第56話 チームアンジェラスなりの狩猟
土下寝!!
帝都の空は今の季節らしいどんよりとした墨色の空で、チームアンジェラスの真田とアランは今日もまた依頼を受領する為に、宿屋からアヴェドギルトに向かっていた。
2人共、北からの冷たい風を防ぐのに初心者講習の時に使ったフード付きマントを羽織っていた。
しかし顔や足元から冷風がマントの中に入り込み、アランは身を縮みこませていた。
「ううう、寒いぞ。今の季節は寒いのが当たり前だが、それを差し引いても寒いぞ」
どうしようもない事をアランは恨み節のように言っていた。
隣で苦笑する真田はマント型の魔法工芸品の恩恵によって、暖かい暖炉の部屋にいるような感覚になっていた。
「冬が寒いのは当たり前じゃないですか。だから天然の氷が出来たり、食糧の劣化具合が遅くなったりと、人間にとっては良い事なのでは?」
「それはそうだけど。‥‥‥いくら良くても今が寒いものは寒い。こればっかりは我慢が出来ない。早く夏が来てほいぜ」
「と言いながら。夏が来たら来たで、夏の暑いのは嫌だというのでしょ」
アランは少し不思議そうな顔をした。
「ん、何言っている? 少し肌寒い時はあるけど、基本的には夏は過ごし易い季節だぞ。ここぞとばかりに人々は活発的に行動するぞ。‥‥‥まあ、それに呼応するかのように魔物達もまた活発的になるのだがな」
「そうなのですか。私が前に居た所は夏は暑くて暑くて、とてもじゃないですけど野外で活動するのが億劫になるのですよ」
「メアリーちゃんから聞いたけど、お前は外国から此処に来たんだよな。お前の所の国はそんなに暑いのか。そんな大変な所によく住んでいたな」
「暑さが原因で死人が出るぐらいですから。他の人達は結構気を遣って生活をしていますよ」
「そんなに暑いのか。‥‥‥だとしたら涼しい所で住んでいる俺達には、とてもじゃないが住めるような場所じゃないな」
脳裏に灼熱の大地を思い浮かべるアランは深刻そうに悩んでいた。
まあ嘘は言ってないよなと真田は多少の罪悪感を感じながら、話題を変えるように。
「今日は何の魔物の討伐をしますか。ドラゴンでも狩りに行きますか」
「それはお前だけだろ。俺の実力では敵わないから行かない。昨日はゴブリンの討伐をしたから、徐々に強さを上げていこう。取りあえず、ゴブリンより強い奴の討伐の依頼を受けよう」
「分かりました」
真田とアランが今後の方針について話し合っていると、前の方で人だかりが出来ているのが見えた。
そこから何やら言い争いをしているかのような叫び声が聞こえて来た。
「何でしょうね」
「何だろうな。行ってみようぜ」
真田たちは何事かと野次馬根性丸出しで、人々の間を縫うように前に進んだ。
最前列に到着するとそこには。
「なんだこらぁ、こっちこいや!!」
「てめぇがこい!! そのぶさいくなかおをさらにぶさいくにしてやる!!」
30代位で一般的な体格の2人の男性が、今にも胸ぐらを掴み合いしかけない程に興奮した様子で、言い争いをしていた。
2人共、先程までかなりの量の酒を飲んでいたのか、少し離れている真田でも顔が赤いのがハッキリと見えていた。
それを帝国支給の青の鎧を着た騎士達が迷惑そうにしながら、其々の腕を掴んで引き離そうとするが、酔っ払いが暴れているので中々、順調とは言えない状況だった。
「おうおう、酔っ払い達が朝っぱらからよくやるな。元気な事は良い事だね」
「確かに元気な事は良いけど、他の事にその元気を使ってほしいな。‥‥‥あっ、居た居た」
真田に答えながらある人物を探していたアランは、見つけるとその人物に駆け寄った。
「おはようございます、ベイカーさん。大変そうですね」
「おはよう、アラン。まあ何時もの事だから、大変と思うのもとうに通り過ぎているよ」
そう苦笑して答えるベイカーはアランを見下ろしながら、答えていた。
20代半ば位で背丈は野次馬の成人男性より頭一つ高く、耳が出る程の短いベリーショートの栗毛色の髪。その女性の性格を表すかのような鋭い目に水色の瞳だ。
手には女性の背丈より少し長い柄が木製で三角錐形の刃先がある槍を持ち、背中には矢筒と標準よりも一回り大きいロングボウをかけていた。
女性からの雰囲気と装着している騎士に支給される帝国式の鎧が相まってか、人々が思い描くような凛々しい女騎士を体現しているように見えた。
しかしその女性には周囲の人々とは大きく異なっていた部分があった。
下半身が馬となっていたのだ。
馬の部分は主に乗馬用とされている中間種のもので、全体を覆う青の鎧の隙間から見えるのは、尾と毛色は髪の毛と同じ栗毛色で毛並みが綺麗に走っていた。またよく走りこんでいるのか、足回りや腰回りには一切の贅肉はついておらず、筋肉が彫刻のように浮かび上がっていた。
所謂ケンタロウス族の出身の騎士だ。
人に馬の特徴があるシーレーノス族とは違い、人間の上半身が馬の首と取り換えたような姿の種族だ。
フィルド帝国の騎士団はその門戸は広く、能力があれば人間だけでは無く亜人も入団できるようになっている。彼女はその1人だ。
「今回はどうしたんですか」
「見ていた人の話では、酔っ払い同士が歩いていてお互いの肩がぶつかり、それを何方も謝らないから言い争いになったらしの。それで次第に興奮し始め掴み合いの喧嘩になりそうだったのを駆け付けた我々が引き離そうとしているわ」
2人の酔っ払い強制的に引き離されもう互いの事は忘れたのか、腕を掴んでいる騎士達に怒りの矛先を変えたていた。
アランは面倒臭い酔っ払いの相手をしている騎士達に同情的な目を向けていた。
「うわぁ、仕事とはいえあんな酔っ払いの相手まで」
「帝都の治安維持も我々の仕事だからね。酔っ払いの相手なんて些細な事と思うと思うけど、こういう事の積み重ねが帝都の民からの信頼を得て、騎士団が目を光らせていると思わせ大きな犯罪の抑止に繋がるの。だからこのような事も大事なのよ」
ベイカーの言葉は気取った様子も無く心からそう思っているように聞こえた。
アランはそれを聞いてうんうんと、何故か満足そうに頷いていた。
すると、話の邪魔にならないように気配を消していた真田が気配を戻し。
「アランさん、此方の方は何方ですか」
「お前は初めてだったか。この人はベイカーさん。この付近の地区の警邏を担当している騎士隊の隊長だ」
「そうでしたか、任務ご苦労様です。私はアヴェドギルド所属のタクト=サナダです」
真田が握手をしようと右手を差し出すと、ベイカーはそれに応え。
「此方こそ宜しく。‥‥‥うん? 君、何処かで会わなかったか」
「何処にでもいるような顔で、帝都に住んでいますから、巡回中の時ではないですか」
「いや、結構最近でこうやって面と向かって話したような気がするのだが」
ベイカーは引き出しにしまい込んだ記憶を探し出すかのように真田の顔をじろじろと注視していた。
すると。
「あっ、思い出した! 一昨日の夜に刃物を持った少女に追いかけられていた、あの時の少年か」
