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その悩み、筋トレで解決できます!〜俺のジムに変人しか来ないんだが〜  作者: プロテイン長田


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第15話「筋肉でオシャレな映えを」

## 第15話「筋肉でオシャレな映えを」


「とりあえず何をするかから考えないとな」


 ここはタカハシジム。都会でも田舎でもない絶妙な立地の商店街にあるこのジムのオーナーは、来たるべき夏祭りの出し物について頭を悩ませていた。


「軽井沢さんの話では、祭り自体は西口も東口も共同で開催してて、お客さんの投票で最優秀出店者が決まるんだよな」

「ウチハ、マイトシオニク、ウッテルヨ」


 トムさんはダンベルショルダープレスをしながらそう言った。


「トムさんのお店はどのくらい投票されるんですか?」

「オーウ、ウチハコウキュウナオニクツカウ。スコシタカイ。ヒョウカハイマイチネ」

「あーなるほど……」


 色々と集めた情報では、ここ数年は東口商店街の店が最優秀出店者になっているらしい。有名チェーン店はこういった出店を出さない関係で資本の差はそこまでないはずだが、やはり高い家賃を払える東口の個人商店はこういった催しにも強いらしい。


「これが去年優勝のカフェ……ってこれ屋台って言っていいのか!?」


 ウメさんが持ってきた資料の後ろの方に記載された“敵リスト”に並べられた写真。


 オシャレなキッチンカーに並ぶ人々。コーヒーに始まりハーブの効いたフランクフルト、クラフトビール。フライドポテトすらノンオイルで作るという徹底ぶり。


「おぉ、PFCバランスを考慮してるってわけか。そりゃ人気になるはずだ」

「チガウトオモウヨ」


「“映え”ってやつですね!」


 そんな話をしていたらひょっこりとジムに顔を出した軽井沢重子。


「あ、軽井沢さん。先日は色々教えてもらってありがとうございました」

「いえいえ! 高橋さんがどんなお店出すのか楽しみにしてます!」


「それで――“映え”って言うのは?」

「SNSで投稿して絵になるものってことですよ。聞いたことありませんか?」

「あー俺SNSとかほとんどやらないので……店の開業する時くらいしか」

「えー絶対やった方がいいですよぉ? お店の宣伝にもなるし」


 重子は高橋にスマホ画面を見せた。


「これ、私のアカウントです」


 そこには、煌びやかな夜景の写真や、オシャレなカフェのドーナツなど、おしゃれな写真がならんでいた。


「す、すごいですね」

「まだ私の姿は映せないですけどね……でもほら、こんなにインプレッションが」

「い、いんぷれ……何ですかそれ」

「そのくらいその投稿が見られてるかって感じですかね」

「この一万くらいの数字は――」

「そのくらい、私の投稿を見てるってことですね」

「すっご!!」

「わぁ声でかいですね」


 軽井沢重子はインフルエンサーだ。


 その素晴らしいプロポーションと童顔な顔立ちのギャップでファンを獲得し、一時期は雑誌のモデルを務めるなど人気に火がつきかけたことすらある。


 しかし、高橋も知る通り体型維持に失敗し、断続的にしかメディアに露出しない“幻”の存在となっている。


「今はこういうのがトレンドなんですよ」


 高橋は唸った。


 先ほどの前年度覇者も、似たような屋台キッチンカーを出していた。もし、そのトレンドが変わっていないなら、高橋もその“映え”を意識する必要がある。


「映え……筋肉とは少し離れた概念ですかね」

「いや、別に筋肉と結びつける必要はないと思いますケド」


 高橋は考えた。自分を受け入れてくれたこの商店街に貢献したい。


 高橋は会員の悩みに寄り添うことを目的にしているが、この商店街もまた、悩みを抱えているなら救いたいと考えるのが高橋という男だ。


「とりあえず、このパンみたいにこんがり肌を焼くために――」

「はい?」

「タンニングマシン(日焼けマシンのこと)を買うところから――」

「ストップストップ!! えぇ? 何ですか今の?」


 重子は戦慄した。高橋を放っておいたら商店街の屋台の並びにこんがり焼き上がった高橋が並びかねない。


「あぁ……何というか、私、協力しますよ」

「え!? いいんですか?」

「はい。心配なので」

「ありがとうございます!!」


 高橋にとってはこれ以上ない頼りになるアドバイザーの就任だった。


(これ、新手の脅しですよね)


 高橋は重子の手をとる。


(でも……何というか、この人の真っ直ぐさというか、愚直なところというか――)


「ぜひ! 一緒に最優秀出店者になりましょう!」


(普通に一番を目指そうとするところ、嫌いじゃないんですよね)


◇◇◇◇◇◇


 その頃、タカハシジムの外では――


(何あれ)


 ジムの前にふらっと現れたのは、堀井愛華。


 何か嫌な予感がして、リモートワークを途中で切り上げて商店街に来ていた。


 何の気なしにジムの前を訪れると、そこには――


(あ、あの女っ! ついに秀に手を出したの!?)


 重子の手を取る高橋。


 その様子は、まるで恋人同士のような――


「あ、あぁ……!」


 愛華の体から力が抜けた。


 先日、閉店後に高橋と秘密のパーソナルトレーニング(決してやましい意味ではない)をする約束を取り付けた愛華だったが、依然として筋トレ以上の関係に進めないことにドギマギしていた。


「先を……越されてしまったっ!!」


 天を仰ぐ愛華。


 その様子を、往来する人々が不思議そうに眺めるのだった。



 

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