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“怪物”伯爵は愛妻家♡ 〜嘘がつけない人造花嫁は、拗らせ夫とクセ強使い魔に甘やかされる〜  作者: 藤崎まみ
第3章 思い出話と惹かれる心

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何とか夕飯を乗り切ったベルフェリアは、飲み足りないヘンリーと話し相手に付き合わされているヴィクターを食堂に残して、寝る支度をしていた。


温泉に軽く浸かって、そのまま寝室へ直行しベッドに寝転がる。



「はぁ……、なんか疲れちゃった」

「お疲れ様です。ベルフェリア様、ヘンリー様と会われてどう思われました?」

「やっぱり“父親”と言われるより、ヴィー様のお友達って感じの方が強いですね」



この世界の父代わりと言われても全くピンと来ていなかった。

ただ、ゴクゴクとお酒を飲みまくるヘンリーを見ても、前ほど心が不快感を感じることはなかった。


なんなら前世の母親への渇望すら、薄れているように感じていた。


それは今与えられている環境が、心の穴を埋めてくれる存在がいるということを、ベルフェリアは自覚していた。



「メアリーさんたちとヴィー様が居てくれるから。

……わたし、最近寂しくないです」

「ええ、ファーストキスも済みましたしね」

「え!!……めめめ、メアリーさん!?あんなに激しく卓球してたのに!?いつの間に…!」



メアリーがちらっとタブレットに、先程撮った二人のキスシーンを映し出す。


ギョッとして、飛び起きるベルフェリアがタブレットに手を伸ばすとスルリと躱された。


キャッキャとはしゃいでいると、寝室のドアが開いて寝服に着替えたヴィクターが入ってくる。



「随分、楽しそうだな」

「え?ヴィー様、もうお開きなんですか……?」

「ヘンリーならアイゴール達が相手をしている。かなり酔っていたから、そのうち居眠りして朝まで寝るだろう」

「毎度のことですわ。では私も今夜はこれで失礼します」



おやすみなさい、とメアリーに返事をし見送るベルフェリアとヴィクター。



「たまには夜更かししてもいいんですよ。折角お友達が来てるときくらい」

「君は私が無理して一緒に寝ていると思っているのか?まさか。……髪が乱れているな、梳いてあげよう」

「ん、さっき寝っ転がってたから…。自分でやれますよ」

「いいからおいで、ベル」



少し照れながら、言い出したら聞かないヴィクターに促されるまま、ドレッサーの前の椅子に座る。


臀部辺りまで伸びた長い髪を、毛先から優しく丁寧にブラシで梳いていくヴィクターを見守るベルフェリア。


寝ていると体の下敷きになって痛む時があるので、寝る時は軽く括って毛先だけナイトキャップに入れていた。



「随分伸びたな。扱いが楽なように好きに切ってくれて構わない」

「確かにちょっと長いかなとは思ってましたけど……」

「……もう体を愛しているのではないと、分かってくれたんだろう?」

「……っ!一度切ったら、自分じゃここまで伸ばせない気がして勿体なくて」



ベルフェリアは、用意された体をヴィクターの為に綺麗に保とうと努力していた。


スキンケアやヘアケア、栄養バランスまで気にしていた。ヴィクターに嫌われないようにと。


『髪を好きな色に染めても、切っても構わない。

君が私の傍にいてくれればいい』


魂の定着した際に、髪のインナー部分や目の色が変わってしまった時にヴィクターが言っていたことを思い出すベルフェリア。


ヴィクターは初めて会ったときから、体を育ててきた愛着はあれど、ずっとベルフェリアの希望を優先させてくれていた。


……何度も伝えられていたのに、疑ってばかりで信じられなかった。


ベルフェリアは頑なに、自分はたまたま呼ばれた魂で、ヴィクターの条件に合っただけだと思い込んでいたのだ。


ーー今は違う。


ドレッサーの鏡に映る、優しく髪をまとめてくれる手つき。自分を見る赤い瞳が、蕩けそうなくらいの愛情で満たされているように感じた。


下を向いて、小さな声で呟く。



「……ヴィー様、わたしのこと、その……ですか?」

「ん?よく聞こえなかった。もう一度言ってくれ」



体の向きをぐっと変えられ、面と向かって顔をのぞき込まれる。


ベルフェリアは胸の奥がギュッと締め付けられるような感覚になっていた。


……もうこんなの聞かなくても、分かってるのに、ちゃんと言葉にして欲しい。



「わたしのこと、すき、ですか……?」

「……勿論。心の底から、君のことが好きだ」

「…っ、わたしも、すきです」



恋愛感情で、そう続けようとした言葉は、二人同時に吸い寄せられるように唇が重なって飲み込まれた。


目を見れば言葉にしなくてもそんなこと分かりきっていた。


腰を椅子から少し浮かせた不安定な体勢で、ヴィクターの首に縋り付くベルフェリア。


しっかり体を支えられて、密着すると体温が伝わって心の芯まで溶かされるような感覚になっていた。


ベルフェリアは求められる喜びを体全身で感じていた。


ゆっくり唇が離れると、そのまま抱えられてベッドに移される。


今までぐるぐると思い悩んでいた、体を求められることへの恐怖はベルフェリアの頭から吹き飛んでいた。


二人分の体重を受けてベッドのスプリングがギシリと軋む。



「さあ。今夜の寝物語は何にしようか」

「……ヴィー様、楽しそうですね」

「やっと妻から愛が貰えて、宙に浮かびそうだ。

……そうだな。君を探し出した日のことを話そうか」

「こんな体勢で?」



ベルフェリアに覆い被さったままヴィクターが、ネグリジェに手をかける。


いつも通りの声のトーンで、ベルフェリアの魂を呼び寄せた日の話をしようとする彼に、待ったをかけようと肩を叩く。


……もっとこう、ムードとか!


ヴィクターはまたお預けを食らうのはごめんだとばかりに、ベルフェリアの首筋に顔を埋める。



「黄泉の世界に干渉した時、真っ暗な夜空に浮かぶ星のように、光る魂が浮かんでいたんだ。少しずつ条件を絞って減らしても、何億もの光が見えた」

「んっ……!ヴィーさま、もう!あ、灯り消すか、話の後に…!」

「誰でもよかったんじゃない。……そして、用意した魔石が失くなりかけた時、君を見つけた」



フッと灯りが絞られて、少しだけ暗くなる。


しかし、ぼやっと青白いヴィクターの魔力では、丸見えだった。



「ヴィー様、消してって…!」

「……君の顔が見たい。消してしまったら、良いか悪いか分からないだろう」

「み、見なくていいんです……!」



反応を観察したい、というようなニュアンスを含むヴィクターに、カッと顔を赤くして噛み付くベルフェリア。



「何を今更、裸なんて毎日見ていたんだから気にすることじゃないだろう」

「……!!デリカシー!」



ペチンと寝室にいい音が響き渡った。




お読み頂きありがとうございました!



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