「ああ、あの時の騎士さんでしたか、その節はどうもお世話になりました」
「仕事だから構わないのだが、あれには吃驚したぞ。何時ものように持ち回りの地区の夜警していると、刃物を持った少女に追いかけられている君を見つけた時には、何が起きたかと呆然となってしまったぞ」
「あれは仕方がない事です。聞くも涙語るも涙の壮絶な事態があっての事で」
「違うだろ。騎士の詰め所で話を聞いた時は、君が彼女をからかいすぎて、それに怒った彼女が君を追い掛け回していたと聞いたが」
冷たい指摘に真田は高速で顔を背け、ちっと露骨に舌打ちをした。
「しかし、君を捕まえる時は苦労したな。ケンタロウス族の私ですら中々追いつけないとは、大した健脚だな」
「毎朝、街中を走っていますから、それの効果ですよ」
「それに1番驚いたのはその後だ。君達の身元引受人がまさか公爵家御令嬢であるマリアンヌ様だとはな。私達の詰め所に来た時の衝撃は今でも、いや、一生忘れないだろう。‥‥‥あの時は衝撃が凄すぎて聞けなかったが、お前は公爵家の関係者なのか」
「まさか。ただ仕事の依頼で知り合っただけですよ。公爵家とは仕事だけの関係で、それ以外は無いですね」
「それにしたって、一緒に居た侍女である彼女はともかく、何処とも知れない冒険者をわざわざマリアンヌ様自らお迎えに来られるなんて、あり得ると思っているのか」
突きつけるかのような指摘に、真田はどうしたものかと考え込んだ。
「(こういう事が起きる可能性があるから、貴族とは接触しないようにしたけどな。一昨日の昼間と夜の件は致し方ないが、これは身から出た錆だな。今後の立ち回りを徐々に修正していけばいいが、とりあえずこの状況をどうにかしないとだな)」
口があまり達者では無く語彙に乏しい真田が状況の打破を考えていると。
「隊長。両名の拘束、終わりました」
部下からの報告にベイカーは自然と視線を動かした。
真田たちもつられて見ると、先程まで暴れていた酔っ払い2人は麻の縄で腕ごと胴体や両手首に何重にも巻きつけられ、動かないようにされていた。
「よし、留置場に連れて行くぞ」
「「はっ!!」」
それを合図に其々の麻の縄を持った騎士を先頭にし、他の騎士は逃さないように左右の斜め後方に陣取って留置場へと向かった。
「じゃあ、アラン。冒険者に言うのも変だけど、怪我をしないように頑張りなさいね」
「はい、ベイカーさんも任務を頑張って下さい」
ベイカーはアランに軽く手を振って、部下達に合流しようと足を動かした。
カッカッカッと地面の石とぶつかる実態感のある蹄鉄の音が真田たちの耳に届いていた。
蹄鉄の音が遠ざかって行くの従って、人の壁を作っていた野次馬たちはこれ以上は何も無いと思ったのか、其々の目的の場所へと散って行った。
「アランさん、私達も行きましょうか」
「ああ、そうだな」
真田たちもまた止めていた足を動かし、アヴェドギルトへと向けた。
それから数十分後。
アヴェドギルド本部建物へと到着した真田たちは、何時ものように依頼書が貼られている掲示板を見ていた。
数多ある依頼書の中から気になるものが無い真田は、依頼をどれにするべきか難航していた。
アランは手に取ったある討伐依頼書を見ながら。
「なあ、サナダ」
「何ですか」
「さっきベイカーさんと話していただろ。騎士隊に捕まったお前を迎えに来たのは、カノーヴィル公爵家の御息女マリアンヌ様だと言ったな」
「それは先程ベイカーさんが言った通りですよ。初心者講習の時に会った侍女のエステルという少女が居ましたよね。ちょっと調子に乗って彼女を揶揄いすぎて、怒った彼女が持っていた短剣を振り翳してきたので、逃げ回っていたのをベイカーさん達に捕縛されたのですよ」
「それはわかるけど。職員の人から聞いたけど、その日、お前マリアンヌ様達とお話していたらしいな。一体何があって、マリアンヌ様とお話するような事態になったんだ」
若干、興奮気味に話すアランに真田は事務作業をするかのように淡々として。
「依頼の内容を言うのを差し控えますが、侍女のエステルさんから私に依頼があったので、その関係でわざわざ来たみたいですよ」
「お前個人に依頼!? それって指名依頼じゃないか。それは良いな。頑張っているが俺なんてまだだぜ」
「よくないですよ。ただ面倒が付きまとうだけですよ」
「何でだよ。指名依頼が来たという事は、依頼主がお前の実力や人柄を評価しての事だろ。それは誇ってもいい事だ。事実、指名依頼が来た事で1人前の冒険者と認める人だっているのだから」
「それはそうですけど」
アランは依頼書から視線を外し、何処か遠くを見るような細い目で見上げしみじみとした表情で。
「俺も早く指名依頼を受けれる冒険者になりたいもんだな」
真田には自分の汚点を皮肉で突きつけられているようにしか聞こえなかった。
真田はこれ以上追及されないように、手に取った依頼書に目を落した。
しかし真田は何か心に引っ掛かったのか怪訝な眼差しとなった。
「‥‥‥アランさん。今回はこれを受けるのですか」
「そうだ。人々が困ってこの依頼を出したのだ。何か問題があるのか」
「いや、無いですけど。‥‥‥このグランドゥセールというのは、どういう魔物ですか」
「お前知らないのか。グランドゥセールは、鹿系の魔物で頭部の大きな角が特徴だ。魔物と言っても基本的に大人しく臆病で、人前に出る事は滅多に無いぜ。ネーロウルフやゴブリンなどの魔物と比べれば脅威度は低く、もし出会ったとしても人間から手を出さなければ向こうから逃げてしまう程だぞ。‥‥‥帝都の人間なら誰もが知っているような有名な魔物だぞ」
「ああ、いやグランドゥセールという名称が分からなかったのですよ。私は違う国から来たので、同じ魔物でも国が違えば名称が変化する事もありますから、その確認ですよ」
「ああ、そうだったな。お前の所はなんていうんだ」
「姿形を見て無いので、同じかどうか」
苦笑交じりの真田は再び依頼書に視線を落とし、少し思案に耽った。
「でも、これをするとしたら夜になりますよ」
「そりゃあそうだろ。夜行性である鹿系の魔物グランドゥセールを倒す為には夜に出発しないと出会わないだろ」
真田は否定するかのように首を横に振った。
「違いますよ。鹿は基本的には1日中活動していますよ。ただ臆病なだけなので人目がある日中は人目の無い森の中や山の方に居るだけなので、人目が無くなる夕方の薄暗い時間から夜にかけて人里に来ますよ」
「そうなのか? 夜に頻繁に見かけると聞くから、てっきり夜行性かなと思ったんだが」
「鹿は草食動物ですよ。もし日中で休んでいると近くに住む狼系のネーロウルフ、人型のゴブリンやオーク等の肉食動物に狩られる可能性が出てきますので、群れで少し休憩して移動。そしてまた休憩、移動。そうやって繰り返せば、肉食動物に出会う可能性が減るのです」
