第45話 オリエンス教会 フェイズ4
今回2話連続投稿です。
途中で寄り道した事で予想以上に教会に戻って来るのが遅くなり、真田は急いで駆け足で戻って来た。
「戻りましたよ」
そう言いながら教会の扉を開けると、奥の部屋から子供達が此方を見ている事に気付いた。
真田が声をかける前に子供達が奥に引っ込むと、お兄ちゃんが帰ってきたよお姉ちゃん、と声が聞こえた。
首を傾げる真田が奥の部屋へと歩みを進めると、クリューベが出て来た。
「サナダさん!」
駆けて来るクリューベの表情は、心配で心配でたまらないといったものだ。
クリューベにそんな表情をさせるような事をしていない真田は、ますます首を傾げるばかりだった。
「大丈夫ですか、サナダさん」
「? 大丈夫とはどういう意味ですか」
「私は買い物に行っていて直接見ていないのですが、子供達がサナダさんが教会から出て少しした後にあの人達が来たのを見たのです。子供達が戻ってきたサナダさんがあの人達と一緒にどっかに行ってしまったと言ったので、どうされたのかと。お強いサナダさんだから心配は無いと思ったのですが、それでも心配になってしまって」
今に泣きそうな表情で弦が震えるかのようなか細い声に真田は納得した。
それと同時に自分の安易な行動に収拾がつかない程の自己嫌悪に駆られた。
「(迂闊だった。彼女があいつらから受けた仕打ちを考えれば、知り合いが一緒に行動するのを見れば、どう思うかは火を見るよりも明らかだ。‥‥‥こういう考えなしの行動をどうにかしたいな)」
真田はどうしたものかと頭を悩ませ。
「心配してくれるのは嬉しいですが、私に関しては心配は無用ですよ。私は心配するだけの意味を為さないのですから。それよりも子供達の事を考えてあげてください」
雰囲気を和ませさせようと言ったが、功を為す事は無かった。
寧ろクリューベの表情は硬くなり、ムッとしていた。
「なんでそんな事を言うのですか。サナダさんがお強いのは解りますが、それでも何かあれば心配するのが普通です。サナダさんは私達にとって大切なお人です。‥‥‥ですから、もう二度とそんな事を言わないで下さい。いいですね」
クリューベの優しい物言いだが悪戯した子供を叱る親のように言い聞かせる言葉だった。
真田は最初は鳩が豆鉄砲を食ったようにきょとんとしていたが、次第に表情が崩れ始め、頭を掻いて苦笑いをした。
「すみません。以後気を付けます」
「気を付けて下さい」
真田は軽く頭を下げ、クリューベは両手を腰に当て背を少し反らして偉ぶった態度をとった。
「「ふふふ」」
真田とクリューベは状況の可笑しさに耐え切れず、どちらからともなく笑い出した。
次第にそれは大きくなり、内部どころか併設されている孤児院にまで響き渡った。
何事かと様子を見に来た子供達は、笑っている真田とクリューベに顔を見合わせ肩を竦めるばかりだった。
「ところで、椅子の補充の方はどうですか」
「一応、15個分の椅子の材料となる木材を木工所に注文してきました。‥‥‥そして取り敢えず今回は2個分の材料を買って来ました」
真田はノーシェバッカスを発動させ、紐で括り付け買って来た木材を全て出した。
クリューベは何時の間にか来ている子供達と一緒に木材を感触を確かめるように触っていた。
「すみません。何から何までサナダさんに任せてしまい。本来なら私がしなければいけないのに」
「気にしないで下さい。私が好きでしている事ですから。‥‥‥ああそれと椅子の組み立ては明日からでいいですか。今日はもう遅いですし」
「それは私としては別に構いませんが。サナダさんは大丈夫なのですか? 冒険者としての仕事があるのでは」
「それもそうですね。休んでいる間は無収入となるもんな」
真田は考え込むように目を閉じて顎を手で擦った。
「午前中は椅子の組み立てに充てて、午後から冒険者としての仕事をするか。そのまた逆か。‥‥‥どちらがいいですか。其方の都合に合わせて動きますが」
