表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/52

06 雨を降らせ、雷も落としてみました

 新たにふたつの奇跡を得たので、ためしに使ってみることにした。


 『天候の奇跡』は天空石から使用するようだ。

 画面上の『奇跡』のアイコンをタッチすると、さらに『雨』と『雷』のアイコンが出てくる。


 まずボクは『雨』をタッチ。

 すると気象衛星みたいな、雲が強調された見取り図が出てきた。


 どうやらこれで、雨雲にしたい雲を選ぶらしい。

 ボクは、天空城のそばにあった雲をタッチしてみた。


 すると……画面の白い雲は、水色に変わる。

 なんだか面白かったので、調子に乗って手当たり次第に雲をタッチしていると、『奇跡力』がグングン減っていったので、あわてて指を止めた。


 危ない危ない、調子に乗ってエネルギーを使い切るところだった……! と冷や汗をかいていると、


 ……サァァァァァァァァァ……。


 ボクのまわりを、小川のせせらぎのような水音が包んだ。

 外では、しとしとと小雨が降りはじめている。


 すごい……本当に……雨が降り出した……! と目を丸くしていると、濡れたポポがホコラの中に避難してきた。

 ボクの肩にいた小人が入れ替わるようにして、「あめだー! あめだー!」と外に飛び出していく。


「雨を降らすのは、神様にとっては基本ともえる奇跡じゃ。奇跡で降らす雨は飲み水にもなるし、作物を育てるにもピッタリじゃぞ。小屋にコップがあるから、飲んでみるがいい」


 オジサンにそう言われたので、ボクはログハウスに行ってみた。

 テーブルの上に木のコップがあったので、窓を開けてコップを出し、雨水を受け止める。


 コップの半分くらいまでたまったところで、ボクは水をぐいと飲んでみた。

 ごくりっ、と大きく喉が鳴って、ぷはあっ、と息が出る。


 乾いた植物が、恵みの雨を受けたみたいに……身体に染み渡っていく感覚が、とても心地いい。

 思わずボクの口をついて出たのは、「おいしい」でも「つめたい」でもなくて、


「……気持ちいいっ!」


 だった。


 水がこんなにいいものだったなんて……! と何度もおかわりしてゴクゴク飲み干していると、横からちょいちょいと触られた。

 いつの間にか猫になったポポがテーブルの上にいて、前足でボクを呼んでいたんだ。


「あ、ポポも、水飲む?」


 尋ねると「ミャッ」と返事をしたので、ポポの前にコップを置いてあげると、ズボッと顔を突っ込んでいた。

 見るからに飲みにくそうだったので、木の皿に移し替えてあげると、ミルクみたいにピチャピチャ舐めだす。


 ついでだからひと休みしようと、ボクはテーブルにある木の椅子を引いて、腰かけた。

 開けっ放しの窓から、雨のニオイが吹きこんでくる。


 外の景色は、さっきまでとはだいぶ違っていた。

 あんなに晴れていたのがウソみたいに曇り空に覆われていて、薄暗くなっている。


 初めて見る、雨に濡れた世界。なんだか落ち着いた感じがして、すぐにボクのお気に入りの風景になった。

 雨の音がしているのに、いつもより静かな気がするのも……なんだか不思議だ。


 でも、よく考えたら……この雨を降らせているのは他の誰でもない、ボクなんだよね……。

 天候を変える力がボクにあるだなんて、まだ信じられないけど……。


 あ、そうだ。

 そういえばもうひとつ、天候を変える奇跡があったんだった。


 思い出したボクは椅子から立ち上がり、まだ水を飲んでいるポポを残してホコラに向かった。


  ◆  ◇  ◆  ◇  ◆


「水はおいしかったか? じゃあ次は、雷の奇跡を使ってみるんじゃ」


 天空石に浮かび上がっているオジサンに言われて、ボクは『雷』のアイコンをタッチする。

 すると『雨』の時と同じような、雲が強調された見取り図が出てきた。


 これで雷雲を指定するのか……と思い、さっそく手近な雲に触れてみようとしたが、


「あ、ちょっと待つんじゃ。天空城より上にある雲を選ぶと、天空城に雷が落ちてくるぞ。じゃから天空城より下か、外れたところにある雲を選ぶんじゃ」


 危なかった……天空城のすぐ真上にある雲を選ぶところだった。


 ボクは地図をいろんな角度から見て、天空城の真下にある雲を選んでみた。

 なるべく近くにあるのがいいんだよね、だって、雷ってどんな風に落ちるのかよく見てみたいから。


 画面上でタッチされた雲は、色が黄色く変わった。

 ボクの足元から、ゴロゴロゴロ……! と地鳴りのような音がわきあがってくる。


 ボクは雨に濡れるのもかまわず、ホコラの外に飛び出す。

 天空城のフチにしゃがんで、下を覗き込んでみる。


 すると……天空城の底にくっつくようにして、灰色の雲の群れが広がっているのが見えた。


 その中のひとつが、電流のような光の筋をまとっていたので、すぐにお目当ての雷雲だとわかった。

 ピカピカと黄金色の明滅を繰り返しており、猛獣の唸りのような音をたてている。


 どんよりした雲たちのなかで、ひときわやる気を感じさせる雲……!

