6、開店中〜女性探索〜
この小説はフィクションです。
「そう?ならよかった。見ての通り、ここはいろんな雑貨がごちゃ混ぜって感じだから、ゆっくり見てってね〜。」
「は………はい。」
おどおどしながら、女性は棚に目を戻した。もう話しかけられたくない、といった様子だろうか。
まぁ、それもわからなくはない。むしろ私も同類だ。知らない人間に話かけられるのは、やはり緊張するし警戒するものだ。相手に敵意や悪意がなくても、壁を作るのは仕方のないこと。
だが、
私にとっては、明らかに同志の御来店。このまますれ違うだけでは勿体無いことこの上ない。なんとかして、接点を持ちたいところ。妄想女子会とか、なんかちょっと、やってみたいとか思うし。それになにより、記念すべき身内以外での初めてのお客様。仲良くなっておきたいじゃない?
そのためには、
まず、彼女が何に興味があるのかを知らなければ。幸い、時間はたっぷりあるし、ここからじっくり観察させてもらおう。
「……………。」
さらに何杯目かの塩抹茶を飲み干した頃、彼女の足がある一点で止まっていることに気がついた。
そこは、西洋の童話やおとぎ話が並んでいる棚の前。
ははぁ。そこに興味があるってことは、お姫様願望がある、ってことかしら。それとも、王道のメルヘンやファンタジー属性?
だいぶ絞り込めてきたわね…。もう少し、情報が欲しいところだけど…。
「……………。」
塩抹茶をすすりながら注意深く観察していると、彼女が一冊を手に取った。それは、
『白き姫様と騎士』
お姫様とナイト様が登場する王道の童話なんだけど、特徴的なのは、このお姫様とナイト様が、双子の姉妹、ってことなのよね。つまり、両方女性。
ふむ。お姫様願望か、もしくは、強い女性への憧れか。はたまた…同姓愛的妄想?………それは、ちょっと困るな。
で、結局、彼女はこの童話のどの部分に惹かれたのか、ってとこを知りたいわけなんだけど…
こればかりは、ここからの観察だけでは判断できないわね。実際に聞いてみないと…
ただ、ぶしつけに声をかけて逃げられても困るし…
ここは、じっくりチャンスを待つしかない。そのチャンスとは、彼女がレジにやって来て、お会計をする、その瞬間。そのタイミングならば、無理なく自然と話しかけることができる。
さぁ、来なさい!同志!
塩抹茶を、ぐい!、と飲み干して、私はその時を待つのだった。