「それこそサナダさんがしやすい方でいいですよ。週末にする子供達による聖歌の合唱以外の行事は無いですから」
「それなら早くしないといけませんね。子供達の聖歌の合唱を楽しみにしている人達が居ますから、注文した木材が手に入り次第、早急に組み立てるという方向性で動いた方が賢明ですね」
「そんなに急がなくても大丈夫ですよ。ここ2週間はお休みしていましたから」
事情を知っている真田はそこで何でとは言わずに。
「それこそ早くしなければなりませんよ。する筈だったものが休みになっている今の状態に不安を覚えている信者の人達が居る筈です。それを払拭させるためにも、早期の再開は必須です」
「そ、そうなのですか。で、では宜しくお願いします」
部外者の真田の勢いに呑み込まれて、クリューベは思わず頼んでしまった。
「先程言ったように今日はもう遅いので、組み立てるのは明日にします。‥‥‥ではシスター、子供達。また明日」
「あ、あの!」
真田が外に出ようと身を翻しかけたが、クリューベの若干の迷いが見られるが、それでいて強い意志が感じられる声に足を止めた。
「晩御飯はどうしますか。良ければ此方で用意しますが」
「ああ、お気遣い感謝します。ですが、泊まっている宿に晩御飯の用意されていますので、今回は申し訳ないですが」
「い、いえ。いいんです、私が急に言ったばかりに」
「晩御飯はまた何時の日か。‥‥‥それではシスター、子供達。お休みなさい」
「「お兄ちゃん、お休み!!」」
真田は子供達の挨拶を背に受けて、教会から出て行った。
半ば習慣化しているメアリーとの行き帰りする為に真田は宿屋には向かわず、自宅へと帰る人混みの流れを逆らうかのようにギルト本部に足を向けていた。
「(此方から切り出さないと、彼女からは言い出しにくいだろうな。問題なのはどう切り出すかだな。面倒になったからと言えば簡単だが、それだと彼女の心証が悪くなる可能性が大だな。彼女はクエストの受付嬢だ。円滑な生活を維持する一因に彼女の心証が必要不可欠だ。その上でどうするかだよな。‥‥‥もう少しボキャブラリーがあれば、簡単に回避出来るのだろうな)」
真田は自分ではどうしようもない事に思考の空回りを起こしながらも、人とぶつからないように歩いていた。
少しすると、真田はある気配を感じ取った。
真田は覚られないよう自然に視線を動かすと、見知った人物が歩いているのを視界に捉えた。
「(‥‥‥アイツは確か、アリング商会の元締め)」
高価そうな装飾品で着飾っている如何にも成金といった様相で、ゲールノートは歩いていた。
無表情を装っているが、楽しくて仕方がないのか口元が微妙に歪んでいた。
「(負債の回収か。それにしては回収役の男達を引き連れていないのは不自然だな)」
真田がゲールノートの動向にあれこれと考えを廻らすが、その前に真田の視界から消えるように路地へと入って行った。
少し経つと真田の知覚範囲から離れ、真田はゲールノートを完全にロストした。
「なんだったんだ、あれは」
その呟きに答えられる者はおらず、真田もこれ以上は時間を無駄には出来ないとその場から立ち去った。
翌日。
昨日のような風は無いが、太陽の日を遮るかのようなどんよりとした厚い雲が空を覆っていた。
結局、メアリーとの行き帰りの止める話が出来なかった真田は、今日もメアリーと共にギルト本部と行った。
ギルト本部でメアリーと別れると真田はそのままの足で、オリエンス教会へと足を向けていた。
「(今日はまずオリエンス教会に行って、午前中に何とか椅子を2つ組み上げ、午後はクエストをするか)」
真田が空を見ながらぼんやりと計画を立てていると、ふと足を止めた。
眠たそうなまどろんだ目は厳しい目に変わり、周囲を覗うかのように見渡した。
しかし真田の視界と間合いには自身に敵対するような人物が居るようには感じられなかった。
真田は行き交う人々の事を一切考慮せずにその場で顎に手を当てて考える仕草をした。
数瞬後、何を思ったのか回れ右をして先程メアリーを送り届けたアヴェドギルトに向かった。