真田の史跡を説明する案内人のような説明にアランは納得するかのように頷いていた。
「森の方を探索せずに素直に畑の近くで待ち伏せした方が、遭遇する可能性は高くなるという訳か。依頼の達成条件には畑を荒らすグランドゥセール6匹を討伐と書いてあるから、畑を荒らしに来た奴を捕らえればいいな」
アランは決定と言わんばかりに真田から依頼書を手に取ると、依頼受諾の事務手続きをする為に受付へと向かった。
受付が終わった真田たちはグランドゥセールが現れる畑には行かず、食事スーペスの一角に座っていた。
対面に座る真田とアランの机の上には、依頼書が置いてあった。
アランは今から人生に多大な影響を与えかねない選択肢を選ぶかのような真剣な表情で。
「さて、依頼内容は畑を荒らすグランドゥセール6頭の討伐。支払われる褒賞金は9万フラルだ。‥‥‥しかし受けたのは良いが、グランドゥセールを捕まえる方法が、何かいい方法はあるか」
「何も考えていないかったのですか!? 何か方法があるから受けたのだと思っていたのに」
「何言っているんだ。あんな短時間で思いつく訳ないだろ。チームでの仕事なのだから、全員で考えるのが当たり前だろ。グランドゥセールを捕まえるのに何か方法は無いだろうか」
非難ばかりしていては会議は進まないので、真田は若干のしこりを残しながらも、捕獲方法を考え始めた。
「基本的には罠ですかな。グランドゥセールの進路上に囲いや落とし穴を作るとかですかね」
「やはり罠か。それが確実だが、それを作る労力が大変だよな。俺達2人で被害に遭っている畑の周囲にスコップで穴を掘ったり、木の囲いを作るんだろ。冒険者はある程度は自分で出来ないといけないが、本職では無い俺達がグランドゥセールが引っ掛かる罠を作って設置出来るだろうか」
「無理ですね。形なら出来ますが、それを引っ掛からせるとなると話は別ですから」
「そうだよな。依頼期限内に作った罠で6頭を捕まえられる自信は全く無いからな」
「でしたら、最終手段である私達が待ち伏せをして直接捕まえる他、無いですね」
「やっぱりか」
分かっていたとはいえ、改めてどうしようもない現実を突きつけられた事で、アランは露骨に肩を落とした。
真田はアランの様子に気にする事無く淡々とした表情で。
「最終手段に関しては私に当てがありますから、アランさんはご心配なく」
「ほんとうかぁ?」
顔を上げたアランは間延びする言葉と不審人物を見るような怪訝な視線を真田に浴びせた。
真田はニヤリと失敗など想定していないと言わんばかりに自信満々な笑みで。
「ええ、任せて下さい」
アランは視線を逸らさず真意を測るかのようにじっと見ていた。
幾ばくかの時間が過ぎると、アランは何かを諦めたかのように重たい溜め息を吐いた。
「他に方法がある訳でも無いからな。真田、今回はお前に任せる」
「了解です。‥‥‥それと捕まえたグランドゥセールの解体はどうするのですか。やはり自分達で解体する事になるのですか」
「基本はそうだが、確か有料でギルトが解体作業を代わりにやってくれるらしい。前にゴブリン討伐の証明の受付に行っただろ、あそこで頼べばしてくれるみたいだ」
「では、捕まえたグランドゥセールはギルトで解体を頼むと。‥‥‥でこの後、どうしますか。依頼の性質上、帝都を出るのは夕方からになりますが、一旦ツキノクマに戻りますか」
「お前を1人には出来ないからな、お前次第だ。お前はどうするんだ」
「本音を言えばツキノクマで夕刻まで休みたいのですが、ちょっと気になる事がありまして」
「何だ?」
「アランさん、初心者講習の時に言っていたじゃないですか。討伐の際に余った素材は売る事が出来ると」
「ああ、確かに言った。それがどうしたんだ」
真田は机の上に広げた依頼書の達成条件の欄を指し示した。
「今回もまた角か左右どちらかの足を揃えて、ギルトに提出する事になります。だとしたら余った毛皮やお肉はどうするのですか。解体して何処かの肉屋かギルトに売りますか。それともそのまま野外に放置ですか」
「そんな阿保な事は出来るか。俺を含めた冒険者たちは獲物の毛皮や肉はギルトや専門の店に売却して、資金の足しにするんだ。そのお金を元にして壊れている武器や防具を修理や、新たな装備類を揃えたりするんだ」
アランの言う通りだった。またそれが、多くの冒険者が討伐や採取の依頼を受ける理由となっていた。
基本的には依頼で出た魔物に関しては、アヴェドギルトは冒険者の裁量に一任している。
事細かに指示していると、それが原因で冒険者との間に軋轢が発生してしまい、優秀な人材が寄り付かなくなる可能性があるので、指示は最低限に止めている。まあ、その分だけ冒険者に責任が大きくなっているのだが。
「そうなのですか。‥‥‥だとしたら、出来るだけ高く買い取ってもらえる所がいいですね。アランさんは何処か心当たりはありますか」
「そうは言ってもな、俺もそんなには詳しくないんだ。肉は近くのミートイッティングに売り、その他の素材はギルトで買い取ってもらっているから。何処の店がどのような値段で買い取っているか知らないんだ」
「そうですか。‥‥‥まあ、それを抜きにしても市場動向の調査をしてもいない現状では、高値で買い取ってくれる店を論議しても意味が無いですよね。需要と供給のバランスを知らない状態では、持って行っても安く買い叩かれるかもしれませんし」
アランは真田が何を言っているのわからず、キョトンとしていた。
真田はアランの様子を尻目に更に続けた。
「しかし、どの位の個体が来るか分からないが6頭は2人では多すぎですね。血抜きをした肉の量が多すぎて食べきれない。かと言って、保存するのもなあ。保存技術が未熟な此処ではどんなウィルスが予想できないしな」
「保存って、何処か日の当たらなくてひんやりとした地下でいいだろう」
アランがさも当然の言うのに対して、真田は何故かあらゆる失敗を許すかのような優しい顔となった。
「それはさておき」
「それはじゃないだろ、今の絶対俺の事を馬鹿にしていただろ」
真田はジト目のアランの文句の声を馬耳東風のように聞き流した。
「切り取った肉はツキノクマの大将たちに渡して、夕食の時に振舞って貰うように頼みましょ。料理では素人の私達では、上手く肉を調理するのは難しいですし」
「そうだな。それだったら他の宿泊者やアンナちゃん達も食べられるから、6頭分の肉がすぐに無くなるから、腐って食べられなくなる事は無いだろ。‥‥‥で、この後はどうするんだ。確か出発は夕方頃だろ」
「特にやる事も無いので、ツキノクマに戻りますか。その時にでも大将たちに肉を渡して料理にでも使って下さいと言っておけば、大体2週間後の夕食に出てくる事になりますよ」
真田とアランは時間調整の為に、一旦ツキノクマへと戻って行った。
空の色が透き通る蒼から橙色の一色に変化した時刻。
