても手になじむ。神々しい光を放つ、何故だろうか落ち着く、目の前の惨状が嘘のようだ。
今女騎士に襲い掛かろうとした炎猿に走り寄り、片手で持つ剣を脳天目掛けて叩き込む。頭蓋骨が押し潰れる音を発しながら、炎猿は周囲を囲む炎の中にへと吹っ飛んでいく。さあ次だ。振り向くとそこには女騎士が立ち上がっていた。
「何故貴様のような下賎な種族が聖剣を使っている!
お前達の様な煩悩渦巻く魔獣共は普通、聖剣を掴もうとすると弾かれるのだぞ!」
はい、説明ありがとうございます。いやぁ何かこの頃僕の性格が軽くなってきた気がする。なんて思ってたら、女騎士が怒りの形相を携え近付いてくる。1歩近づけば僕は1歩退く。また1歩、そしてまた1歩。
数メートルほど繰り返し、女騎士が折れた。
「貴様は他の魔獣とは違うようだ。貴様に命令してやる!有り難く思え。
私は姫様の御側へと向かう。ここら一帯の駆除は任せたぞ!ではな」
…………折れてなんていなかった。一方的に僕に命令して何処かに行ってしまった。
色々言いたいことがある、何なんだ一体!助けてやったと思ったら礼もしないで上から「命令してやる」だと!?それに駆除しろと?1人で!おかしいだろ!
周りには数10匹の炎猿が居るんだが。あの女騎士絶対に頭湧いてる!
―――――――――――――――――――
あれから何分経っただろう。僕はなんて偉い子なんでしょう。ちゃんと炎猿達を駆除しています。
―――グチャァ
はい、36体目ですよ。何なんでしょうね、この聖剣っていうの?ヤヴァイね、うんめっちゃヤヴァイよ。1撃で相手が潰れていくんだもん。もう僕、自分がどんなキャラだったのか思い出せないぐらいヤヴァイよ。
あ、次で最後だな!よし、行くか。
あれ?こいつ、見覚えが......。ほらこの下卑た笑みと垂れ下がった目。腰から溢れ出さんばかりの炎。あ、あ、アイツだ。
僕がタックルをカマしたあn……。
「キキッー!」
「ア゛ッア゛ッア゛ア゛ア゛ア゛ア゛」
イヤヤアアァァァァァ
無意識の内に僕は聖剣を両手で持ち直し、渾身の力を込めて、目の前の炎猿の脇腹を叩いていた。「ゴチャッ」と、とてもとても鈍い音が剣の腹から響き、炎猿が宇宙の彼方へと飛んで行った。空中分解しながら、でも笑みは絶やさずに............。
腹の奥底から悪寒と共に胃液が逆流して来たのは、しょうがないと思いたい。
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「グゴガアァァァァ」
処理を済ませた直後、女騎士の向かった方から、爆音が聞こえてきた。
その時。脳裏にあの大きな炎猿の姿が現れる。そう考えた時にはもう僕は、走り出していた。あの時ハクモフ達を帰還させるのが少し遅れていたら、あの時アイツが僕達に気付くのが早かったら。そう思ったら、前にも感じた、何とも言えないドス黒い感情が脳内を、身体中を埋め尽くしていく。
まだ着かない、いや......木々の合間からアイツの姿を確認した。
僕の身体が熱を帯びる、黒いナニカが僕の右腕へと収縮を始めていく。
『憤怒が発動しました。』
大きな巨体が目の前に現れる。背中を見せる炎猿、奥の方では女騎士が何かを叫んでいる。でも今の僕には聞こえない。僕の頭の中にある言葉しか聞こえない。
視界が紅く染まっていく、黒いナニカが収縮し終えた右腕は、黒く黒く、そして何倍にも肥大化している。
―――復讐を復讐を復讐を復讐を復讐を復讐を復讐を
ただそんな言葉が脳内を埋め尽くす。その瞬間、右手に握った聖剣が一際強く光を帯び、僕を弾こうとする。だが僕は一層強く握り込める。
「ウギッ?」
アイツが僕に気付き、僕の方を振り返る。
―――さあ、不意打ちにより僕に危害を加えた弱者に今復讐を!―――
僕ではない誰かの声が響き、僕は肥大化した腕を振りかぶる。狙うのはただ1点。炎猿の眉間を撃ち抜く。
何倍にも膨れ上がった力を解放するとともに聖剣の弾く力を利用し投げ込む、聖剣の周りには黒いナニカが渦巻いている。
眉間に聖剣が突き刺さり、突き刺さっても尚、勢いを止めない黒い渦が、聖剣の行く先を無理矢理に押し開こうとしている。負けじと炎猿の纏う焔が黒い渦へと攻撃し、炎猿の体を守っている。数秒の攻防に決着がつく。