アヴェドギルトの1階ホールはまだ時間帯が早い所為なのか、冒険者の数は疎らで食事スーペスで座っているのが殆どだった。
真田はすたすたとまるで競歩の選手のような速さで、依頼されたクエストが掲出されている掲示板の前に来た。
真田は自分のランクであるアハトのスーペスにある依頼書を確認した。
そこには真田がいつもしている雑用のようなクエスト、近くの平原や森に住まう簡単なモンスターの討伐と魔術や薬剤等の触媒の採取のクエストが貼られていた。
真田はまるで親の仇を見ているかのような厳しい目で依頼書を見ていた。
すると、ある1枚の依頼書を抜き取った。
真田はその依頼書を持って、いつものようにギルトカードと共に受付カウンターに提出した。
「えーと、ノーウェイの森でのネーロウルフ5匹の討伐ですね」
メアリーと同じギルトの青い制服を着ている茶髪のセミロングでピョンと茶色のウサギ耳を立てている兎人である受付嬢は、決められた手順で事務手続きをしていた。
少しすると、受付嬢は依頼書と真田のギルトカードを真田へと帰した。
「今回のネーロウルフ5匹の討伐はアヴェドギルトが発注したものなので、討伐が終わりましたら裏手の方へと行き、事務員に依頼書と討伐の証明を見せて下さい。証明は左右どちらかの片足が5本揃っている事となりますのでご注意下さい。尚、ネーロウルフの残りの部位に関してはギルトは一切関知しませんので、そのまま森に放置するか肉や毛皮などの部位を店に売るかは冒険者の判断に任せます。‥‥‥以上で説明を終わりますが、何か質問はございますか」
「何もありません」
「そうですか。‥‥‥では、依頼頑張ってきてくださいね」
受付嬢の感じのいい営業スマイルを真田は背に受けて、一路初心者講習の場所となったノーウェイの森へと向かった。
真田は眼前に広がる草原の先に広がる森を見据え、速いとも遅いとも言えないような歩行速度で森へと向かった。
それはまるで何かに自分の存在を知らしめているかのように見えた。
ある程度の視界が開けているノーウェイの森へと入った真田は森の奥へと、まるで自分の庭かのように迷いなく進んでいった。
数十分後、森の中心部付近に到着した真田は足を止めた。
中心部はやはりというべきか、人の手が全くと言っていい程入っておらず、地面には真田の脛まで伸びた雑草が繁茂し、樹木の葉で日光を遮り全体的に薄暗かった。
立ち尽くす真田の耳には、時折吹く風に揺られて葉の波音が聞こえるばかりで、この世には自分1人しか居ないように錯覚させるようだった。
だが。
「いい加減に出てきたらどうだ」
真田は感情など何も無い平坦な声で言った。
しかし返答は無く、真田の耳に聞こえるのは葉同士が擦れあう音ばかりだった。
更に真田は続けた。
「早朝から俺の事を見ていたのはお前だろ。人が居る所じゃ話せないと思って、こうやって人気が無い所まで来たのだ。いい加減、隠れるのも飽きただろ。姿を見せたらどうだ」
しかし真田の問いかけに答える者はおらず、周囲は静寂に包まれているばかりだった。
他に人が居れば頭おかしくなったのかと怪訝な視線で見られるのは間違いない事なのだが、真田には確信に近い思いがあった。
真田は露骨に溜め息を吐くと。
「死んでも知らんぞ」
言い終わると同時に真田の姿は一瞬にして消えた。
そして。
次に真田の瞳に映ったのは、太い枝に乗った信じられないものを見たかのような驚きに満ちた男の横顔だった。
真田がその男の顔に向かって体重を乗せた右ストレートを撃ち放つが、男は新体操選手のように上体を逸らし真田の拳を避けた。
真田の攻撃は男の鼻先を掠め、子供の体格と同じ位の太さの幹に当たった。
その瞬間。ドッカァァァアアアッン!!と、身体の芯を振るえさせるかのような爆発音が森全体に響き渡った。
その衝撃のあまり木の幹の上半分が他の樹を巻き込みながら、彼方へと飛んで行った。
真田の拳を避けた男は地面に音も無く綺麗に着地をしていた。
