60、現実3~気付いて…る?~
この作品はフィクションです。
「あの…」
「何?」
キャリアーへと腰を下ろした彼女から、再びの問い掛け。
「えと………、お姉さんは、このあたりの人…、では、ないんですか?」
「うん、そうよ。」
「…じゃあ、なんで、こんな場所に、来たんですか?ここって…、多分、ですけど、地下室、ですよね?しかも、あちこちボロボロだし…」
………。
心臓が一瞬、どくん、とした。
「う~ん…」
考える。理由を。不自然でなく、この間すらも利用できる、そんな、私がここにいる理由を。
「…まぁ、あまり詳しいことは言えないんだけどね。逃げてるのよ、私。」
「え…?」
半分本当の事を言ってみた。
「あぁ、別に犯罪者とかじゃないから、安心して。…って言っても、安心出来ないかもしれないけど。」
「い、いえ………、」
明らかに動揺した様子の彼女。
「ちょっと、訳ありでね。ここなら見つからないだろう、って思ってここに逃げ込んできたら、あなたがいた、ってわけ。」
嘘だ。半分。
「そう、なんですか…」
少し沈黙。そして、
「私はてっきり、お姉さんが私を背負って、ここに連れてきてくれたんじゃないかなぁ、って…」
!!
「あはは、それはそれでなかなかドラマチックな感じね。残念ながら違うけど。」
内心心臓をバクバク言わせながら、笑顔で取り繕う。
…偶然、よね。まさか、事実に気付いてる、なんてことは、ない、わよね…?。
「でも、なんでそう思ったの?」
「う~ん…。…なんとなく。」
「なんとなく?」
「はい。」
「そう…。そっか。」
…とりあえず、大丈夫みたいだ。
「まぁ、あれね。逃げてる身の私としては、しばらくここに身を隠そうと思ってるんだけど、…いい?」
「あ、はい。別にここが私の居場所だというわけではありませんし、それに、どこかに行こうにも、記憶がぐちゃぐちゃで、どこに行けばいいのかわかりませんし…」
「そっか…。じゃあ、しばらくの間、よろしくね。」
本当は、こんなこと言える立場じゃないんだけどね…。
次回に続く。




