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その悩み、筋トレで解決できます!〜俺のジムに変人しか来ないんだが〜  作者: プロテイン長田


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第11話「筋トレは恥ずかしくなんてない」

## 第11話「筋トレは恥ずかしくなんてない」


「うわあぁぁぁん」


 ここは“タカハシジム”。


 都会でも田舎でもない絶妙な立地にある商店街。そこに新しくできたジムで、号泣している成人女性の姿があった。


「おい! 堀井、そろそろ何があったかマジで教えてくれないか!?」


「ビエエエエエン!」


「あ、泣き声が変わりましたね」


「冷静!」


 さて、あの後何があったのか。


 ジムのガラス窓にへばりついていたのが堀井愛華だと分かった高橋は、ジムの扉を開けた。


 すると愛華はものすごい勢いでジム内に突撃し、重子に突進していった。


 残念ながら鍛えている重子の前に全く歯が立たず、捻られた愛華。


 その後、堰を切ったように号泣し始めて今に至る――


「ぐすっ……すん……」


 少し落ち着いてきた愛華。


 すっくと立ち上がると、スタスタと受付の方に歩いていく。


「マジでなんなんだ――」


 受付を物色すると、愛華は入会申し込み用紙を発見し――


「あ、逃げた!」


 重子が叫ぶ。


 愛華は申し込み用紙を持ってものすごいスピードで去っていった。


 ――これが“昼に出る幽霊事件”の結末。


 目を丸くしている重子に高橋は説明する。


「あ、今の人、高橋さんの幼馴染なんですね」


「ああ……東京に住んでるはずなんだけど、ウチの申し込み用紙持ってって何を――」


 そこまで話して、高橋に電撃走る――


「ま、まさか!!」


「誰にも気づかれずに筋トレしたい!とか?」


「違うと思いますけど」


「いや、実はよくある話なんだ。ジムに通いたいけど、知り合いに見られるのは恥ずかしい……みたいな」


「それで幼馴染がいるここに来るんですか?」


「…………確かにそれは変か」


「それに、さすがに東京からじゃここ、通うの無理だと思います」


「確かに確かに」


「なんか他の理由がある気がしますケド」


 その後、二人は疑問が残ったままワークアウトに勤しんだ。


◇◇◇◇◇◇


 その日の夜。


「よし、鶏胸肉と……ブロッコリー。卵も減ってたな」


 高橋は近所のスーパーで買い物中。


(……視線を感じる)


 高橋は妙な気配を感じていた。それはちょうど、今日解決した“昼に出る幽霊事件”を思い出すような――


 ――シュバッ


 高橋はものすごい勢いで振り向く。


 誰もいない。いや、普通に買い物客が「なんだこのマッチョ」みたいな目で見ている。大変恥ずかしい。


 気を取り直して買い物を続ける高橋。


 その間も、妙な視線を感じ続けた……。


◇◇◇◇◇◇


 違和感は、帰り道まで続いた。


 高橋が住むマンションまで、あと数メートル。


 人通りも少なくなった。


「堀井……なのか!?」


 高橋は叫んだ。確信はないが、一か八かで叫んだ。


 住宅街に静寂が広がる。


「…………アンタ、馬っ鹿じゃないの!?」


 しばらく待つと、電柱の裏から顔を真っ赤にした堀井愛華が現れた。


◇◇◇◇◇◇


「あ、頭おかしくなったの? こんな住宅街で人の名前叫ぶなんて――」


「い、いやいや! それはこっちのセリフだろ? なんでつけてきてたんだ?」


「はぁ!? つけてるって何よ? 自意識過剰なんじゃない?」


 愛華は腕を組みながらそっぽを向いた。


「あ、おいなんか落ちたぞ」


「あっ」


 高橋は愛華の懐から落ちてきた紙を拾う。


「これ、ウチの申し込み用紙じゃん。しかも――」


 ご丁寧に堀井の情報が書かれた申し込み用紙。


 高橋は確信した。


「なるほど……そういうことか」


「なっ……! 勘違いしないでよね! 別にアンタと一緒にいたいとか、そんなんじゃない――」

「ついに堀井も筋トレに目覚めたんだな!!!」


 静寂。


「……何言って――」

「でも大丈夫だ! 筋トレは恥ずかしくなんてない!」


 静寂。再び。


「いやホントに」

「わざわざ、住んでるところから離れた場所でジムに通う必要なんてないぞ!」


「……は?」

「俺がしっかり筋トレのなんたるかを教えてやるから、慣れたらすぐ地元でできるように」


「…………舐めんじゃないわよ!」


 そう言うと、愛華は鍵を高橋に向けて突き出した。


「……ん?何だ」


「これ、見て」


 高橋は鍵を観察した。どこにでもある、普通の鍵だ。


 だが、見覚えがある。これは――


「ま、まさか!」


「そのまさかよ。お、驚いたかしら?」


 愛華渾身のサプライズ。


 これは彼女にとって、ほぼ告白に近い行動だった。黙って出ていった幼馴染を追って同じマンションに引っ越してきた幼馴染。愛華からしても、これはかなりキュンとくる行動のはず。


「あ、ああ! 驚いた!」


「フ、フン! 流石のアンタもこれで分かったかしら?」



「ジムの近くの部屋を借りるなんて、相当本気だな!」



「…………」


 高橋は本気でそう思っている。


 というか、彼は思ったことしか口にしない。


 愛華が、自分に自信をつけるためにタカハシジムを訪れ、その近くの部屋を借りたと本気で思っているのだ。


「ここのマンション、ウチのジムから近くて、家賃安くていいよな〜」


 愛華は真っ白になってしまった。


「あ、あれ?お〜い」


 愛華渾身のアピールは、高橋の筋肉愛の前に蒸発してしまった。


「一緒に帰るか?今日はこっちで泊まるんだろ?」


「アッハイ」


 愛華は考えるのをやめた。


 ひとまず、こっちに越してきて、高橋に会えた。


 色々紆余曲折はあったが、いや、むしろ……あの高橋とキャッキャウフフしていた女性は何者なのか。


 今日も、ジムを貸切にして二人だけの筋トレをしていた女性は何者なのか。そっちの方が気になる。


「じゃ、俺この部屋だから。申し込み用紙、貰っとくぞ」


「ウン」


 愛華は決意した。


 これからは会員として潜入し、あの女性たちが何者か調べようと。


 愛華の戦いは、始まったばかりなのだ!


「……隣の部屋か?まさか」


「………………当たり前でしょ」


「何が!?」


 ちなみに、もはや説明不要かと思うが、堀井愛華さんはちょっとストーカー気質なところがあるぞ!

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