真田より頭一つ高いぐらいで歳は20代前半位、髪はショートの金髪。真田と同じような服の上からわかる程の贅肉など一切ない均整が取れた身体で、目や鼻立ちが整っており、何処かの新規気鋭の舞台役者かのように思わせる風貌だ。
それを打ち消すかのように他者を拒絶する氷のような冷え切った瞳、腰には約30cmの2本の短剣を差していた。
多少の既視感を感じながらも真田は、感心したかのような表情となった。
「ほう。手加減したとはいえ、不意打ちを避けるとは中々の腕前だな」
男は何も答えず、腰に帯刀していた2本の柄が茶色の短剣を抜き取り、少し重心を落とし構えた。
そう真田は別に討伐がしたくて依頼を受けたのでは無く、自分を監視する人物を誘い出す為であった。
魔物が跋扈する野外に出れば意識を真田に集中していたのを、ほんの少しだが周囲に気を回さなければいけない。もし監視する事に集中しすぎて、魔物の接近に許せばどうなるかは火を見るより明らかだった。
そこが真田の狙いだった。
ほんの数%の空白。
普段であれば気にする事が無い余白。
中々尻尾を掴ませなかった最大限にまで警戒されていた自分がつけ込むべき隙を真田はつき、確実にまで掴んだのだ。
そして自分の土俵へ引きづり出したのだ。
「一応、聞いておく。何故俺を監視していた」
「‥‥‥」
男は黙ったまま、睨み付け短剣を構えていた。
予想通りの事だったのか真田は別に感情の波を揺らす事無く、淡々としていた。
「まあいい。お前を再起不能にまで追い込んで、聞き出せばいい」
真田が男に向かって飛びかかろうとした。
その瞬間だった。
「そう、なら死んで」
「‥‥‥はっ?」
背後から聞こえた機械のように感情が無い女性の声に真田の思考は確実だが、一瞬停止した。
真田の背後には短剣を構える女性が居た。
女性は20代前半位で毛先が少しウェーブしているセミロングの金髪。先程の男性と同様に目や鼻立ちが整っており、これが真田と同じような麻の服では無く煌びやかな舞台衣装を着れば何処かの新進気鋭の舞台女優かと思わせていた。
女性も例外なく氷のような無機質な瞳に手と腰に其々1本ずつ茶色の短剣を持っていた。
真田が振り向く前に女性は持っている短剣を心臓へと突き刺そうと、風を引き裂くような速さで放った。
真田は背後を取られるという失態に舌打ちをしながら、右足を軸にしてフィギュアスケート選手のように回転をした。
そして視界の端に映る女性の顔に裏拳を叩き込もうと、拳に力を込め弦を最大限にまで引っ張られた弓矢のような速さで裏拳を放った。
しかし、真田の裏拳が当たる寸前。
女性は音も無く消え去り、真田の裏拳は虚しく空を切った。
真田は驚きのあまり目を皿にして固まってしまった。
「(馬鹿なっ!? 剣術に比べて徒手空拳は格段に下がるとはいえ、それなりの相手になら対抗しえるだけの自信はあるのに。‥‥‥それに俺の警戒範囲を一瞬にして脱するとは。こりゃあ、相手は相当な実力者だな。これは気を引き締めないといけないな)」
真田は相手が予想以上の実力者に内心ひそかに喜んだ。
それと同時にある疑問が浮かび上がった。
「(捉えきれなかった奴が、なんで街で仕掛けて来なかったんだ? 仕掛けるタイミングは何度かあった筈だ)」
それは尤もな疑問だった。
真田は朝の習慣である帝都一周ランニングしている時から視線を感じていたのだ。
最初は気のせいかとあまり気にしなかったが、流石にその後に何度も視線を感じるようになれば、基本的に事なかれ主義の真田だろうと訝しげてしまう。
「(俺は何か居るかもしれないという程度の認識だったが、アイツ等は俺の事を早朝から捕捉していた筈だ。先程のように空間系の魔術を出来るのならば、何かしらのアクションはあってもいい筈。何故それをしなかった? ‥‥‥もしかして、しなかったではなくて出来なかったなのか?)」
真田は自身に降り注ぐ事態に対して、仮説を立てていた。
ここで真田はある事を失念していた。
そもそも何故、自分の背後を取られるという失態を起こしてしまったのかを。
