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“怪物”伯爵は愛妻家♡ 〜嘘がつけない人造花嫁は、拗らせ夫とクセ強使い魔に甘やかされる〜  作者: 藤崎まみ
第3章 思い出話と惹かれる心

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最愛の妻と心を通わすことができた喜びで、最高の朝を迎えたヴィクター。隣で眠る彼女にそっと手を伸ばす。



「ん……」

「起こしてしまったか、おはようベル」

「もう、朝…?」

「あぁ。少し寝坊してしまったな。たまには良いだろう」



流れるような動作で腕に閉じ込められて、ぎゅっと抱きしめられ、昨夜を思い出すベルフェリア。


おでこにちゅっと音を立てて唇が降ってきて、慌てだす。



「ちょ、ヴィー様!……朝から熱烈すぎます」

「どこがだ。なんならものすごく我慢している」

「に、“日本人”はもっとアッサリで淡白なんです…!」



まるで洋画ドラマの熱烈なベッドシーンの再現はごめんだと、ベルフェリアはドキドキと胸を高鳴らす。



「そういえば、以前にも言っていたな。この世界は“洋風”だと。服装や食事などはなるべく寄せてあげたいが……。“米”はまだ流通経路が見つからないな」

「いえいえ。充分、アガサさんの作る食事は、美味しいので満足してます」



少し距離を取ってくれたヴィクターに、ほっとする。


ヴィクターが和食の食材を探してくれていることを知っていたベルフェリアは表情を緩める。


ネグレクトを受けていたため、母親の味、なんてものをそもそも知らないベルフェリア。


……お米は食べたいけど、家で和食なんてろくに食べていなかったなぁ。


食事は洋食、主食が小麦のこの世界で 、出汁や醤油、味噌などの調味料はそこまで欲することはなかったが、たまには白米が食べたくなっていた。



「いつかたまには食べたいな、くらいですし。

そもそも戦争中なんですよね?それなら他の国の主食の流通があまりないのは仕方ないですよ」

「商人は強かだからな、やろうと思えばできるはずだ」



こうしていつもベルフェリアの生活を整えようと努力してくれるヴィクターに、胸の奥がじんと温かくなるのを感じていた。


“理想の花嫁”のためだと思っていたが、今なら分かる。


ーー話をちゃんと聞いて、希望を叶えようとしてくれていると。



「……ヴィー様、いつも甘えさせてくれて、ありがとうございます」

「甘えていたのか?……これで?

