5、開店中〜女性来客〜
この小説はフィクションです。
「ふぅ〜〜〜〜。」
前回の話から数日後。私は、午後のひとときを、塩抹茶と共に過ごしていた。
後輩くんの厚意で、ディスプレイやら商品の配置やらを見直してもらったおかげで、随分と店の中がわかりやすくなった。厚意、でね?あくまでも、厚意。
なんだかんだ言いながらも、彼は私の活動に協力的なので助かっている。あとは、もっと妄想力を身につけてほしいところだけど…。まぁ、そこはじっくり教育していけばいいか、うん。
で、開店から数日経った我が店、妄想雑貨店ノミクジラはというと、
「今日も平和ねぇ〜…」
レジカウンターの椅子に座って塩抹茶をすすりながら、そう呟く私。店はとても平和だった。…別名、暇とも言うけど。
う〜ん。やっぱり妄想好きって内気な子が多いからねぇ。仮に自分の求めているものにぴったりな店があっても、なかなか入って来れないのよねぇ。わかる。わかるわよ。私もそうだったもの。
でもね、そこを一歩踏み込んでほしいのよ!そこを一歩踏み込めば、また、さらに深い妄想の世界が見えてくるから!
さぁ!来たれ妄想の同志よ!!
…などということを、塩抹茶をすすりながら思っていた。いや、実際に声に出して叫んでたらおかしい人みたいでしょ?だから、脳内で叫ぶだけ。ね。
妄想はのんびりと待つべし、なのよ。
「……………ん?」
何杯目かの塩抹茶を飲み干したところで、ふと入り口に、人の気配を感じた。そろそろ後輩くんが来そうな時間だから、まぁ、人の気配くらいするわよね。
と思って、何の気なしに入り口の方をチラ見してみたら。
「…あら。」
そこにいたのは、後輩くんではなく、一人の女性だった。それも、「いかにも」、な、女性。
黒髪ロング。
黒ぶちの眼鏡。
飾り気の無いブラウスとスカート。
自信無さげなおどおどした表情で店内を見渡している。
間違いないわね。
「いらっしゃいませ〜。」
レジカウンターの中から、にこやかな営業ボイスで声をかける。
「っ!!!」
わかりやすく、ビクッ!、として、彼女はこちらを向いた。目が真ん丸だ。警戒してる時の猫みたい。わかりやすいわね。
「あ、ごめんごめん。びっくりさせちゃった?」
「…………い、いえ…………」
視線を落として、ペコリと頭を下げる女性。…こっからの距離感大事ね〜。こういう子は、あんまりぐいぐい行くと距離離して逃げちゃうから。
怖がらなくていい。私たちは、妄想の同志。さぁ、ゆっくり飛び込んでいらっしゃい。