被害に遭っている畑の近くの門では、騎士達の監視の下、外での仕事を終えた農民、依頼を終えた冒険者、他の街からの行商人等々が、間もなく来る閉門時間を過ぎないように普段よりも速度を速めて歩いていた。
真田たちはそれらの流れを逆らうかのようにして、外へと向かっていた。
「鹿肉に惹かれたとはいえ、此処に来てから初めての夜間での依頼。だが夜はさっさと寝たいから、早く終わらせたるぞ」
真田が真逆の方向へと思いのベクトルを働かせていると、
「おいおい。これから先、夜間に移動する事が多々あるだろ。こんな事ぐらいで弱音を吐くなよ」
アランはとても冒険者とは思えない言葉を吐く真田に呆れていた。
「そうは言いましても、日中に活動する人間が夜が眠たくなるのは自然な事で、寧ろこのように夜間に活動する事自体が不自然なのですよ」
「それは仕方が無いだろ、依頼がそうなっているんだから。」
「だからさっさと依頼を終わらせて、宿屋に戻りましょ。寝不足が続くと、簡単な事が覚え難くなったり集中力が低下してしまいます。そんな状態で危険な魔物や人物に遭遇したらどうなるのかは、火を見るよりも明らかです。‥‥‥それに、アランさんは私以上にこの事に気を付けなければなりませんよ」
「それは何故だ」
内緒話をするかのように顔を近づけて小声で話した真田に合わせ、アランもまた小声になった。
「詳しい説明は省きますが、私達の皮膚の下には真皮という皮膚の本体があります。寝不足が続くとその真皮にシミ、色素沈着などを起こす物質が溜まっていきます。そうなれば若い時から肌荒れを気にする事となりますよ」
男装をしているとはいえ、中身は年頃の少女らしくアランの表情は固まった。
アランは自身の動揺を表すかのように小刻みに震えた声で。
「そ、それは嫌だな。それを防ぐ方法はあるのか」
真田は否定するかのように首を振った。
「残念ながらアランさん自身の体質もありますし、日光、食事、加齢等々の要因がありますから、それだけをしたら防げるものでは無いのです。 ‥‥‥ただし、遅らせる事は出来ます。肉と野菜のバランスが取れた食事や質の良い十分な睡眠を取るだけでもお肌には良いのですよ」
他にも化粧品や美容液で肌を保護する事が出来るとは真田は言う事は出来なかった。
化粧品や美容液の成分表は把握しているのだが、原材料が無い今では言ったとしても肩透かしをするだけなので、真田は胸中に止めておく事にした。
アランは絶望に打ち拉がれたかのようにがっくりと肩を落とした。
「うう、そうなのか。これも運命として受け知れるしかないのだろうな」
真田はそんなに落ち込まなくてもと苦笑していた。
落ち込むアランは、ふと胸中にある疑問が浮かび上がった。
「うん? 十分に寝ても肌が荒れるのなら、そこまで気を付けなくても普通に寝てればいいじゃないか」
その一言に真田の表情は石膏で固められたかのように固まった。
アランは様子がおかしくなった真田に疑惑の目を向けていた。
「まさかと思うが自分がさっさと寝たいから、わざと俺を怖がらせるように言ったんじゃないだろうな」
「あはははははは。まさかそんな事を言う訳無いじゃないですか」
渇いた笑みを浮かべて真田は否定するが、アランの疑念はますます強くなるばかりだった。
アランの突き刺さるかのような疑惑の視線に真田はついに耐え切れなくなったのか。
「三十六計、逃げるが勝ち!」
アランの追及から逃れるように外に向かって、100m走の選手のような速さで走り出した。
アランは脱兎の如く逃げ去っていく真田の背中を呆然と見ていたが、
「あっ、待て。逃げるな、男らしくないぞ!!」
慌てて真田の後を追った。
必死の形相で逃げる真田に追うアラン。
そんな奇妙な光景を通行人達は閉門時間が迫っている事も忘れて、呆然として見ていた。
外に出た真田の目の前には、幾つもの畑が広がっていた。
全長が数十mもあり、その敷地内には高さが数十cmの複数の山が形成され、その頂上部には重力に逆らうかのように直立する緑の茎と葉、幾重にも大きな葉が折り重なり楕円形の緑の野菜、幾重にも葉が重なった黄緑色の球体から一枚一枚の葉から茎や葉が広がっている野菜等々、食卓に並ぶ野菜の収穫前の光景が広がっていた。
やはりと言うべきなのか、農作物被害を受けている個所が数か所あり。土が不自然に掘り返され穴があり、葉の部分が不揃いの農作物が見受けられた。
畑と畑の間には綺麗な小川がまるで区画整理された道路のよう走っていた。帝都に流れる川から引っ張って来ていた。
「(全ての畑に水を行き渡るようにしているのだろうな。土の栄養と水の量によって、野菜の生育に大きくかかわるから、そこら辺の所を考慮しての事だろう)」
真田は縦横無尽に走る川を見ながら、そうぼんやりと考えていた。
隣のアランは依頼書と睨めっこしていた。
「依頼書によるとこの辺りに出没するグランドゥセールを6匹を討伐するようになっているな。‥‥‥捕獲方法はお前に一任したけど、どうやって捕獲するんだ」
「一番簡単で確実な方法ですよ。素手で捕まえる、それだけですよ」
「やっぱりそれか」
まさかと思っていた方法をする事となり、アランは重い溜め息を吐いた。
真田はそれを不服そうに見ていた。
「仕方が無いじゃないですか。罠に使う道具は無い、それを有効に使う知識が無いとしたら、単純明快な方法を選択するしかないですよ」
アラン自身も真田と同じ考えらしく、ただ不満を表情に表すしかしなかった。
「それはそうかもしれないけど。‥‥‥俺達では1日に1頭を捕まえるのが限界か。ああ、これは長くかかりそうだな。何とかギリギリで依頼期限内には終わりそうなのが、唯一の安心材料か」
「何を言っているのですか。今日、出現すれば依頼は今日か明日で終わりますよ」
アランは愕然とした。今まで信じて疑わなかった常識を否定されたのだから無理も無かった。
「何言っているんだ、相手は魔物だぞ。人間とは力の差がはっきりしているから、下手に近付けば大怪我をする存在だ。それを罠を使わずにして捕まえるられるのは、1頭が限度だろ」
「まあまあ、私を信じて下さい。決してアランさんを怪我させるような真似はしませんから」
そう言うと真田は亜空間に手を突っ込み、アウクシリアを取り出した。
見ていたアランはいきなり真田の腕が半分になった事に驚き、更に何も無い虚空から見た事も無い物体が出て来た事に愕然とした表情になった。
真田はアランの様子を一瞥する事無く、取り出したアウクシリアを見せるようにアランとの間に浮かせた。
「これはアウクシリア。私のあらゆる願望を叶える事が出来る魔法工芸品ですよ」
「これが魔法工芸品‥‥‥」
見た事も無い魔法工芸品にアランは呟きながら、食い入るように見ていた。
真田はアランを少し下がらせると、独り言のように呟いた。
「いでよ、我が分身。ディムミーレス」
幾何学模様が描かれた魔法陣が真田の足元に展開されると、光の粒子が収束し始めた。
それは徐々に人の形を成していき、最終的には目、鼻、口が無い半透明で術者である真田の6体が出来上がった。
