31、開店中〜女性帰宅〜
この作品はフィクションです。
「わかった。じゃあこれは、返してもらうわね。」
「は、はい。お願いします…。」
ホッとした様子の彼女。突然の申し出に、不安で仕方なかったようだ。
う〜ん、使命感に駆られ過ぎて、なんだか悪いことをしてしまったようだ。
だがしかし。
「でも、いつか買いに来てほしいのよ。あなたのために選んだものだし。」
「え?………!、いや、あの、でも、それは、別に、頼んだ、わけ、じゃ」
「あはは、わかってるわよ。別に明日明後日とかの話をしてるわけじゃないわ。ずっとずっと先でいいから、いつか買いに来て、ってこと。」
「………は、はぁ。…あの、でも…」
「作家になるんでしょ?」
「え?………は、はい………。」
「じゃあ、あなたが有名な作家先生になったら買いに来てよ。そしたら、うちの店も有名になるし。そしたらそしたら、妄想を知らない人種の人達にも妄想の扉を開いてあげることが出来て、妄想の同志を増やすことができるし、お店の利益にもなるし。一石二鳥!」
「……………。」
「…な〜んてね。ふふ。」
困惑顔の彼女に、思わず笑いが零れる。なんだか面白い子だなぁ。反応がいちいち素直で。
「単純に縁を切りたくないのよ。せっかくの妄想の同志なんだから。これからも仲良くしたいと思って。どうかな?」
「………は、はい。…それは、私も、思います。」
「よーし。じゃあ、今後ともよろしく、ってことで、はい。」
そう言って、私は彼女に手渡す。
「………え?」
「あら。嫌いだった?塩昆布。」
「い、いえ…、別に、嫌いでは…。」
「そっか。じゃあよかった。」
「え…、でも、なんで…?」
「仲間だから。」
「は………はぁ。」
わかるような、わからないような。
そんな曖昧な返事をして頭を下げつつ、彼女は塩昆布を受け取った。
「塩は大事よ?」
「は、はい。」
そうして彼女は、塩昆布を片手に帰路についた。
いやぁ…、思った以上にしっかりしたビジョンを持った子だったな。感心感心。これからどれだけ彼女の妄想力が成長していくか。楽しみ楽しみ。
…っと。そうだ。早いとこ連絡しなきゃだわ。
「……………あ、もしもし?後輩くん?わたしわたし。今どの辺かな。……………あ〜、ちょうどよかった。ついでにさ、あれ買ってきて、あれ。シール剥がしできる液みたいなやつ。…え?………いいじゃない、別に。……………店についてからまた出るよりいいでしょ?じゃ、よろしくね〜。」
…これでよし。
後輩くんを待つ間、また妄想トレーニング、略して妄トレでもしよっかな。