真田は視界の端で男が2本の短剣で円を描くかのように動かしているのが嫌に目についた。
男がピタッと手を止め、その場で目にも止まらない速さで斬る動作をした。
その瞬間、真田の全身にぞわりと悪寒が走り、反射的にその場から飛び去った。
真田が飛び去ると同時に足場だった太い枝と樹木は、短剣から放たれた『何か』によって、積み木のブロックのように細かく切断された。
地面に着地した真田と男の間には表面が綺麗に切断された大量のブロック状の木材が地面に散乱していた。
真田は感嘆な表情を浮かべた。
「やるな。ではこれでどうだ。‥‥‥おりゃああぁぁぁ!!!」
真田は何を思ったのか近くにあった樹を拳で圧し折ると、倒れ掛かった樹を持って高く足のバネだけで飛び上がった。
直ぐに周りの木々より高い位置で止まった真田は、持っていた木の先端を男に向けた。
「この状況、君はどうするかね」
真田は足場なんてそもそも存在していない空中で、器用にボールを投げる投手の要領で、木を思いっきり投げつけた。
ヒュンッ!!と、空気を切り裂くかのような速さで、樹は男を目がけて走っていた。
高速で向かって来る樹を目の前にして男は、特に感情の波を揺らす事無く淡々と、樹諸共真田を切り刻むかのように短剣に魔力を込め、2本の短剣を力の限り振り下ろした。
短剣から放たれた見えない『何か』は、迷う事無く一直線に樹を切断して行き、真田を切り刻もうとその猛威を存分に震わしていた。
真田は樹が斬りこまれていくのを見て驚くのではなく、予定調和といった風に薄く笑い防御系魔術アイギスを静かに発動させた。
男から放たれた『何か』とアイギスが衝突したが、真田が傷つく事無く『何か』は霧のように霧散していった。
真田は地面に着地すると同時に斬りこまれた樹が、ドォォォオオオンッ!!と、腹部に響くかのような重低音を大音響で響かせた。
真田は目の前の樹を一瞥すると。
「凄いな。これ程の樹を綺麗に切断するとは。これは純粋にお前の腕前が良いのか。‥‥‥それともその短剣に込められた魔術が凄いのか。一体どちらなのだろうな」
男の眉毛が動揺したかのようにほんの少し動いたかのように見えたが、それも直ぐに奥に引っ込み無表情となった。
男の攻撃から逃げる寸前、真田は見逃さ無かった。
男が攻撃を放つ寸前、自身の魔力を短剣に流し込んだ事を。
「その短剣、魔法剣だろ。各属性の素質はあるが魔力が少ない所為で、魔術が使えない人間が魔術師に対抗し合えるように作った道具。剣の制作過程でその属性の鉱石を含ませる事で、その属性の魔術を行使出来るようになる。威力はその剣の鉱石の含有率に比例するけどな。‥‥‥切断面と体当たりをして得られたものから考えると風か。威力から逆算すると中級程度と考えるのが自然だな」
真田は事件現場に遭遇した探偵のように目の前の光景から仮説を立てていた。
真田は相手の攻撃を見極める為にあえて危険な空中へと飛んだのだ。
戦闘中に足場など無い空中に移動するなど、羽を持たない人間にとって死に行くようなもの。将棋でいえば桂馬や金といった囲いを無視して、王将が敵陣に単独で突入するかのような無謀な行い。
だからこそ真田は移動した。
獲物が自ら身動き取れない場所に移動した。それは狩人にとって絶好のタイミングだ。
必ず自分が1番信頼している技を繰り出してくると、真田は考えていた。それを分からせないように樹を投げるような真似をしてまで。
「剣の攻撃範囲を拡げるタイプでは無く、剣筋をそのまま相手にぶつけるタイプか。それならばお前の攻撃を見切って、その後にお前にこの拳をぶつければこの戦いは終わるな」
真田は挑発するかのようにニヤリと口元を大きく歪めた。
男は借金取りの男達のように簡単に怒りを表す事無く無表情のままだったが、真田達の周囲は明らかに緊張の度合いが急激に増していき、とてもではないが余人が割って入れる雰囲気では無かった。
男が真田の命を刈り取ろうと、短剣を構えようとしたその寸前だった。
「させると思っているの」
命を刈り取るのには十分すぎる冷徹な女性の声が真田の背後から聞こえた。
