07 小人たちと一緒に、ゴーレムを作ってみました
当面の脅威であったゴブリンたちは、神の奇跡であっさりやっつけることができた。
でも、このあたりにはまだモンスターがいるかもしれない。
ボクは地図を使って、付近にいるモンスターを探してみることにした。
目を皿みたいにして、拡大した地図とニラメッコしていると、
「探し物があるようなら、これを使うとよいぞ」
オジサンが地図の隅にある、虫眼鏡のアイコンを示して教えてくれた。
そのアイコンをタッチしてみると、ドロップダウンリストが出てくる。
いろいろある項目の中から、モンスターの顔らしきアイコンを選ぶと、地図に色がついた。
「これは勢力図じゃな。赤いところはモンスターによって汚染され、完全制圧されとる地域じゃ。黄色いところは汚染されてはおらんが、モンスターによって制圧されとる地域じゃ。色がついてないところはモンスターのいない地域じゃが……いまは存在しておらんな」
オジサンの言うとおり、勢力図と呼ばれる地図には無色のところはどこにもなかった。
天空城のまわりは黄色い地域が多くて、離れれば離れるほど赤い地域が多くなっている。
ようは、半分以上が赤い地域で……どうやらこの世界は、モンスターが支配しているというのがわかった。
続けてオジサンから教えてもらったんだけど、黄色い地域は放っておくとマズいらしい。
モンスターたちの親玉である『魔王』のシンボル、『ダーククリスタル』が立てられてしまい、そこから大地が腐りはじめるとのこと。
腐って沼地みたいにドロドロになると、モンスターにとってはいい環境となり、赤い地域となってしまう。
そうなると、解放するのも難しくなるそうだ。
ようは、モンスターと陣取り合戦をしているようなものなのかな、とボクは思った。
さらにここに来て、ボクは『魔王』という存在がいることを知らされた。
オジサンによると、人間の神様はボクだけど、モンスターの神様がその『魔王』というヤツらしい。
なんかゲームみたいな話だけど、すべての世界には神様と魔王の争いがあるそうだ。
ボクが以前暮らしていた世界も、神様が勝ったおかげで人間たちが発展したらしい。
「実を言うと、かつてはこの世界にも神様がおったんじゃ、それも幾人も……。じゃが、みな絶望してしまって、人間たちを見捨てていなくなってしまったんじゃ。人間だけでは魔王率いるモンスター軍には到底太刀打ちできず、人間たちは滅んでしまった。この地が完全に魔王のモノとなる前に……ソラ、最後の希望として、キミをスカウトしたんじゃよ」
画面の中にいるオジサンは、そう語った。
でも、なんでボクを……? と思ったら、メッセージはさらに進んだ。
「賽の河原という、いままで多くの子供たちを絶望させた場所でも、キミだけは希望を失わなかった……しかもその希望を自分のためではなく、まわりにいる子供たちのために使った……。そんなキミなら、多くの神々が見捨てた絶望の世界でも、希望で満たすことができるんじゃないかと考えたんじゃ」
オジサンは、少し心配そうな表情になった。
サンタクロースの格好で、そんな顔をされると……トナカイに見捨てられたように見えてしまう。
「じゃが、こんなモンスターだらけの世界が嫌じゃというなら……この世界から離れる方法を教えてやってもよいが……」
ボクはオジサンの言っていることが、よくわからなかった。
なんでボクが、嫌だと思うんだろう……?
こんなにいいところなのに……。
いくら考えてもわからなかったので、ボクは首を左右に振った。
「ううん、別にいいよ。オジサンは絶望に支配されてるって言うけど、ボクにはよくわかんないし……だって、こんなに素敵なところなんだよ? ボク、すっかり気に入っちゃった!」
すると画面の向こうのオジサンは、置き去りにされたトナカイを見つけたみたいに、驚きと喜びが入り混じったような顔をする。
「ほぉ……これほどまでに不利な勢力図を目の当たりにしても、瞳の輝きを失わぬとは……! やはりソラは、見込んだとおりの子じゃ……ほっほっほっほっ……!」
オジサンは嬉しそうに笑ったあと、画面から引っ込んでいく。
ボクは最後までよくわからずにいたけど、オジサンが納得したならいいか、と気を取り直した。
教えてもらったばかりの勢力図を眺めながら、これからの作戦を練ることにする。
いま天空城の下にある森一帯は、モンスターが支配する黄色の地域だ。
さっき倒したゴブリンのほかに、まだ森の中にモンスターがいるんだろう。
じゃあ、まず手はじめに……この森にいるモンスターを一掃して、解放してみよう。
そうすれば、小人を人間に成長させても命の危機に晒されることはないはずだ。
でも……森にいるモンスターをやっつけるには、どうすればいいのかな?
雷を落として森ごと焼き払うっていう手もあるけど、森に住んでる動物たちがかわいそうだし……。
いろいろ考えながら、今度は奇跡ツリーのほうを流し見していると……ふと『ゴーレム』という項目が目に入った。
『小人成長』のひとつ手前にある奇跡。
ゴーレムというのは、魔法で動く人形のこと。
ゴブリンと同じく、ファンタジーの小説やゲームではポピュラーな存在。
作った人の命令に機械のように従い、敵と戦ったり、財宝を守ったりするんだ。
もし、想像どおりのヤツなんだったら……手に入れれば、力強い戦力になってくれるのは間違いない。
ボクはゴーレムを見てみたいという欲求もあって、ポイントを割り振ってみた。
すると、すぐさまオジサンが割り込んでくる。
「おっ、『ゴーレム』を取得したようじゃな。これは作った人形に、かりそめの命を吹き込む奇跡じゃ。草でも、木でも、土でもなんでもいいから、人の形をしたものを作ってみるんじゃ。元となる素材によって、できあがったゴーレムの強さも変わってくるぞ」
ボクが前世で得ていた知識と、だいたい同じことを教えてくれた。
よし、さっそく人形を作ってみよう。材料はなにがいいかな……?
