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二話 きっかけ

 家に帰っても、アイスを食べてベッドで横になりゲームをするだけ。ゲームは楽しい。それは間違いない。だが、同じゲームばっかりやりすぎて飽きてしまった。


「勉強するかぁ……」


そう言いながら立ち上がった。アイスの棒をゴミ箱に向かって投げた。が、1mほどの距離しかないゴミ箱にすら入らなかった。投げるのは下手だし、嫌いだ。


 投げる、で思い出した。そういえば去年、体育の単元で野球をやっていた。単元最後の日、ちょうど参観日と被り、5人ほどの親が校庭の隅で試合の様子を観ていた。ふと、攻守交代の時にその親たちを見た。どんな人がいるのだろう、と。


 そこに父がいた。


 私は驚いた。小学生の低学年の時ですら、参観日など一度も来たことがなかった父が、どうしてここに。


 少し思考を巡らせ、昔を思い出した。父は野球観戦が好きだった。というよりスポーツが好きだったのだろう。


 保育園のとき、よく勝手に他県の球場に連れて行かれ、ルールも知らないまま私は観戦していた。つまらなくはないが、面白くもなかった。


 そして翌日に毎回母と大喧嘩していた。勝手に母の金を使い球場に行った父は、今考えると、怒られて当然だった。それを何回か繰り返したとき、二人の仲は壊れてしまい、会話をすることがほとんどなくなってしまった。家族は愛しあうものだという私の価値観はきっとここで狂ったのだろう。


「絶対勝つぞ!!」


 同じチームの野球部の張り切った声でハッとした。私は二塁の守備位置に立っている。


 相手の野球部が打った。見事にバットに命中したが、軌道はやや下を向いていた。バウンドし、私の真横へ転がってきた。

 私はすぐにボールを拾い、一塁に投げた。だが、ボールはかすかに守備の人の横にズレ、奥の方まで飛んでいってしまった。結果、バッターがホームベースへとたどり着き、ホームランになってしまった。


 私は申し訳なかった。そもそも投げるのはいつも下手くそだった。チームメイトからの視線は冷たく、そしてそれ以上に父の目は冷たかった。試合は5対2で負けた。



 床に落ちたアイスの棒を拾い上げ、ゴミ箱に入れる。私はどうしてここまでだめなのだろう。

 頭が良いわけでもなく、運動ができるわけでもない。髪形はややモッサリしていて、毛深い。芸術の才能もない。だめだ。短所しか出てこない。


 テレビをつけた。勉強など後ですればいい。

 するとテレビには、昼ドラの食べ歩きシーンが放送されていた。演者が牛串を食べながら言った。


「散歩しながら飯を食べるのっていいよなぁ。自由って感じ」


 自由。私が今求めているもの。自由さえ手に入れば、家から逃れる。新しい友達を作れる。ゲームができる。生きる意味が増えていく。 


 しばらく見続けていると、食べ歩きのシーンは20分ほどで終わってしまった。仕方なくテレビを消し、肩掛けカバンを取り出してキャラクター物の財布を入れた。


 まるで逃げるように、けれどもはしゃぐように笑いながら家から飛び出した。

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― 新着の感想 ―
主人公と境遇が似ているので、続きが気になります。 執筆頑張って下さい!
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