カドモニアの森防衛戦の際に、平原に無残に捨てられていた遺体を回収する時に使った術式だ。
真田がこれをどう使ってグランドゥセールを捕まえるのか説明しようとしたが、その前にアランが自身の疑問を吐露した。
「なあ真田。チームを結成する時に、お前は確か簡単な補助魔術しか使えないと言ったよな。でも今使ったのはどう見ても高等魔術だよな。‥‥‥あれは嘘だったのか」
「いえ、嘘ではありませんよ。あの時はこのアウクシリアが無かったので、私自身単独で使えるのは簡単な補助魔術ですと言ったのです」
納得がいかないのかアランは不満たらたらといった様子だった。
「何か騙されているような気がするな」
「まさか。リーダーであるアランさんを騙そうなんて気概は毛頭に無いですよ」
アランが疑り深い視線を遠慮なしにぶつけるが、真田は平気とばかりに笑みを絶やす事は無かった。
これ以上しても無意味だと判断したのか、アランは通常の状態に戻した。
そして場の雰囲気を切り替えるかのように話題を変えた。
「それでその魔術でどうやってグランドゥセールを捕まえるんだ?」
「この分身たちをグランドゥセールの退路を塞ぐように移動させ、畑に来た所を私達が驚かして混乱するグランドゥセールを捕まえる作戦ですね」
「まあそれしかないのだろうな。‥‥‥言っては何だが、それらでグランドゥセールを捕まえられる事が出来るのか。何だか頼りなさそうに見えるが」
「今はこうですが。供給する魔力量によって能力が上下しますから、グランドゥセールを捕まえる時は、しっかりとしたものになります」
だからメアリー救出の際に使われたのだ。
真田は事前に突入させる分身1体1体にミノタウロス1体なら倒せる程の魔力量をつぎ込んでいた。警備が最低限などの他の要因もあるが、突入の際に誰も怪我無くスムーズに主犯であるデータスを拘束出来たのだ。
出番は一旦これまでと真田は指を鳴らして、半透明の分身たちを霧散させた。
「此処にずっと居たら、グランドゥセールが警戒して近付いてこないので少し離れた場所に移動しましょうか」
「じゃあ取り敢えず、直ぐに動けるような場所に移動しようか」
身体の輪郭が周囲の光景とあやふやとなる時間帯。
真田とアランは城壁に背中を預け、何時とも知れないグランドゥセールの出現をじっと待っていた。
「夜にならないと来ないとは理解しているが、それを考慮してもただ待っているのは暇だな」
「そうですね。獲物が来るのをじっと待つのと、根気よく探し出すのも冒険者にとって必須の技術ですから今は我慢です。今回は夜になれば食料を求めて、畑に来ますからそれまで待機ですな」
「そうだよな。明るかったら本でも読めるのだが、こうも暗くなっては本も読めない」
アランは自身の手に視線を落とした。
白い肌が徐々に黒色に侵食されていくのが見えた。
アランは自身の肌の色が変化していくのを見て、ある重大な事を思い出した。
「そう、夜だ!」
アランの大声に真田の表情には驚きの色が示されていた。
「どうしたのですか、いきなり叫んで。夜がどうかしたのですか」
「夜だよ、夜。光がない時間帯だ。グランドゥセールが来たとしても、俺には確認する術も移動する事も出来ない。かと言ってランプなんて用意していたら、ランプの光を警戒してこっちに来ない可能性が出てくるな。‥‥‥一体どうしたらいいんだ」
二進も三進もいかない状況にアランは考えが纏まらずにいた。
言うまでも無く草食動物は基本的には臆病だ。
これは身体の構造からそうなのかもしれない。特に感覚器官の特徴の差が鮮明だろう。
獅子や虎のような肉食動物は、獲物となる動物を確実に捕獲せねばならない為、相手との距離感を正確につかむように目や耳が前方を向いている個体が殆どだ。
逆に鹿や馬のような草食動物は、天敵である肉食動物からいち速く逃れ無いといけないので、発見しやすいように目と耳が顔の端に付いている個体が殆どだ。
この両眼視によって視野角300度以上の視界が確保され、例え食事中であっても近付いて来る個体の判別を可能としている。
言うなれば草食動物達は食事中であったとしても気が抜けない状態であるからにして、生き残る為には必然的に臆病とならざる得ない。
ではそんな臆病な動物が暗闇の中、不自然に光る場所を見たらどうなるだろうか。
どうする事も出来ずに唸るアランに真田は右手に填めていた黒の指輪を外し、
「アランさん、この指輪を填めて下さい」
アランの手の平に置いた。
アランは周囲の光景と同化しそうなまでの黒の指輪をまじまじと見ていた。
「サナダ。これ一体なんだ」
「それは夜や洞窟といった暗闇の中でも、填めた装着者の視界を昼間のように明るく見せる指輪型の魔法工芸品です。私は夜目が利きますので、アランさん使って下さい」
アランはもう何が起きているのか理解を放棄したのか、呆れ果てていた。
「もう今日は一体何なのよ。全く知らない魔術に出会えば、どう考えても一介の冒険者が持っているのは不自然すぎる魔法工芸品を見るなんて、幸運な日だなと言えばいいの?」
「そう思えばいいんじゃないですか。その黒の指輪は闇の精霊オプスキュリテから貰ったものだから、結構な貴重品ですよ」
思わぬ大物の名前の登場にアランは思わず噴きそうになった。
「オプスキュリテって、世界の根幹の一柱である大精霊であるオプスキュリテ様の事なの!?」
「そう本人とマリアンヌが言ってから、間違いないと思いますよ」
「そ、そうなの」
普段の男言葉を忘れて女言葉になっている事に気付かない程、アランの情報処理能力はパンク寸前にまで追い込まれていた。
アランが右人差し指に填めると多少の隙間があったが、自動的に指輪が縮み指にぴったりと填まった。
そしてアランは自身の変化に気付いた。
先程まで手の輪郭があやふやだった筈なのだが、光が一番強い夏の昼間に手を見ているかのように手の輪郭がはっきりとしていた。
心臓を鷲掴みされたかのように驚くアランは周囲を見渡した。
手と同じように目の前に広がる様々な農作物を植えている畑や農業用水の川が先程と同じように見えていた。
真田は心ここにあらずといった様子のアランを我に戻すかのように呟き始めた。
「そのように暗闇の中でもはっきりと見える機能の他に、装着者はオプスキュリテの加護を受け、例え闇の適性が無くとも闇系統のあらゆる魔術を行使出来る上に無効化する事が出来ます」
「何でそんな国宝級の魔法工芸品をお前が持っているの? はっきり言ってランクアハトのお前が持っているなんておかしいわ。‥‥‥まさか、どっかから盗んで来たとか」
真田はなんでだよと少し呆れた顔をした。
「朝の時に言った指名依頼の時にオプスキュリテから貰ったのですよ。依頼を解決するには、囚われたオプスキュリテを解放させないといけないかった。なので私がオプスキュリテを自由にし、お礼として貰ったのです」