少し考えただけで、ボクはすぐに閃いた。アレしかない、と……!
ボクは天空石を操作して、地図を開く。
材料がふんだんにありそうな場所を目指して、天空城を移動させた。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆
ボクは森の外れにある、大きな川に来ていた。
天空城は、河原のすぐ隣にある草原に停めてある。
ちなみに降りる前にはちゃんと、付近にモンスターがいないことを確認済だ。
人気のない河原には、丸い石がいっぱい転がっていて……ボクはなんだか懐かしい気持ちになった。
やっぱり……コレしかないよね!
昨日までいた賽の河原で、ボクはさんざん石を扱ってきたんだ。
供養塔から始まって、落とし穴から迷路まで作ったんだ。
だから、石で人形を作るくらいはお手の物。
ボクにとって、これ以上ピッタリな素材はないだろう。
さっそく河原で良さそうな石を集めては、天空城に運ぶ。
ポポも犬になって、石を咥えては行ったり来たりして手伝ってくれる。
気がつくと、
「かみさまーてつだうー」
と河原にいた小人たちも集まってきて、えっちらおっちらと石を運んでくれた。
思いもよらぬ手助けもあってか、天空城の庭にはあっという間に、いくつもの岩の小山ができあがる。
ボクは小人たちに見守られながら、石の人形を作りはじめた。
石どうしをくっつけあわせる道具はないので、地面に寝かせた状態で人の形を組み上げる。
棒人間みたいな簡単なヤツができあがったところで、ボクはゴーレムの頭の側に立って、左手をかざした。
「……ゴーレム!」
オジサンに教えてもらった通りにすると、左手が輝きだす。
人の形をなす石、その全身に光がいきわたったかと思うと……小刻みに震えだし、カチャカチャと音をたてて磁石のようにくっついた。
そして……むっくりと起き上がる、ストーンゴーレム。
立ち上がるとかなり背が高くて、2メートルくらいある。
自分がやったこととはいえ、本当に生き物みたいに動き出すなんて……!
ボクは驚きのあまり、言葉を失っていたが、
「わぁーっ、ごーれむだ! ごーれむだー!」
小人たちは物怖じせずに駆け寄り、ゴハンを待ちきれない子猫のようによじよじとゴーレムの身体によじ登りはじめた。
ゴーレムに表情はなかったけど、嫌がっている様子はない。
むしろ歓迎するように小人たちを手ですくいあげ、頭や肩の上に乗せていた。
まるで小鳥たちに懐かれた、森の巨人みたいだ……! とボクは思った。
■■■奇跡ツリー■■■(現在の神様レベル:5)
今回は『ゴーレム』に1ポイントを割り振りました。
括弧内の数値は、すでに割り振っているポイントです。
●創造の奇跡
魔法生物
(1) LV1 ゴーレム … ゴーレムを創る
(0) LV2 小人成長 … 小人を人間にする
(0) LV3 ??? … ???
有機生物
(0) LV1 絶滅 … 生命を絶滅させる
(0) LV2 成長促進 … 生命の成長を早める
(0) LV3 ??? … ???
回復
(0) LV1 治癒 … 病気や怪我を治す
(0) LV2 死者蘇生 … 死んだものを蘇らせる
(0) LV3 ??? … ???
●天候の奇跡
雲
(0) LV1 雲 … 家の煙突から雲を出せる
(0) LV2 虹 … 虹を出せる
(0) LV3 ??? … ???
風
(0) LV1 風 … 風を起こせる
(0) LV2 竜巻 … 竜巻を起こせる
(0) LV3 ??? … ???
雨
(1) LV1 雨 … 雨を降らせる
(0) LV2 洪水 … 洪水を起こす
(0) LV3 ??? … ???
雪
(0) LV1 雪 … 雪を降らせる
(0) LV2 大雹 … 大きな雹を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
雷
(1) LV1 雷 … 雷を落とす
(0) LV2 導雷 … 目標に誘導する雷を落とす
(0) LV3 ??? … ???
火
(0) LV1 火の粉 … 火の粉を降らせる
(0) LV2 火の玉 … 火の玉を降らせる
(0) LV3 ??? … ???
●神通の奇跡
神の手
(1) LV1 ジオグラフ … 大地を切り取る
(0) LV2 ウェポン … 武器を出す
(0) LV3 ??? … ???
神の叡智
(0) LV1 現界の声 … この世界の声を聞く
(0) LV2 異界の声 … 異界からの声を聞く
(0) LV3 ??? … ???
●天空城の奇跡
高度
(0) LV1 高度アップ … 天空城をさらに高く飛ばせる
(0) LV2 天空界 … 「天空界」まで飛ばせるようになる
(0) LV3 ??? … ???
速度
(0) LV1 速度アップ … 天空城の移動速度があがる
(0) LV2 高速移動 … 高速移動ができる
(0) LV3 ??? … ???
流脈
(0) LV1 消費減少 … 奇跡力の消費を抑える
(0) LV2 放出 … 天空城から物体を放出できる
(0) LV3 ??? … ???
障壁
(0) LV1 防御障壁 … 天空城を守るバリアを張る
(0) LV2 水中潜行 … 水中に潜れるようになる
(0) LV3 ??? … ???
●太陽の奇跡
気温上昇
(0) LV1 気温上昇 … 気温を上げる
(0) LV2 猛暑 … 猛暑にする
(0) LV3 ??? … ???
気温下降
(0) LV1 気温下降 … 気温を下げる
(0) LV2 寒波 … 寒波を起こす
(0) LV3 ??? … ???




