06 雨を降らせ、雷も落としてみました
新たにふたつの奇跡を得たので、ためしに使ってみることにした。
『天候の奇跡』は天空石から使用するようだ。
画面上の『奇跡』のアイコンをタッチすると、さらに『雨』と『雷』のアイコンが出てくる。
まずボクは『雨』をタッチ。
すると気象衛星みたいな、雲が強調された見取り図が出てきた。
どうやらこれで、雨雲にしたい雲を選ぶらしい。
ボクは、天空城のそばにあった雲をタッチしてみた。
すると……画面の白い雲は、水色に変わる。
なんだか面白かったので、調子に乗って手当たり次第に雲をタッチしていると、『奇跡力』がグングン減っていったので、あわてて指を止めた。
危ない危ない、調子に乗ってエネルギーを使い切るところだった……! と冷や汗をかいていると、
……サァァァァァァァァァ……。
ボクのまわりを、小川のせせらぎのような水音が包んだ。
外では、しとしとと小雨が降りはじめている。
すごい……本当に……雨が降り出した……! と目を丸くしていると、濡れたポポがホコラの中に避難してきた。
ボクの肩にいた小人が入れ替わるようにして、「あめだー! あめだー!」と外に飛び出していく。
「雨を降らすのは、神様にとっては基本ともえる奇跡じゃ。奇跡で降らす雨は飲み水にもなるし、作物を育てるにもピッタリじゃぞ。小屋にコップがあるから、飲んでみるがいい」
オジサンにそう言われたので、ボクはログハウスに行ってみた。
テーブルの上に木のコップがあったので、窓を開けてコップを出し、雨水を受け止める。
コップの半分くらいまでたまったところで、ボクは水をぐいと飲んでみた。
ごくりっ、と大きく喉が鳴って、ぷはあっ、と息が出る。
乾いた植物が、恵みの雨を受けたみたいに……身体に染み渡っていく感覚が、とても心地いい。
思わずボクの口をついて出たのは、「おいしい」でも「つめたい」でもなくて、
「……気持ちいいっ!」
だった。
水がこんなにいいものだったなんて……! と何度もおかわりしてゴクゴク飲み干していると、横からちょいちょいと触られた。
いつの間にか猫になったポポがテーブルの上にいて、前足でボクを呼んでいたんだ。
「あ、ポポも、水飲む?」
尋ねると「ミャッ」と返事をしたので、ポポの前にコップを置いてあげると、ズボッと顔を突っ込んでいた。
見るからに飲みにくそうだったので、木の皿に移し替えてあげると、ミルクみたいにピチャピチャ舐めだす。
ついでだからひと休みしようと、ボクはテーブルにある木の椅子を引いて、腰かけた。
開けっ放しの窓から、雨のニオイが吹きこんでくる。
外の景色は、さっきまでとはだいぶ違っていた。
あんなに晴れていたのがウソみたいに曇り空に覆われていて、薄暗くなっている。
初めて見る、雨に濡れた世界。なんだか落ち着いた感じがして、すぐにボクのお気に入りの風景になった。
雨の音がしているのに、いつもより静かな気がするのも……なんだか不思議だ。
でも、よく考えたら……この雨を降らせているのは他の誰でもない、ボクなんだよね……。
天候を変える力がボクにあるだなんて、まだ信じられないけど……。
あ、そうだ。
そういえばもうひとつ、天候を変える奇跡があったんだった。
思い出したボクは椅子から立ち上がり、まだ水を飲んでいるポポを残してホコラに向かった。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
「水はおいしかったか? じゃあ次は、雷の奇跡を使ってみるんじゃ」
天空石に浮かび上がっているオジサンに言われて、ボクは『雷』のアイコンをタッチする。
すると『雨』の時と同じような、雲が強調された見取り図が出てきた。
これで雷雲を指定するのか……と思い、さっそく手近な雲に触れてみようとしたが、
「あ、ちょっと待つんじゃ。天空城より上にある雲を選ぶと、天空城に雷が落ちてくるぞ。じゃから天空城より下か、外れたところにある雲を選ぶんじゃ」
危なかった……天空城のすぐ真上にある雲を選ぶところだった。
ボクは地図をいろんな角度から見て、天空城の真下にある雲を選んでみた。
なるべく近くにあるのがいいんだよね、だって、雷ってどんな風に落ちるのかよく見てみたいから。
画面上でタッチされた雲は、色が黄色く変わった。
ボクの足元から、ゴロゴロゴロ……! と地鳴りのような音がわきあがってくる。
ボクは雨に濡れるのもかまわず、ホコラの外に飛び出す。
天空城のフチにしゃがんで、下を覗き込んでみる。
すると……天空城の底にくっつくようにして、灰色の雲の群れが広がっているのが見えた。
その中のひとつが、電流のような光の筋をまとっていたので、すぐにお目当ての雷雲だとわかった。
ピカピカと黄金色の明滅を繰り返しており、猛獣の唸りのような音をたてている。
どんよりした雲たちのなかで、ひときわやる気を感じさせる雲……!