「ちょっと待って。大精霊であるオプスキュリテ様を囚われて、それを解放した!? 一体どんな指名依頼なのよ!? 間違ってもランクアハトの冒険者では無く、最高位のランクアインスが‥‥‥」
「シッ! 何かが来たようです」
真田は自身の警戒網に何かが引っ掛かったのを感じ取り、アランの口を強引に手で塞いだ。
真田とアランが掛け合いしていたら、何時の間周囲はすっかり暗くなっていた。
今夜は新月なのか。月明りは無く、夜空には宝石のように輝く星が無数に点在していた。
この国の人々は基本的には、日が出てから仕事を始め日が落ちる前までに家に帰るという生活スタイルを貫いているので、野外の夜を歩く事は滅多に無い。あるとしたら何かしらの理由で村か街に居られなくなったか、冒険者か夜盗、魔物の類でしかない。
真田は相手に気取られないように警戒網を大気と同じまでに薄め、それと同時に見えざる手で引っ掛かった物体の細部まで確認するかのようにした。
「(あれがグランドゥセールか。数は‥‥‥8。周囲を気にしながらも明確な意思を持って、真っ直ぐ畑の方へと移動しているな。‥‥‥という事は、今から食事の時間か)」
真田は気配を殺し、じっと目の前を移動するグランドゥセールを見つめていた。
グランドゥセール。鹿系の魔物だ。
姿形は一般的な鹿と同じ、黒い目に全体的にライトブラウンの毛並に腹の部分は白い毛並に覆われ、尻尾は綿を寄せ集めたかのような白い球体だ。
一番の特徴は頭部に生える角だ。
通常の鹿の角は太い枝で出来ているかのような太さだが、グランドゥセールの角は厚い木の板で出来ているかのような太さだ。刺されば脆弱な人間だったら一溜りも無い。
角は炎を木の彫刻で表したかのように、周囲にその存在感を見せつけていた。
角を支える体格も通常の鹿よりも一回り大きくがっしりとしており、足回りの筋肉は浮かび上がっているほどだ。
アランはいきなりの事に驚いていたが、真田の様子からただ事では無いと感じ、口を塞がれたまま事の経緯を息を殺して黙って見ていた。
落ち着きを取り戻しアランは手を静かに除けると、真田にしか聞こえない小声で独り言のように呟いた。
「あれはオスの群れだな」
「オスの群れですか」
真田もアランに倣い聞こえるか聞こえないかのギリギリの声量で返事をした。
「ああ。グランドゥセールのオスにはあのような立派な角があるが、メスには全く無いんだ。だから、貴族達がする狩猟にはグランドゥセールのオスが人気があるんだ。何せあの立派な角があるからな、人に自慢するには充分だろ」
「ほお、そうなんですか。よくそんな事を知っていますね、私と同じ平民なのに」
「えっ? ああ、その‥‥‥」
夜の帳が下りていてもわかる程にアランの目は泳いでいた。
政治家が政治家生命を自ら断つかのような言ってはいけない発言をしてしまったかのように、アランは気が動転して次の言葉が紡げないでいた。
真田は不審がる訳では無く、子供の小さなイタズラを発見した親のような優しい微笑みを浮かべた。
真田は変に追及する事も無いだろうと視線を上空へと向けた。
グランドゥセールから気付かれない程の上空にアウクシリアを出現させると、ディムミーレスを発動させた。
明らかに星の光とは違う淡い光の中から、人の輪郭をした物体が次々と成形されていっていた。
アランに見せた時よりも練り込む魔力量を増大させ、その個体の1対1体の密度をメアリー救出の時と同程度にした。その数は、現れたグランドゥセールと同数。
だが、個体としてのスペックは天と地の然程あった。
重さを持った分身たちは、重力に引っ張られ当然のように地面へと落ちて行った。
グランドゥセールから離れた場所に、音も無く次々と着地していく分身たちを真田は満足気に見て、魔力の繋がりを利用して扇央状に広がるように指示をした。
分身たちが配置に付いたのを確認すると、真田はアランの方へと向いた。
「アランさん。準備が整いましたので、グランドゥセールの捕獲をしましょう」
「おっ、おお、そうか。‥‥‥では依頼を完遂しに行くぞ」
我に返ったアランは真田が何時の間に準備を終えたのか気になったが、依頼の獲物が姿を現している以上、気取られて逃げていくのだけは避けたかったので何も言わなかった。
真田は周囲を気にしながら畑に近付こうとしているグランドゥセールから少し離れた真正面の場所を指し。
「あそこに移動しましょ。そしてグランドゥセールに向かって、全速力で行きましょ」
「その時は大声出した方が良いのか」
「それは要らないでしょ。得体も知れない不審な物体が駆け寄ってくるのですから、驚いて向こう側から逃げてくれますよ」
「それもそうだな。‥‥‥では、行こうか」
アランは頷き合うと真田は、指定したポイントへと急いだ。
指定のポイントに付いた真田は、うつ伏せの状態で今まさに畑へと迫ろうとしているグランドゥセールを見つめていた。
そして隣で同じようにうつ伏せになっているアランに聞こえる程の小声で
「さて。着きましたので、突撃の合図を宜しくお願いします、アランさん」
「ああ」
やや緊張した声でアランは短く返答した。
グランドゥセールが臆病で大人しいとはいえ魔物だ。
何かの拍子で凶暴になって、あの角で大怪我を負う可能性だって考えられる。
どんなものだろうと油断なく対処する、それがアランにとっての信念だ。
アランは自身を落ち着かせるように深呼吸をし、黒の指輪の効果によってはっきりと見えるグランドゥセールの群れを真っ直ぐ見据え、
「行くぞっ」
アランは自身を奮い立たせるかのように短くはっきりとした合図を出した。
真田たちは立ち上がりながら、グランドゥセールの方へと駆けだした。
突然の物音に文字通りに動く事が出来ない程までに驚くグランドゥセールは、黒い目で呆然とした様子で見ていた。
1頭のグランドゥセールが防衛本能で迫り来る2つの物体は危険だと判断したのか、来た道を駆けるように戻りだした。他のグランドゥセールもそれに追従するかのように来た道を駆けるように戻り始めた。
自分達に逃げ道など、疾っくに無い事を知らずに。
「(掛かった!!)」
内心ほくそ笑む真田は逃げていくグランドゥセールを確認すると、魔力の繋がりを通して全ての分身たちにグランドゥセールを捕まえるように指示を出した。
半透明の分身たちは命令を忠実に行おうと、疾風のような速さで一斉に駆け出した。
逃げるグランドゥセールの内の6体は何かに当たったと思った。
そして次の瞬間。
硬く食用には適さない草が、自分の胴体に当たっている事に気付いた。
そこで漸く自分が倒れている事に気付いた。
何とか立ち上がろうとするグランドゥセールの上には、真田の分身たちがグランドゥセールを押さえつけるように圧し掛かっていた。
分身たちは一瞬で角を持つと、首の骨を折るのも厭わない程の強引さで地面に叩き付けた。