ベル、君はもっと我儘を言うべきだ。二度と私から離れさせる気はないんだから」

「……ほら、ダメ人間製造発言はよくないですよ」

「初めて聞く単語だ」



ヴィクターの変わらない、やり過ぎで要望を叶えようとするのに、ヒヤッとしながらも甘やかされて照れくささを感じるベルフェリア。


同時に、今まで真摯に向けられていた想いを信じようとしなかったことに罪悪感を感じていた。



「……今まで、本当にごめんなさい。この体に魂があれば、ヴィー様は誰でもいいのかと思ってたんです」

「は……?」

「だから、わたしを選んで貰えたって聞いて….その、嬉しかった」

「……そういえば当たり前すぎて伝えていなかった、か?」



とっくに説明したつもりでいたヴィクターは、ベルフェリアの言葉を聞いて、今までの自分の言動を省みる。


……ベルフェリアの環境を整えることばかりに気を取られて、大事なことを伝え忘れていた。


自分の不甲斐なさと、対話経験が無さすぎたことを恨む。そしてこんなミスをもう二度としないと肝に銘じていた。


ベルフェリアがそろそろ起きようとしたところを、グイッと腕を引っ張って引き戻す。



「わっ…!ヴィー様…!」

「衣食住は君に合わせてもいい。……だが、愛情表現は私に合わせてもらおう」

「ひぇ……」



真っ赤な瞳に射抜かれ、ゆっくり唇に食いつかれる。そっと押し倒されて、ヴィクターの手が体を撫であげる。


そもそも日本人ではないヴィクターに、淡白さを強要出来ないベルフェリア。


そもそも行為が嫌じゃないため、嘘が付けないベルフェリアは、そっとヴィクターの首に腕を恐る恐る回したのだった。



***



二人よりもかなり寝坊して食卓に現れたヘンリーは、二日酔いで頭を押さえながらヨロヨロしていた。


慣れたようにアガサがコンソメスープを提供する。



「やー、これが胃に沁みるんだよなぁ。旨え……!」

「まったく、そこまでして飲酒する意味が全くわからない」

「本当に持ってきたお酒殆ど飲んじゃったんですか?アルコール中毒になっちゃいますよ」

「いやーそこは、勤務中は一切飲まないから反動なだけつーか。仕事終わりの一杯は最高だからな!」



体調不良をなんとか取り繕いながら、朝から陽気なヘンリー。


友人夫婦から、酒好きへの向ける冷たい視線を感じて似た者夫婦だな、なんて感想を抱いていた。


ベルフェリアは、酒への愛を語るヘンリーを笑う。



「ふふっ…。仕事に疲れた()()()()()()みたいなこと言うんですね」

「勤め人、のようなものだったな」

「サラ…?まあ、よく分かんないけど、国に雇われてるのは確かだよ。今は南東の国とドンパチやってる」



ヘンリーは軍を率いる隊長を任されているが、食べていくためには仕方ないと仕事として割り切って戦争に参加していた。


先に朝食を食べ終えていたヴィクターは、食後のお茶を飲み一息ついてから口を開く。



「ベル。君の“父親”と定義できそうなヘンリーはこういう男だ。次は生みの親である、プレトリウス卿に手紙を出すつもりだ」

「……“生みの親”ですか?ヴィー様じゃなくて……?」

「私は体の核のようなものを、彼から提供されて依代である身体を作ったんだ」

「うーん。さっぱり分からないです……」



戦争の話をしていたのに唐突にベルフェリアの話になって驚きつつも、生みの親のことが気になりだす。


のほほんと受け答えするベルフェリアに、ギョッとしたのはヘンリーだった。


陽気な笑みばかり浮かべていた彼が血相を変え、真面目な顔をするのは初めてだった。



「お、おい。今プレトリウス卿って言ったか…!?

まさかベルを会わせる気か?」

「あぁ、()()を貰ってそのままだったからな。顔くらい見せてもいいかと思っている」



国の使者が来た時、干渉を受けた魔力の持ち主かプレトリウス卿の縁の者だった。


『ヴィクター様、“プレトリウス卿”の縁のある魔法使いの魔力ですぅ』

『……そうか。彼・の挨拶か』


ベルフェリアはすっかり忘れてしまっていたが、ヴィクターはいつかは“花嫁”を造ることができたことを報告する義務があるとは思っていた。



「へ、ヘンリーさん。その方って偉い人だったり、怖い人だったりしますか……?」



ベルフェリアはただならぬ雰囲気をヘンリーから感じていたが、ヴィクターは素知らぬ顔をしている。



「“プレトリウス卿”、この国の裏のボスって呼ばれてる主戦論者だ。外交問題があるなら、即軍事力で解決しようと推し進める代表格さ」

「……言葉の選び方が少々一方的だが、あながち間違ってはいないし、彼もそういった思想を隠そうとしていないな。

ただ、表向きの彼の職業は、時の魔術師で高齢なため一線からは退いている。つまりは私の元、同業者だ」

「まあ、戦争があるから俺が食っていけるってのはあるしな!」



ベルフェリアは、ヴィクターとヘンリーの顔をチラチラと見比べる。


……あれ、もしかして結構危ない人だったりする?



「軍にいるから何度か見たことがあるんだが、杖を付いて部下に介助されていたし、かなり年配の老人だ」

「あ、お爺さん、なんですね」

「……ただ、俺の上司が子供のときから、ずっと見た目が変わらないって聞いてる」

「ええ…!!と、時の魔術師ってそういうことができるんですか!?」



ヘンリーがまるで脅かそうとするかのように低い声を出す。


不老不死とかだったりするのかと、急に異世界のファンタジーさに心をときめかすベルフェリア。



「あれ、思ってた反応しないなベルは」

「……?」



ヴィクターはヘンリーに呆れた視線をやる。



「その上司の年齢は知らないが、50代でも子どもから見れば老人に見えるだろう?流石に魔術式で延命は難しいだろうしな」

「あ、そっか。総隊長40歳手前くらいだから80歳ならそういうことも有り得るか。なーんだ」

「彼のトレードマークは、白い顎髭だからな」



…母親、とは口が滑っても言い表せなさそう。


ヴィクターの無理やり当てはめた、両親代わりに苦笑するベルフェリアだった。



「母親代わりは、流石に無理あるだろ」

「もう手紙は送ってしまった。高齢で移動が大変なら、一緒に会いに行くつもりだ」

「わ、初めてのお出かけですか……?」

「ベルも、たまには屋敷から出て遊ぼうぜ。キノコ生えるぞ」



ヘンリーのもっともな意見を聞きつつも、少しだけ緊張するするベルフェリアだった。


そしてふと思案する。



「……もしかしなくてもすごく偉い方なんですよね!?ま、マナーとか習わないと……!!」



ベルフェリアは時間がないと青ざめていた。





第3章完結です。

お読み頂きありがとうございます!


一番書くのを楽しみにしていたプレトリウス卿の出番の4章開幕です!

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