女性から見れば完璧なタイミングだった。
真田が相棒である男に気を取られ、自分に対して警戒の度合いが薄まっているのが肌で感じられた。
最初は失敗したが2度目の失敗は無い。
初撃が失敗した事はこれが最初では無い。自分より実力のある者達の時はそうだった。
微かな自分の気配を感じ取り襲撃を回避し、苦戦に持ち込まれた事があった。
そしてより慎重にそして確実な時を見計らって、対象の命を奪って来た。
今回もそうだ。
慎重且つ確実に殺す。
遊びなど一切無い冷徹な凶刃によって。
女性は未だ自分に無防備に背中を見せる真田の心臓を目指し、最大限にまで押さえつけられたバネのような速さで短剣を放とうとした、その時だった。
不意に女性の視界がぶれ、思考が空転した。
「(え!?)」
女性が何が起きているのか考えさせる間もなく、
「がはっ!!」
ハンマーで殴られたかのような衝撃に強制的に肺から息が出たかのような錯覚を覚えた。
後ろ姿を見ていた筈の真田を見上げているのをみて、ようやく女性は自分は地面に叩き付けたのだと認識した。
真田が後ろに立つ女性の衣服を右手で掴むと、そのまま強引に引っ張り地面に叩き付けたのだ。
真田は怯んだ女性が動かないように馬乗りになり、真田は芯から冷やすかのような冷たい声で呟いた。
「動くな」
その首には女性が腰に差していた抜き取った短剣を当てていた。
それを態々見せつけるかのように縦にして。
「魔術を発動してみろ。その首が飛ぶ事となるぞ」
真田の拘束から逃れようと抵抗していた女性はピタリと石像のように固まった。
それは女性だけでは無く、立っている男に同様だった。
男は女性が拘束されている状況にどうしていいか迷っているのか短剣を構えたまま固まっていた。
真田は動けない女性をニヤリと余裕綽々と見下ろしていた。
「情けないな。俺の命を取れず、あまつさえ自分の命が取られようとしているとはな。‥‥‥初撃で俺の命を取れなかったのを重く考え、違う手立てで攻撃を仕掛ければ違った結果にはなっただろうな」
女性からの反応は無かった。
聞く耳を持たずと無視を決め込んでいるようだ。
「それにお前はその前に失敗している。再び同じ攻撃を仕掛けるのならば、攻撃の特性を徹底的に隠さなければいけない。俺はお前に背後を取られた時、転移系の魔術を使う奴だと考えたが、実際は違うんだろ。‥‥‥あんたはただ単に影から影を移動しているだけだろ」
真田の指摘に見ていた女性の瞳の色が劇的に変化した。
あれだけ無表情だった女性の表情や瞳に初めて動揺が走っていた。
「おかしいと思ったんだ。もし空間系の魔術を使えるのなら、何で空中に逃れた時や移動する時に何も無かったのか。だから考えたんだ。本当はしなかったじゃなくて、出来なかったんだろと」
女性が使ったのは闇属性の魔術『オンブルデプラセ』。
自分の影から対象の影へと移動できる魔術。転移魔術とは違い、対象が居る空間に前兆である魔法陣が展開される事が無い。それ故に誰にも気づかれる事無く、対象に近付く事が出来き、真田を襲った2人のような極々一部の界隈の人種が重宝している。
真田の指摘した通り、この魔術は影から影へと移動しか出来ない。
影とは現象だ。
太陽や火といった光源が、物体に当たる事で発生する『光が差さない領域』を言う。
だから影が出来ない空中や暗闇といった場所に対象が居たとしても、オンブルデプラセで移動する事は出来ない。
だから試したのだ。
自分の推測が正しいのか。
もし違ったとしても。
相手への推測を確信へと高める布石として。
「相棒が近中遠と攻撃出来るのをあんたは隠れ蓑にする事によって、奇襲に特化しているようだが。俺が空中に逃れ無防備だったのに何もしなかったのは拙かった。短剣の投擲や何かすれば良かったが。あれでは自分の攻撃スタイルを相手に晒すような真似だぜ」
真田は短剣を持つ手の力を更に込め。
「さあ、言って貰おうか。俺を殺すように依頼した人物を!!」
