62、現実3~ノミクジラ~
この作品はフィクションです。
廃棄ラボの中は、思ったよりも広い。
さらに数日かけてラボの中を探索したが、部屋数の多さに参りそうになった。
それでも、ここでの暮らしに役立つものが残っているこも、と、考えると、探さないわけにはいかなかった。
…いつまでここにいることになるか、わからないのだから。
「………ん?」
とある部屋。多すぎるので、いくつ目の部屋なのかは数えていない。
とにかくその部屋で、突然、研究施設らしからぬものが見つかった。
「なんだこりゃ?」
手のひらサイズのそれを手に取り、眺めてみる。
「…クジラ?」
それは一見、クジラのフィギュアのように見えた。っていうか、ある部分を除けばクジラだった。
「…クジラって…、足なんてないわよねぇ…。」
そのクジラには、虫のような足が生えていた。正直、気持ち悪い。
「…もうちょっとポップな感じにしてくれれば、まだ見られたのに…」
虫の足じゃなくて車輪とかだったらもっと可愛いのになぁ、などと考えながら、その足つきクジラを元の場所に戻そうと思ったのだが、
「………。」
なぜだか気になる。この奇妙なクジラ。
少し考えたが、その答えはすぐに出てきた。
「………そっか。あの子の記憶に流した………」
妄想雑貨店ノミクジラ。
彼女の脳に流した、偽りの記憶。
そのノミクジラのマスコットキャラクターが、こんなところで見つかるとは。まぁ、ノミクジラはもっと可愛かったけど。
………。
そのノミクジラを手にしたまま、私は部屋を出た。
「…え~と、」
「見つけたのよ。なんか変なのがいるな~、って。」
案の定というべきか。
彼女も、その奇妙なクジラには戸惑っていた。まぁ、そうだろうなと思う。
彼女の偽りの記憶の中にもノミクジラという存在はあるはずだが、これとはかなり違うし。
「…なんだか、おかしなクジラですね。」
「そうねぇ。なんでこんなの作ったのかしらね。」
「………。」
「………。」
じっ、と。
私の手の上の、それ、を、見つめる彼女。
「どうかした?」
「………え?あ、いえ…。」
「なんか、じっと見つめてたけど。」
「…そう、ですね。」
「欲しい?」
「いえ、そういうわけではないのですが…」
「まぁ、気になるフォルムしてるものね。」
「………。」
「………。」
じっ、と、
見つめ続ける彼女。
秒針があったとしたら、くるりと一周していたはず。
「………あの、」
やがて、口を開いた。
「なに?」
「…その…、もし、よかったら、なんですけど……」
「うん。」
「ここの探索に、同行させてもらえませんか?」
次回に続く。
注:この作品はフィクションです。




