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その悩み、筋トレで解決できます!〜俺のジムに変人しか来ないんだが〜  作者: プロテイン長田


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第14話「戦え!マッスル夏祭り」

## 第14話「戦え!マッスル夏祭り」


 夏が近づいている。


 ここは“タカハシジム”。都会でも田舎でもない絶妙な立地の商店街にあるこのジムは、ひとまずの落ち着きを見せていた。夏に向けての体づくり需要で会員数も微増し、高橋はなんとか生活できるほどの収入を得ることに成功していた。


 そんな初夏のある日、会員であり、タカハシジムのある建物の大家、笹原ウメがジムを訪れた。


「あ、あれ? ウメさん今日パーソナルないですよね」


「なんじゃ、筋トレせんとここには来ちゃいけんのか」


 ウメさんは軽快な足取りでジムの受付用チェアに腰掛けた。


 ちなみに、高橋とのパーソナルトレーニングの甲斐もあってか、なんと今ウメさんは杖を使わずに生活しているらしい。曰く“元々杖はいらなかったが、陽子が持たせていた”らしい。


 しかし、地味に商店街では「あのウメさんが杖いらずになった」と話題になりタカハシジムの知名度は一層上がったとかなんとか。


「いえいえ! そんなことはないですよ! 会員さんなら自由に使えますからね。ここは」


「そうじゃろう? んで……」


 そう言いながらウメさんは小さなカバンからぐしゃぐしゃになった紙の束を取り出した。


「な、なんですかこれ」


「おーこれはのぉ……今年の“商店街夏祭り”の企画書じゃ」


「商店街夏祭り?」

「オーウ! コトシモモウソンナキセツデスネー!」


 ウメのその言葉で、トムさんが寄ってきた。


「この店は今年が初参加じゃからの」


「あ、えーっと、そもそもそのお祭りについてよく知らないんですが――」


「あぁ、その辺は孫が説明するじゃろ、ホレ」


 ウメはバシバシと紙の束を叩いて立ち上がった。


「今日は軽くスクワットでもするかの」

「テツダイマスヨー!」


 そう言って、ウメとトムさんはワークアウトエリアへと去っていった。


「…………祭り。か」


 高橋はその紙の束を拾い上げる。


◇◇◇◇◇◇


 【商店街夏祭り】


 日程 八月第一土曜日、日曜日


 商店街に店を出しているテナントは全員参加じゃ


 参加料は家賃から引いてるのでいらん


 最優秀テナント賞には、鎌倉旅行をプレゼント!!!


 細かいルールは孫に聞いてくれい


 今年は東口の連中に負けんよう気張るのじゃぞ


◇◇◇◇◇◇


「な、なんだこれ……説明になってなくないか?」


 一枚目の紙に書かれた内容を見て高橋は絶句した。


 二枚目以降には、昨年度の記録写真らしきものがびっしり添付されている。


「お、おぉ……すごいな」


 見事な櫓が建てられ、提灯や電飾で彩られた商店街。


 出店が立ち並び、ザ・商店街の夏祭りといった様子の写真。


「あ、トムさんだ」


 もちろん、商店街にステーキハウス“トムズグリル”を経営するトムさんの姿もあった。


「うわ美味そうだな! 屋台で食べる肉ってなんであんなに美味いんだろうな」


 そんなことを考えていたら――


「そんな呑気なこと言ってられませんよ」


「うわぁ!? びっくりした!」


 高橋の背後にいきなり現れたのは――


「よ、陽子さん!?」


 憔悴しゾンビのようになってしまった、ウメの孫、笹原陽子だった。


◇◇◇◇◇◇


 タカハシジム、その受付デスクを挟んで高橋と陽子が座る。


「あ、あの……? 大丈夫ですか?」

「大丈夫に見えますか」


「いえ……全然」

「ですよね」


 陽子は笑ったが、目が笑っていない。


「もしかして、この件ですか?」


 高橋は先ほどウメから渡された“商店街夏祭り”の資料を見せる。


「はぁーーーーー」


 陽子が特大のため息をついた。


(やっぱりこれか――)


「もしかして、商店街中回ってるんですか?」

「はい」


「毎年?」

「ええ」


「非効率すぎません?」

「そうですね」


 高橋はロボットのようになってしまった陽子を憐れんだ。


「みんな――“本気すぎる”んです」

「…………え?」


 陽子はそんな様子の高橋に本音を話す。


「毎年毎年!! いくら東口商店街を敵視してるからって! 今年こそ負けないぞって無茶な出し物ばかり企画して――!!」

「ちょっとちょっと!! 何が何やら――」

「高橋さんは! まともだということを期待してます!」


 陽子はそう言ってジムを立ち去った。


「…………何だったんだ? それに、“東口商店街”って――」


 ここ、タカハシジムのある商店街は駅の西側。地元民から“西口商店街”と呼ばれている。


 病院や美容院が立ち並び、飲食店もあるが、個人経営の店が多い。


 対して駅の反対側、東口商店街は超有名ファストフードチェーンをはじめとした、多くの資本が投じられた店が立ち並ぶ。そういう意味では高橋も東口への出店を検討したが、家賃が高く断念したという経緯がある。


「高橋さーん」


 色々と考えていると、ワークアウトスペースから重子の呼ぶ声がした。


 軽井沢重子。最近いっそう体を絞り、マッチョのマの字が見えてきた年頃の女性。


「ベンチプレス補助お願いしまーす」

「はーい!」


 高橋はジムに常駐しており、手が空いていればこのようにパーソナル対応時間以外でも補助についたり、ワークアウトのアドバイスをしたりする。


「今日は軽めで」

「はい! 最近頑張ってますからね!」

「えへへー」


 そんな軽快なやり取りをしながらバーベルにプレートをセットする。


「……お祭りの話かぁ、今年ももうそんな季節ですね」

「あ、そうか。軽井沢さんもここに住んでるんですよね」

「よかったら色々説明しますよ」


 そんなこんなで、タカハシジムのお祭り出店準備が始まった。

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