張りつめた糸のような緊張感が、真田達の間を纏わりつくように支配していた。
唯一自由である男性は相棒である女性を人質に取られ、何も出来ずに構えている事しか出来なかった。
一切の余計な行動出来ない極限の状況。
自分が指先一つ動かしただけでも相棒の女性の首が跳ね飛ばされる。
相手は明らかに自分より格上。
その相手に余計な行動に見せる訳にはいかず、男性はどう行動するべきか諮詢していた。
真田達の間に漂う余人が入れないような緊張感がこのまま続くかと思われたが。
その均衡を破ったのは、真田に押さえつけられている女性だった。
「‥‥‥だからどうしたの。私の攻撃を封じこうして人質に取ったと思っているなら、大きな勘違いをしているわ。私達は依頼を受けたプロ。自分の命なんて銅貨1枚以下の存在。ましてや依頼人の名を言うなどあり得ないわ。そして片方が死ぬ事となっても、任務遂行が第一。貴方を確実に殺すわ」
真田に自分の攻撃手段が見破られ、今まさに命を刈り取られる絶体絶命の状況下にあっても、女性の瞳の光が曇る事は無かった。
「私を人質に取っているという事はあなたは私の行動に集中しなければならない。そうなると私の相棒の事はおざなりになる。その隙を見逃す程、私の相棒は甘くは無いわ。もしあなたが私の首を落とした瞬間、相棒が全魔力をもってあなたを殺すわ。‥‥‥それに簡単に殺されはしないわ。あなたの足ぐらいは使い物に出来ないぐらいは出来るわ」
女性は足を斬り落とそうと、もう1本の短剣を真田の太腿に突きつけた。
男性は攻撃を仕掛ける一瞬を逃すまいと、全神経を真田に集中させると同時に自身の全魔力を短剣に注ぎ込んでいた。その余波なのか、短剣の周囲に高密度の不自然な渦巻き状の風が発生していた。
短剣で女性の首を落としたらその瞬間、自分の命が女性の相棒である男性に手によって命を落とす事となる。
女性だけでは無く、一見有利に見える真田すらも絶体絶命の状況に真田と男性達との細い糸の上を歩くかのような緊張感の下で、目に見えない攻防戦が繰り広げられようとした。
だが。
「それならここを退くしかないな」
それはあっさりと何の前触れも無しに終わりを迎えた。
真田の綿のように軽い口調によって。
真田は首に当てていた短剣を退かすと近くの地面に刺し、立ち上がり女性から距離を取った。
「「‥‥‥え?」」
突然の事に男性達は思考停止とばかりに目を白黒とさせていた。
此処で真田が自分達から距離を取るのは理解出来た。
自分の命が惜しいと判断しただろうと。
だとしても、あまりにも判断が早すぎる上に口調に悔しさや怒りが滲み出ていなかったのだ。
自分達の常識では考えられないような真田の行動に疑問が湧水のように湧くばかりだった。
「‥‥‥どういうつもりなの」
女性は後退りしながら短剣を拾い、相棒である男性と共に構え呟いた。
「首を取れたのを辞めるとは、いささか短絡的じゃないかしら。‥‥‥それとも何かしら。私程度なら何時でも取れるという自信から来ているのかしら。それなら見縊られたものね」
自身のプライドを刺激された女性は、知らず知らずのうちに短剣を持つ手の力が強くなった。
真田は女性の言葉を否定するように首を振った。
「私の勝利条件を考えると貴女の首を落とさないのが、最短だと判断したまでですよ」
「‥‥‥どういうことかしら」
「貴方達は私の命を取る事が目的でなので、勝利条件となります。ですが私は違います。貴方達を嗾けた人間を倒すのが目的で勝利条件です。その過程で貴方達の口から依頼人又は仲介人の名前を吐いて貰わなければなりません」
真田は目の前に立つ2人を見据え。
「もしその過程で、貴女の首を落とそうのなら相棒の男性から聞き出せる事は、絶望的になると判断したから止めたまでですよ」
真田は此処でようやく女性の身体がプルプルと震えているのに気づいた。
隣の男性は女性の変化に目敏く気付いたようで、ぎょっとした顔でじりじりと離れて行った。
そして震えていた女性の動きが止まると。
「それが馬鹿にしているというのよっ!!」