倒された6体は甲高い鳴き声を上げながら、拘束を解こうとジタバタと暴れるが、分身たちの力が単純に勝っているのか、立ち上がれる気配は微塵も無かった。
運よく分身たちの魔の手から逃れられた他の2頭は、仲間が居ない事に気付き立ち止まって振り返った。
しかし自分達ではどうにもならない事態と判断したのか、森の方へと逃げるように駆けて行った。
歩いて来たアランは捕獲されているグランドゥセールを、多少の戸惑いを感じながら眺めていた。
「(確かに捕獲方法はサナダに一任したし、楽なのは良いけど。こんなあっさりとした幕切れでいいものなの?)」
別に切った張ったのバイオレンス系の展開をアランは望んでは無いが、ここまで肩透かしな展開になるとチームメイトとしての存在意義が、根本的に揺らぎそうになった。
少し考えそうになったが、変な思考が蔓延しそうになるのでアランは全力でその考えを放棄した。
真田は特に感情を込める事無く、無意識に呼吸をするかのような自然に刀を抜いた。
近くに居た分身は抑えていたグランドゥセールの首を少し持ち上げた。
真田は今から咎人を処刑する執行人のように刀を天に掲げ、目にも止まらぬ速さでグランドゥセールの首元に振り下ろした。
然したる音は無かった。
ただ。
あるとすれば、グランドゥセールの首が地面に落ちた鈍い音ぐらいだ。
横たわるグランドゥセールの首は何が起きたのか理解出来ず、黒い瞳を周囲を確認するかのように動かしていた。首と胴体の切断面からは真っ赤な血が絶え間なく流れていた。
真田は他の5体を同じように分身たちに持ち上げさせ、首を切断した。
そして分身たちにグランドゥセールの胴体を持ち上げさせると、解体しやすいように血抜きを始めた。赤い血がボトボトと絶え間なく、地面を赤く染めていた。
真田は刀を鞘に戻し、少し離れた場所に腰を下ろした。
アランは目の前の光景に度肝を抜かれつつ、真田の隣に座りながら。
「ご苦労様、取り敢えず依頼はこれで完了だな。後は討伐証明に角か足辺りを持って行けばいいだろう」
聞いていて真田の脳裏には1つの疑問が浮かんだ。
「そう言えば、今は閉門時間じゃないですか。どうやって中に入るんですか。まさか朝まで待っていなければいけないのですか」
「ああ、そうだったな。閉門しているから、朝の開門時間まで開く事は無いんだよな。俺も依頼の時に長引いてしまって閉門時間を過ぎた事があったな。その時は外で野宿をしたな」
真田は何で重大な事を言わないんだよと叫びそうになったが、寸前の所で押し止まった。
此処でアランと口論しても、事態の打開には繋がらず真田はどうするべきか思考を廻らせた。
真田としては野宿は慣れているので問題は無いのだが、血抜きをしているグランドゥセールの状態が気になっていた。
「(今の時間から解体作業の完了するまでは、どう見積っても半日近く掛かるな。肉に居る寄生虫は加熱処理すれば問題ないが、絶対に腐るだろ。折角の鹿肉だ。良い状態で食べたいと思うのが当然だろ!!)」
真田は初めて自分で捕った獲物の肉の期待度が加味して、少し暴走気味だった。
「(アウクシリアや素手で壁登りをして、巡回中の騎士隊に見つかるのは面倒だし。更に此処はこの国の中枢部だから、転移魔術を阻害する術式を掛けられていても不自然では無いしな。大量の氷を敷き詰めて冷やす手段もあるが、あれは劣化の速度を遅くするだけであって、劣化そのものを防ぐ訳では無い。‥‥‥だとすると、最終手段を取らざる得ないな)」
真田は重大な会議に臨むかのような真剣な眼差しとなり。
「(物体の時間を停止させる、これしかない!! ‥‥‥時間を停止させれば、熟成も劣化も起きる事無く、そのままの状態が次に時間を動かす時まで保っている。そうすれば肉の劣化は最小限にまで抑えられる)」
展望が開けて来た事に真田は嬉しそうにニヤニヤと笑っていた。
隣に座るアランは、コロコロと表情が変わる真田をドン引きした表情で見ていた。
それから約1時間後、周囲は黒に染まり夜の帳は完全に落ちきってた。
真田は切断面から血が落ちてこない事を確認すると、分身たちに手伝って貰いながらグランドゥセールの首と胴体を其々1つずつ、麻の縄で纏めた。
グランドゥセールの首と胴体に翳すように手を伸ばし、独り言のように呟き。
「テンプスディシニ」
するとグランドゥセールの首と胴体を囲むように幾何学模様の魔法陣が展開された。
そして数秒後、魔法陣は何事も無かったかのように消え去って行った。
外見上では何も変わっていない筈なのに、見る者にどうしても拭い去れない違和感を感じさせていた。
事の経緯を見ていたアランは、おずおずといた表情で尋ねた。
「何をしたんだ、サナダ。何か見た事の無い魔法陣が出現したけど」
「ええ。グランドゥセールの肉の劣化を防ぐ為に、グランドゥセールだった物の時間を止めたのです。こうすればどんな事があっても腐る事は無いですから」
「ああ、そうなの‥‥‥」
今のアランにはそう答えるのが限度だった。
真田は雑談するかのような気軽さで言っているが、歴史に名を高位の術者がするような行為そのものだった。
アランは冒険者としての自分を支える何かが、揺れそうになったのを感じ取った。
「(サナダと自分が立っている場所が違うとは分かっていたけど、まさかここまで違うとは)」
ミノタウロスの大群の単独討伐で真田は規格外と痛感していたが、アランは改めて自分の認識が甘かった事を痛感した。
真田はグランドゥセールの首と胴体を亜空間に収納すると、一区切りを入れるようにをした。
「アランさんはどうしますか。開門時間まで時間がありますから周囲の森の探索でもしますか」
「流石にそれをする気力は無い。ここは素直に門の前で開門時間を待つ事にする」
「そうですか。では行きましょうか」
真田たちは出てきた門へと戻って行った。
「開門ぉぉぉぉぉん!!」
太陽が完全に地平線から顔を出した頃、野太い大声と共に鉄製の巨大な門はその口を開け始めた。
それと同時に門の前で待っていた真田たちを含む様々な人々が腰を上げ始めた。
先頭に居る真田たちはそそくさと門の中に入り、役人にギルトカードを見せると冒険者特典で半額の100フラルを払って、街の中へと入って行った。
街へと繰り出した真田は強張った体を解すかのように肩を回していた。
「やはり地面は痛いし、寝るのには適してないですね」
「それはそうだろ。地面が寝るのに適していたら、皆が地面に寝る事になるだろな」
アランも真田と同様に強張った体を解そうと、背筋を伸ばしていた。
まだ早朝という事もあってか、大通りを通る人の数は疎らだ。
それから十数分後、真田たちは討伐証明の受付へと到着した。
真田は他人に見られないようにすぐさま、アウクシリアとグランドゥセールの首と胴体を亜空間から取り出した。
そして手を翳し誰にも聞こえないような小声で。
「テンプスムーヴ」
グランドゥセールの首と胴体を囲むように魔法陣が数秒間、展開された。
