30、開店中〜女性困惑〜
この作品はフィクションです。
「その………、今日は、お話を、聞いてもらおう、と思って、来たので、あの………、………持ち合わせが…」
………。
「あ、なんだ。そんなこと?」
思わず素で答えていた。使命感に燃えている最中だったから、もう少し熱く答えた方がよかったのかもしれないけど。でも実際、そう言いたくなってしまうような発言だったし。
「別に持ち合わせ少なくてもいいわよ。これに関しては、お金もらうつもりないし。」
「…え………、?」
きょとん、と、こちらを見つめる彼女。そして、自分の手に乗っかっている、書籍やフィギュアやCDを見て、
「………だ、だ、だ、ダメですよっ!!??」
突然、あわあわしだした。
「なんで?店主がいいって言ってんだから、もらっときなさいな。」
「い、いえ!そ、そんな、知り合ったばかりの人に、急に、こんな、あの、その、」
…まぁ、気持ちはわかる。私だって、最近知り合ったばかりの相手に、あれやこれやと物を貰ってしまったらびっくりするし、何か裏があるんじゃないかと勘繰ってしまう。
…じゃあ、なんでやるんだ、って話だけどさ。
それは仕方ないじゃない!使命感が為せる行為というやつなんだから!
「ん〜、確かに、知り合ったばかりの相手から、あれやこれやと物を貰うなんて、普通は不自然なことよね。それは、わかる。」
「は、はい…。」
「じゃあ、こうしましょ。」
我ながら咄嗟に名案を思い付いた気がした私は、レジカウンターに引き返し、そこからシールとマジックペンを持ってきた。本来は、袋の口をとめたりするのに使うシールなのだが、そこに、
『レンタル品』
と、書き込み、
「はい、はいはい、はい〜、っとね。」
彼女の持っている商品に、ペタペタと貼っていった。
「あ、あの………」
「これなら問題ないでしょ?レンタル品だから。」
「で、でも、」
突然の私の行動に、明らかに動揺している様子。
「レンタル品だから、いずれ返してもらうわけだし。だから、買ってもらう必要はなくなったわけよ。ね?」
「いや、あの、でも、」
「まだ気が引ける?」
「その…、お気持ちは、嬉しいの、ですが………その………親に、どう、説明すれば、いいか…」
「レンタルしてきた、って。」
「そ、それじゃあ、納得してくれませんよ…。」
完全に困った顔になってしまった彼女。どうやら、かなり厳格な親のようだ。
う〜ん、困らせるのは本意ではないしなぁ…




