4、開店初日〜品揃え〜
この小説はフィクションです。
自分で言うのもなんだが、妄想雑貨店『ノミクジラ』の品揃えには、まるで統一性がない。
妄想は人それぞれ、種類も、アプローチも、持続時間も違うもの。どんなものに妄想の入り口を見出だすかも、千差万別十人十色。
だからその空間には、多種多様なものを取り揃える必要があった。
お客様の、あらゆる妄想に対応する品揃えを。
それが、妄想雑貨店『ノミクジラ』の目標であり理想。
「だからと言って、」
後輩くんが、商品を手に取りつつ話し掛けてくる。
「こういうのを堂々と目立つ場所に並べるのはどうかと思いますよ。」
後輩くんが手に持っていたのは、いわゆる、大人のおもちゃ、と、オブラートに包まれて言われているものだ。
「これで妄想をするっていうのは、いわゆる自慰行為だと思うんですが。」
「はぁ〜…、ほんっと、考えが短絡的ね。」
ストレートな考えを口にする後輩くんに苦言を呈す。
「いい?うちはあくまで妄想雑貨屋なの。店内での直接的な道具の使用はお断り。」
「そんなの言われなくてもわかってますし、そんなことを店内で堂々とやりはじめたとしたら、相当危ない人ですね。」
「だから、別に堂々と並べていたって問題はないのよ。」
「そういう問題ではないと思います。」
何故か納得してくれない後輩くん。まったく、頭が固い。
「別に犯罪に荷担するような品物や、法に引っ掛かるような品物じゃないんだからいいじゃない。」
「いや、なんか、ありませんでしたっけ。未成年に対して有害な影響を与える可能性のある商品は、通常の商品とは分けなければならないとかどうとか…。」
「そうだっけ?」
「まぁ、僕も、はっきりと知っているわけではありませんが…。」
「そんな曖昧な言葉に強制力はないわね。」
「僕の言葉で決めないで、ちゃんと調べてください。」
「はいはいわかったわかった。後で調べとくわよ。…まぁ確かに、ある程度ジャンル分けしてディスプレイするのは必要かもね〜…。」
「わかっていただけて、何よりです。」
「当然、手伝ってくれるのよね?」
「………はい?」
目をぱちくりする後輩くん。まったく白々しい。
「私にそういう提案をしたということは、率先して手伝ってくれるってことでしょ?そうでしょ?そうよね?」
「そんなことを言ったつもりはないのですが…。」
「そっちが言ったつもりなくても、こっちは妄想でそう受け止めちゃったんだから、仕方ないじゃない。」
「なんで妄想を入れ込むんですか。」
「妄想は全ての事象を包括する。まさにサイズ無限大。サイズ不明な究極の存在だからよ。」
「…意味がわかりません。」
「いいからいいから!とっとと手伝いなさい!」




