61、現実3~数日経過~
この作品はフィクションです。
数日が経過した。
主任は、まだ現れない。
もしかしたら、という不安が、頭の中をよぎり始めた。
が、今、彼がこの場に現れたら、かえってややこしい事になるのではないか、と、そんなことも考えてしまったりもして。
薄情な部下だと、我ながら思う。
彼女の方はというと、少しずつ歩く感覚を取り戻してきているようで、最近は、部屋の中をゆっくり歩いて回ったりしている。
最初は壁に手をつきながらだったが、今日は普通に歩けるようになっていた。
まぁ、怪我してたわけではないし、感覚を取り戻せば、元通り歩けるようになるだろう。
私はといえば、廃棄ラボの中を、あちこち探索していた。
隠れていてもお腹は空くし喉も渇く。それらの欲求を満たすものを確保しなければならない。
あちこち調べてみると、幸いにも貯蔵庫らしき場所が見つかり、非常用の飲料水や保存食が見つかった。
このラボが廃棄されてどれくらい経っているのかわからないから少々不安ではあったが、背に腹はかえられない。消費期限はまだ先の日付だったから、大丈夫だろう。
しかし、不安は尽きない。
いつまでここに隠れていればいいのか。
追っ手?に、いつか見つかってしまうのではないか。
彼女に嘘がばれるときが来るのではないか。
「………。」
溜息一つ。
今は、待つしかない。
「結構、歩けるようになってきました。」
「うん。だいぶ感覚戻ってきたみたいね。」
部屋をくるりと一周して、彼女は笑顔を見せた。子供みたいに、一点の曇りもない笑顔。
………。
この子は、疑うということを知らないのだろうか。それとも、表情に出さないだけなのだろうか。
特に問題なく過ごせているのは、とりあえず、よいことではあるけど。
次回に続く。