僕の投げた聖剣が炎猿の眉間をぶち破り、数秒後、頭が爆散する。
燃え盛る焔と共に四散していく肉片は、地面へと届く前に消し炭へと化す。
『憤怒が発動を終了しました』
『危機予測が発動しました。被弾まで0.7秒。回避行動を選別します。
選別中
回避行動を選別しました。有効な回避行動が有りませんでした。
魔石を守る行動へと強制的に移行します。防御行動を選別します。
選別中
選別しました、これより防御行動を実行します。実行しました。
敵の攻撃は追尾性のある範囲魔法と認識されました。
防御行動は失敗しました。ですが魔石は無事です。
自己再生を実行します。』
僕が思った事は1つだけだ、「危機予測」って、いつも言うことに統一性がないな、と。そう思った。
―――――――――――――――――――
〜???〜
「特大魔法準備完了しました!」
大きな声が私に聞こえてきましたが、私の頭は今、その言葉の意味を理解しようとはしていなかったのです。否、理解出来ませんでした。
ほんの数刻前、私達は、魔獣と戦い、そして死ぬところでした。アレが現れるまでは。
アレと形容しているのは、アレが何かわからなかったからです。人型の聖剣を携えたナニカ。右腕は黒く変色し、眼は血走り、そして身体を蝕む闇の渦。
近衛の話では、アレはゴブリンだと言っていましたが、そうとは思えませんでした。
アレが現れ、大きな魔獣がアレに振り返った瞬間、魔獣の頭は爆散しました。何が起こったのか分からず、アレを見ると身体がブレ、元々いた場所は色様々な火の玉が着弾し抉れていました。朱や蒼、碧や紫。様々な火の玉が魔獣の身体から溢れ出し、アレを襲います。逃げ切れないと判断したアレは逃げず、避けようとしましたが、結果は酷いものでした。アレの右眼があった場所は消失し、顔も6割を失っていました。もっと驚くべきは、四肢をも失いながら、微かに動くアレの身体です。
そして、今に至るのです。私の頭の中はアレに対する、畏怖と興味しか存在していません。ですが、まだ魔獣は生きています。さあ、最後の仕上げをしましょうか。
「特大魔法、放て!」
私は一言、そう叫ぶのです。
「ウルグギャアアァァァァァッ」
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『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『レベルアップしました。』
『スキル、憤怒がレベルアップしました。』
『憤怒がLvMAXとなり進化しました。』
『スキル、復讐者を手に入れました。』
『称号、炎猿を滅ぼす者を手に入れました。』
狂熊以上の大量レベルアップコールにより、僕は目を覚ます。身体はまだ完全に再生していなかった。でも、腕は元通り緑の腕が、存在している。
身体を起こし確認すると、残りは右足を回復するのみとなっていた。
ふと、周りを見渡すと、朝日に照らされた荒れ果てた森の姿が目に映る。炎猿により燃やされた木々は、ほんの少し残っているものの殆どが消滅していた、しかしながら、戦っていた周辺のみしか燃えてはいないようだった。右足の回復が無事終了したようだ。僕は立ち上がる。
―――コツン
足の指先に冷たい感覚が伝わる。見てみる。そこには、鞘に収まる聖剣と1つの指輪だけが置いてあった。
聖剣同様に神々しい光を放つ指輪。何気無く、左手の薬指へと嵌める。
…………。ぬ、抜けねぇ!どうしよう、抜けないよおぉぉ。
『称号、聖女の祝福を手に入れました。』
と、悲しいお知らせが僕の頭に響く。
また厄介ごとに足を踏み入れたようだ。1日で2つもだ。バークと聖女。
バークは可愛いからいいんだが、聖女なんて話したことも無い。まぁいっか。
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〜???〜
「姫様、本当に宜しかったのですか?」
私は馬車を操作しながら。私が仕える、愛すべき人に問い掛ける。
「ええ、いいのです。
あのゴブリンがまた、私に出会う事があれば、その時に返してもらいましょう?
私の指輪と貴女の剣を、ね。」
はぁ、剣まで取られた私は、とても憐れなり......。




