29、開店中〜女性と使命感〜
この作品はフィクションです。
「じゃあ〜そのためにも、文章力と妄想力鍛えてかないとね!」
そう言って、私はレジカウンターを出た。
「え?………あ、あの、何を……?」
「う〜ん、確かこの辺に並べてたと思うんだけどなぁ………。」
彼女は何か言いたそうな感じだったが、とりあえず私のペースで進めさせてもらう。太鼓判を押した以上、その助けにならねばならぬ、と、勝手な使命感に燃えている私なのだ。
書籍がたくさん並んでいる棚を指差し探しながら、目的のものを探す。う〜ん、後輩くんに、もちょっと整理してもらっとけばよかったなぁ…。
「あ、あの〜…」
「大丈夫大丈夫〜。ちょっと待っててね〜。」
話を聞くのは、品物が揃ってからでも遅くはない。今は書籍探しに集中すべし。
「……………お、あったあったこれこれ。」
探すことしばし。見つけたのは西洋の風景を収めた写真集。そして、画集。
「ファンタジー世界を妄想するには、やっぱり、こういう参考資料は大切よね。ありすぎて困るってことはないし。」
「え、えと、あの。」
「それから〜………」
さくさく移動する私に、困惑しながらついてくる彼女。いや、困惑してるってわかってんなら待ってやれよ、って、思うかもしれないが、そう簡単には止まれないんだ。
今の私は、使命感に!燃えているから!!
「うん、こういうのもいいよね。立体的だし。」
フィギュアの棚から、中世っぽいキャラクターのものを、いくつかチョイスする。立体的に目視出来るものは、かなりの助けになるはずだ。
「これと、これと、これ………これも、いいかな。あと…」
「あ、あの、」
「あ、ごめん、ちょっと持ってて。」
「え?あ、は、はい。…え、え?」
戸惑う彼女に本とフィギュアを手渡すと、足早に次の品物を探す。
「視覚情報は多分それで足りるから、次は聴覚ね。」
CDの棚から、クラシックやRPGのゲームミュージックのCDを取り出し、
「はい。」
「は、はい…。」
何かを言いたげにしながら後ろをついてきてくれている彼女に、次々手渡していく。
「雰囲気って大事だからね。これ聴きながら画集見れば、目からも耳からも情報入ってきてばっちりよ。」
「あ、あの、あの、」
「あとは味覚と嗅覚に訴えかけるものを」
「あの!!!!」
「ん?」
思い切った大声に、思わず振り返る。さっきからずっと何かを言いたそうにはしてたけど…、…さすがに無視しすぎたかな。
「あ、ごめんごめん。ちょっと勝手に先走りすぎちゃった?…で、何?」
「いえ、あの………、お気持ちは、すごく、嬉しいの、ですが………」
一瞬、言いよどむ。
そして、
彼女はこのあと、
あ、なんだ。そんなこと?
と言いたくなることを、私に告げたのだった。