魔法陣が消えると今までの絶大な違和感は消え去り、自然な雰囲気を取り戻していた。
アランが机の上のベルを鳴らすと、建物の中から足音が聞こえて来た。
「はいはい、直ぐに行くから待って‥‥‥、またお前達か、アラン」
「はい。今日もです」
建物から出て来たのはカースだった。
カースはアランから渡された依頼書に視線を落とした。
「うむ。グランドゥセールの討伐依頼か。ちゃんと6体あるんだろうな」
「はい、それは勿論」
アランは真田から渡されたグランドゥセールの首を机の上に置いた。
カースは証明用の首をまるで鑑定するかのようにジロジロと見ていた。
「特に傷も無く、綺麗なものだな。抵抗される前に捕まえて、そのまま首を切断したようだな。しかも何処も腐食していないな。まるで今さっき、捕まえて来たかのようだな」
「あはははははは、そうですか。それは良かったです」
カースの率直な感想にアランは乾いた笑い声を上げるばかりだった。
腐食を防ぐ為に時を止めていたんですよと言えるはずも無く、誤魔化すしかなかった。
「アランさん」
「うん? ‥‥‥あっ、そうだったな。カースさん、グランドゥセールの胴体を持ってきましたので、解体作業をお願いします」
「解体か、ちょっと待ってくれ」
カースは出てきた扉を開けると。
「おぉい、ジュリアス。仕事だぜ」
カースからの呼び声に応えたのは、カースより骨格が少し逞しい男性だった。
制服のサイズがあってないのか、見るからに窮屈そうだ。
「どれだ。俺に解体して欲しい獲物は」
「こ、これです」
面食らったアランは少し言い淀んで、横たわるグランドゥセールの胴体を指した。
ジュリアスは置かれているグランドゥセールの胴体を、骨董品を鑑定する鑑定士のような厳しい目で見ていた。
「ほう、ちゃんと血抜きをしているな。ここ最近、血抜きを面倒臭がって中途半端で終わらせる奴らが増えているんだよな。血抜きは面倒だが、解体する際には血抜きをしていないと邪魔になるから、解体する奴の事も考えて欲しいもんだ」
モラルの低下に嘆くジュリアスに、真田たちはなんて答えていいか分からず、曖昧な表情をするばかりだった。
「お前達は捕獲が上手いんだな。傷つきやすい毛皮に特に傷は見られないな。これだと毛皮を服飾店に持って行ってたら、良い値で売れるぞ」
「そ、そうですか。ありがとうございます」
違うんですとは言えず、アランは動揺していた。
「これなら楽に解体出来るな。解体作業の内容はどうする、肉は当然として骨、内臓、毛皮、角はどうしたらいい。角は煎じれば薬となるらしいぞ」
「肉と角は此方に下さい。後の骨と内臓と毛皮の処分はそちらに‥‥‥」
「毛皮は要ります。毛皮も此方の方で引き取ります!!」
真田の突然の乱入にアランは目を白黒していた。
普段はこのような事をするような人物では無いので、純粋に驚いていた。
「では肉と角と毛皮をお前達に渡して、骨と内臓は此方で処分するんだな。角は直ぐに渡せるが、肉を渡す時に一緒に渡そう。その方が待つ時に邪魔にならなくていいだろ。‥‥‥毛皮は今の状態のままでは腐ってしまうから、腐らないように毛皮に施す特殊加工にどうしても時間が掛かるから、4日は待ってくれ」
「はい、わかりました。‥‥‥肉は何時頃取りに来ればいいですか」
「そうだな今日1日は見ていてくれ。今日はもう1人の奴が休みで、俺1人でしなければならないから、どうしてもな。‥‥‥あと、解体料金だが1頭につき1000フラルで、6頭だから6000フラル。それに毛皮の特殊加工に4000フラル。合計で1万フラルだな」
真田がチームの活動費が入っている袋からソリン小金貨を取り出し、ジュリアスに渡した。
「では、解体の方を宜しくお願いします。また明日、取りに来ます」
「そうしてくれ」
話が終わった見計らったのか、カースが自分のサインを書いた依頼書をアランに渡した。
アランはそれを確認すると、真田を伴って受付カウンターがある1階ロビーへと向かった。
まだ人が疎らな1階ロビーに到着したアランは、依頼書を持って空いていた受付へに行った。
依頼書を受付嬢へと提出すると、淡々とし手際よく事務作業をしていた。
全てが終わり、受付嬢から褒賞金9万フラルを手にしたアランは、椅子に座って待っていた真田へと近づいた。
受け取りは平等に分配性なので真田とアランは其々3万フラルを貰い、チームの活動費3万フラルと分けられる筈なのだが、何故かアランはソリン小金貨9枚を全て真田に渡した。
渡された真田はアランの意図が理解出来ず、表情に驚きの色を隠せなかった。
アランは真田の戸惑いを払拭させるようにはっきりとした口調で。
「今回の依頼では俺は何もしなかったから、褒賞金は受け取らない」
「そうは言いましても、アランさんはちゃんと参加したのですから、褒賞金を受け取る権利はありますよ」
アランは真田の言葉を否定するかのように首を横に振った。
「俺がした事と言えば、ただ突撃の合図を言うだけだった。他の事は全てサナダ、お前がやった事だ。だから今回の褒賞金を受け取るのはお前だけだ」
「でも‥‥‥」
「いいんだ、俺なりのけじめと考えてくれ。もしこんな事でお前と同様に褒賞金を受け取っていたら、確実に俺は自分の剣を振れなくなる。だから今回は受け取らないんだ」
それは自身の思いを伝えるのには十分にまで芯の通った口調だった。
自分の剣に誇りがあるから。
その誇りを自身の手で穢したくないから、褒賞金を受け取らない。
他人が聞けば愚かしいやそんな事を一々気にするなと言うだろう。
だけれどもそれでは駄目なんだと、アランは確信を持って言える。
真田に申し訳ないと気持ちは勿論ある。
だけれどもそれ以上に此処で受け取ってしまえば、確実に前と同じ気持ちで剣を振れないと思っているからだ。
そんなアランの葛藤を知ってか知らぬか定かでは無いが、真田は嬉しそうに微笑んでいた。
まるで暫く合っていなかった弟子が一皮剝けていたのを見た師匠のような思いを抱いた。
しかし、真田はそんな事を思うのは烏滸がましいと思ったのかその思いを振り払うかのように首を振った。
「さて、今から今日の分の依頼をこなしましょうか」
「えっ!? ツキノクマに帰って寝るんじゃないのか。俺はさっさと帰って寝たいんだが!!」
アランの心の底からの叫びは、当然のように真田には通じなかった。
「そんな事をしたら、昼夜逆転の生活になってしましますよ。そんな事をしたら、寝不足以上の身体の不調が起きてしまいます。ですので今は眠たいのを我慢して、依頼を頑張りましょう!!」
アランは露骨に嫌そう顔をするが、真田は馬耳東風といった様子で依頼書が貼られているクエストボードへ行った。
アランは真田を1人に出来ないので、渋々といった様子で真田の後に付いて行った。
その顔が少し嬉しそうな顔をしたのは、アラン本人も周囲の人々も気付く事は無かった。
誤字脱字がありましたら、御指摘の方を宜しくお願いします。