アレが雷を出すんだ……! と思うとなんだかワクワクしてくる。
でも、いつまで待ってみても……期待のモノが飛び出すことはなかった。
雨でびしょ濡れになってきたので、あきらめてホコラに戻ると、
「画面上で雷雲に触れると、雷を落とすことができるぞ。ただしひとつの雷雲につき一発だけじゃがな。『雷』に多くポイントを振ると、パワーアップして、撃てる数も増えていくんじゃ」
ボクは身体のあちこちから雫を垂らしながら、オジサンからのメッセージを読んでいた。
なんだ、そういうことか……。
ボクは気を取り直して、画面上にある黄色い雲に触れようとする。
でも途中で、はたと思い直す。
よく考えたら、このホコラの中でタッチしちゃったら、雷が落ちる瞬間が見れないんじゃ……と思っていると、ボクの心を読んだかのようにオジサンからのメッセージが来た。
「雷が落ちる様を確認したければ、拡大して雲をアップにしてみるとよいぞ。肉眼ほどの迫力はないかもしれんが、落ちた先の状況も見れるから便利なんじゃ」
なるほど、と思ったボクはひとさし指と親指を画面に当て、ピンチアウトしてみた。
黄色い雲を拡大してみると、さっきボクが見たのと変わらない、リアルな雲が大写しになる。
雲は、触ると感電しちゃいそうなくらいゴロゴロピカピカしていた。
これにタッチするだけで、ボクの手による雷が、地上に落ちるんだ……!
なんだかミサイルの発射ボタンを押すみたいな気分になって、ドキドキする。
ちょっと緊張しちゃって、ボクはごくりと喉を鳴らした。
「よ……よぉし、いくぞ……! 3・2・1……発射っ!」
トン……! と音がするくらい強く、ボクはひとさし指を突き立てる。
同時に、あたりが閃光に包まれ、
……ドッゴォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーンッ!!!
耳をつんざく爆音が轟いた。
「うわあっ!?」
あまりの大音量に、ボクの心臓は口から飛び出しそうになる。
画面には「リプレイ」と出ていて、雷が落ちる様がスローで繰り返されていた。
地割れみたいな稲妻が空を裂き、うねりながら真下の地面に着弾する。
特撮映画みたいな派手な爆風があがり、小さな人影が土煙とともに舞い上げられていた。
あれっ!? と思って着弾点を拡大してみると……吹っ飛ばされていたのは、さっきボクに襲いかかってきたゴブリンたちだった。
炭みたいな色になっているゴブリンたちは、燃焼するみたいに黒い煙をあげ、次々と消滅していく。
「ゴブリンを倒したようじゃな。モンスターは悪しき心でできておるから、倒すと瘴気となって空にたちのぼり、消えうせるんじゃ。……おお、ずいぶん大勢やっつけたようじゃなぁ、一気にレベルアップじゃ! ほっほっほっほっ!」
画面の中のオジサンは、嬉しそうに笑っていた。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:5)
今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが1あります。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●天候の奇跡
雲
(0) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(0) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 ??? … ???
神の叡智
(0) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(0) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(0) LV3 ??? … ???
●天空城の奇跡
高度
(0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(0) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(0) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???
●創造の奇跡
魔法生物
(0) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(0) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(0) LV3 ??? … ???
有機生物
(0) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(0) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 ??? … ???
回復
(0) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 ??? … ???