 アレが雷を出すんだ……! と思うとなんだかワクワクしてくる。


 でも、いつまで待ってみても……期待のモノが飛び出すことはなかった。

 雨でびしょ濡れになってきたので、あきらめてホコラに戻ると、


「画面上で雷雲に触れると、雷を落とすことができるぞ。ただしひとつの雷雲につき一発だけじゃがな。『雷』に多くポイントを振ると、パワーアップして、撃てる数も増えていくんじゃ」


 ボクは身体のあちこちから雫を垂らしながら、オジサンからのメッセージを読んでいた。

 なんだ、そういうことか……。


 ボクは気を取り直して、画面上にある黄色い雲に触れようとする。

 でも途中で、はたと思い直す。


 よく考えたら、このホコラの中でタッチしちゃったら、雷が落ちる瞬間が見れないんじゃ……と思っていると、ボクの心を読んだかのようにオジサンからのメッセージが来た。


「雷が落ちる様を確認したければ、拡大して雲をアップにしてみるとよいぞ。肉眼ほどの迫力はないかもしれんが、落ちた先の状況も見れるから便利なんじゃ」


 なるほど、と思ったボクはひとさし指と親指を画面に当て、ピンチアウトしてみた。

 黄色い雲を拡大してみると、さっきボクが見たのと変わらない、リアルな雲が大写しになる。


 雲は、触ると感電しちゃいそうなくらいゴロゴロピカピカしていた。

 これにタッチするだけで、ボクの手による雷が、地上に落ちるんだ……!


 なんだかミサイルの発射ボタンを押すみたいな気分になって、ドキドキする。

 ちょっと緊張しちゃって、ボクはごくりと喉を鳴らした。


「よ……よぉし、いくぞ……! 3・2・1……発射っ!」


 トン……! と音がするくらい強く、ボクはひとさし指を突き立てる。

 同時に、あたりが閃光に包まれ、


 ……ドッゴォォォォォォォォォォーーーーーーーーーーンッ!!!


 耳をつんざく爆音が轟いた。


「うわあっ!?」


 あまりの大音量に、ボクの心臓は口から飛び出しそうになる。


 画面には「リプレイ」と出ていて、雷が落ちる様がスローで繰り返されていた。


 地割れみたいな稲妻が空を裂き、うねりながら真下の地面に着弾する。

 特撮映画みたいな派手な爆風があがり、小さな人影が土煙とともに舞い上げられていた。


 あれっ!? と思って着弾点を拡大してみると……吹っ飛ばされていたのは、さっきボクに襲いかかってきたゴブリンたちだった。

 炭みたいな色になっているゴブリンたちは、燃焼するみたいに黒い煙をあげ、次々と消滅していく。


「ゴブリンを倒したようじゃな。モンスターは悪しき心でできておるから、倒すと瘴気となって空にたちのぼり、消えうせるんじゃ。……おお、ずいぶん大勢やっつけたようじゃなぁ、一気にレベルアップじゃ! ほっほっほっほっ!」


 画面の中のオジサンは、嬉しそうに笑っていた。

■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:5)


 今回は割り振ったポイントはありません。未使用ポイントが1あります。

 括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。


 ●天候の奇跡

  雲

   (0) LV1 雲     … 家の煙突から雲を出せる

   (0) LV2 虹     … 虹を出せる

   (0) LV3 ???   … ???

  風

   (0) LV1 風     … 風を起こせる

   (0) LV2 竜巻    … 竜巻を起こせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雨

   (1) LV1 雨     … 雨を降らせる

   (0) LV2 洪水    … 洪水を起こす

   (0) LV3 ???   … ???

  雪

   (0) LV1 雪     … 雪を降らせる

   (0) LV2 大雹    … 大きな雹を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???

  雷

   (1) LV1 雷     … 雷を落とす

   (0) LV2 導雷    … 目標に誘導する雷を落とす

   (0) LV3 ???   … ???

  火

   (0) LV1 火の粉   … 火の粉を降らせる

   (0) LV2 火の玉   … 火の玉を降らせる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●神通の奇跡

  神の手

   (1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る

   (0) LV2 ウェポン  … 武器を出す

   (0) LV3 ???   … ???

  神の叡智

   (0) LV1 現界の声  … この世界の声を聞く

   (0) LV2 異界の声  … 異界からの声を聞く

   (0) LV3 ???   … ???


 ●天空城の奇跡

  高度

   (0) LV1 高度アップ  … 天空城をさらに高く飛ばせる

   (0) LV2 天空界    … 「天空界」まで飛ばせるようになる

   (0) LV3 ???    … ???

  速度

   (0) LV1 速度アップ  … 天空城の移動速度があがる

   (0) LV2 高速移動   … 高速移動ができる

   (0) LV3 ???    … ???

  流脈

   (0) LV1 消費減少   … 奇跡力の消費を抑える

   (0) LV2 放出     … 天空城から物体を放出できる

   (0) LV3 ???    … ???

  障壁

   (0) LV1 防御障壁  … 天空城を守るバリアを張る

   (0) LV2 水中潜行  … 水中に潜れるようになる

   (0) LV3 ???   … ???


 ●太陽の奇跡

  気温上昇

   (0) LV1 気温上昇  … 気温を上げる

   (0) LV2 猛暑    … 猛暑にする

   (0) LV3 ???   … ???

  気温下降

   (0) LV1 気温下降  … 気温を下げる

   (0) LV2 寒波    … 寒波を起こす

   (0) LV3 ???   … ???


 ●創造の奇跡

  魔法生物

   (0) LV1 ゴーレム  … ゴーレムを創る

   (0) LV2 小人成長  … 小人を人間にする

   (0) LV3 ???   … ???

  有機生物

   (0) LV1 絶滅    … 生命を絶滅させる

   (0) LV2 成長促進  … 生命の成長を早める

   (0) LV3 ???   … ???

  回復

   (0) LV1 治癒    … 病気や怪我を治す

   (0) LV2 死者蘇生  … 死んだものを蘇らせる

   (0) LV3 ???   … ???

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