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“怪物”伯爵は愛妻家♡ 〜嘘がつけない人造花嫁は、拗らせ夫とクセ強使い魔に甘やかされる〜  作者: 藤崎まみ
第2章 怪物屋敷で家族ごっこ

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数日後、ヴィクターからA4サイズほどの真っ黒な板を渡された。

厚さは2センチほどで裏に魔石がはめ込まれていた。


ベルフェリアが手に取って覗き込むと、カレンダーのような物が映し出される。



「わぁ、すごい。()()()()()みたい…!」

「あのあとも色々聞いたからな。写真を見るならそのくらいの大きさの方が見やすいと思ったんだ」

「これで撮った写真が見られるんですか?

…でもカメラはどこに?これで撮れるんですか?」



ベルフェリアがわくわくして矢継ぎ早に質問をすると、メアリーとジャスティンがすっと一歩前に出てくる。


てっきりカメラか何かを作ってくれたのかと思い、見せてもらえるのを待つが、2人は手ぶらだった。

キョトンと首を傾げるベルフェリア。


メアリーがじっとベルフェリアを見つめ、ジャスティンはオロオロと目が泳いでいる。


……あれ、2人の目ってこんなに透明感あったっけ。

もっと人形らしかった気がしていた。


ベルフェリアがメアリーとジャスティンの瞳をじっと覗き込む。



「流石だ、よく気づいたな。

メアリーとジャスティンの瞳をレンズに変えたんだ。

もし撮りたいものがあったら、どちらかは傍にいるはずだから撮ってもらうといい」

「え…!メアリーとジャスティンの目がカメラに!?」

「お任せ下さい、ベルフェリア様。

シャッターチャンスは逃しませんわ」

「が、がんばりますぅぅぅ!!」



ヴィクターは小型カメラをメアリーとジャスティンの瞳に埋め込んだ。もともと魔道具カメラは魔力を通して使うもので、使い魔人形たちはヴィクターの魔力が行き渡っている。


撮った写真はそのまま、ベルフェリアが今持っているタブレットに転送、保存される仕組みになっていた。


ヴィクターは驚くベルフェリアの肩を抱いて、顔を擦り合わせ、メイド2人に向き直る。

ベルフェリアは、ヴィクターの顔の近さにドキリと心臓が跳ね、つい下を俯いてしまう。


……顔近い…!



「2人とも、撮ってくれ」

「はい。ふふ、ベルフェリア様笑ってください」

「と、撮りますですぅぅぅ」



小さくカシャカシャッとシャッターを切る音が聞こえて、ベルフェリアの持つタブレットに写真が表示された。


それはメアリーが撮った写真で、頬をうっすら染めて微笑むベルフェリアに寄り添うヴィクターがきちんと映っていた。



「すごい…!これ本当にカメラですね!」

「そうか、気に入ったようで良かった。

……ベルフェリア」

「?なんでしょう」



素直に喜んで嬉しがるベルフェリアの顔を覗き込むヴィクター。

そのまま耳元で囁くように呟いた。



「……頑張った夫に、ご褒美は貰えないんだろうか」

「な、何をあげれば…」



ベルフェリアが見上げて、顔を上げたのをいいことに、ヴィクターはするりと顎に触れ、ぷっくり膨らんだ唇を親指で撫でた。


ーー分かるだろう。


そう言わんばかりの仕草に、ベルフェリアはボッと顔を真っ赤にする。

ゆっくり近づいてきたヴィクターの唇を、ベルフェリアは慌てて片手で押さえ込んだ。



「……た、魂抜けちゃいますぅ…!!」

「む。……抜かないが?」

「わたしが勝手に抜けちゃうんです!!」



まだ無理!と照れまくって拒否するベルフェリアの様子を観察するヴィクター。

『“怪物”伯爵に魂抜かれる』と街の子どもたちから恐れられていることを知っていた。


ベルフェリアの発言もほぼ同じなのに、全く意味が違って聞こえた。

……少しだとしても男として意識されている事実に、ヴィクターは気を良くしていた。



「ははっ!…それは困るな。

仕方ない、我慢しよう。……今日のところは」

「ヴィー様…!」



愛おしげに笑うヴィクターの破顔に、ベルフェリアはズキューンと胸をときめかせていた。


カシャカシャと音を立てて二人の主人の仲睦まじい様子をシャッターを切るメアリー。

ジャスティンは猛烈に照れながら、自分の目を手で隠しつつ、指の間からシャッターを切る。



「…みみみ見ないと撮れないですのにぃぃぃ!

きゃぁぁぁぁ…!」

「ジャスティン、口にハンカチ詰め込まれたいですか?」

「ひぇぇぇぇ、メアリーさんの鬼畜ぅぅぅ」



盛り上がるメイドたちに気付いたベルフェリアは、慌ててタブレットを見る。

ばっちり記録されたキス一歩手前写真に、ギョッとする。



「も、もう撮らなくて大丈夫です…!

ヴィー様、これ消せないんですか?削除!」

()()()だろう?……残しておこう」

「えぇ…!?」



完全にからかっているヴィクターを縋るように見るベルフェリア。

メアリーの撮ったものばかり見ていたため、ヴィクターが切り替えて、ジャスティンの撮った写真を見る。


……ほぼ全てブレているか、指が邪魔でピントがズレまくっていた。



「……おい、ジャスティン。お前は何をしている」

「ひぇ!面目ございませんんんん」



ジャスティンの首根っこを掴んで、オラつくヴィクター。

目がレンズのため、キョロキョロ動くジャスティンの撮影技術は破滅的だった。


ヴィクターがジャスティンにレンズを入れたのは失敗だったかと溜息をつく。


……しかし、メアリーとベルフェリアが確認すると、一枚の写真にくぎ付けになっていた。

指ががっつり入っているものの、先程のヴィクターの破顔が映っていた。



「奇跡の一枚ですか。…やりますわね、ジャスティン」

「ヴィー様!これ印刷はできないんですか?」



ヴィクターのかなりレアな笑顔を写し撮ったジャスティンの株は、ベルフェリアの中でかなり上がっていた。





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