胸中を暴れ回る激しい感情を表すかのように女性を中心に周囲のものを吹き飛ばすかのように不自然な強風が吹き荒れた。
近くにいた動物達は本能的に危険を察知したのか、一斉に文字通りの脱兎の勢いで遠くへと逃げ出した。
ひょうひょうとしている真田の耳には激しく擦り合う葉の音が届いた。
男性は吹き飛ばされないようにその場で必死に堪えていた。
「どちらも殺さずに口を割らせる!? ふざけないでっ!! そんな中途半端な覚悟を持ったまま私達に勝てると思っているのなら、とんだ自信家ね。私達の口を割らすつもりなら、殺す気で来なさい!!」
女性は犬歯を剝き出しにした顔で並の冒険者なら完全に失神させてしまうかのような殺気を放っていた。
殺気が吹き荒れる真田は非常に楽しそうな表情だった。
それは相手が何処で潰れるか試しているものだ。
「そう? なら貴方達を今から殺す気で行きますね」
その直後、周囲が変わった。
真田が敵を倒す為に魔術を使って、直接的に世界を変えた訳では無い。
周囲の雰囲気が明確にまで変わったのだ。
今まで安全と思っていた森を歩いていたら目の前に魔王が現れたかのような。灰色で塗り固められていたものが、黒をぶちまけられて変色したようなものだった。
女性達は真田から目を逸らせないでいた。
いや、逸らせないでいた。
一瞬でも逸らしてしまったら、殺されると本能だけでは無く身体中から警告をけたたましく発しているからだ。
そして女性達の耳にバキバキバキバキッ!!と、見えない何かが巨大な錘で木材を強引に押し潰しているような破壊音が届いた。
真田の付近にあった複数の葉が生い茂り立派な樹木が、見えない何かに押し潰されていき、真田の方の高さまでになっていた。
そして地面と変わらない高さまでになり、周囲には葉や枝が円状に広がっていた。
それを信じられないものを見るような目で見ていた。
「(一体何なのよ、あの子は!? 今まではある程度の緊張感の中に何処かのほほんとした緩い感じがあったけど今は違う。一点の曇りもない程の純粋にそして全てを壊すかような殺気を放っている。‥‥‥本当に同じ人物なの!!??)」
自身とは比較にならない程の殺気の密度に2人組の全身は板のように硬直して動けないでいた。
「(今まで多くの人間や魔物を闇に葬り、そして幾つもの修羅場を経験してきた。そしてマスターに次ぐ地位や実力を手にした。その私達が只の子供のように身動きが取れないというの!!!???)」
普段であれば女性のプライドを完全に刺激され憤慨するのだが、今の女性にそこまでの余裕など髪の毛1本分も存在しなかった。
ただあるとすれば、純然たる恐怖だった。
本能に最も近く、原初の感情にして、人の行動の根本原理をなすもの。
それを一方的に与える側だった女性達は、今はただ処刑寸前の罪人のようにただ胸中に沸き起こる恐怖を甘んじて受けるしか出来なかった。
真田は硬直している2人を興味深く見ていた。
研究者が実験をしている過程で思わぬ発見をした時に見せる目だった。
「ほう2人共、中々やりますね。ここ最近、平和な国で過ごした所為か腑抜けてみすぼらしい殺気でもそれなりものと自負していますが、貴方達を見ているとそれも自信過剰という事ですかな。いやはや、私もまだまだ修行不足だと思い知らされますね」
そして真田は静かに言い放った。
女性達にとっては死刑にも等しい言葉を。
「殺気をもう一段階上げるぞ」
真田は狙いをつけるかのように腕を上げ、右手を女性達に合わせた。
それは死刑執行人が首刈り用の斧を振り上げているように見えた。
真田が人差し指を下ろそうとした、その寸前に。
「両者とも、そこまでだ」
静かとも威厳に満ちた言葉が割り込んで来た。
真田は声がした方を見ると1人の男が立っていた。
その人物は真田より頭一つ分大きくショートの金髪、あらゆる人物の顔を平均化したような顔をしていた。女性達と同じような服を着て、腰に2本の短剣を携え静かに真田の方へと向かって来ていた。
「あれは‥‥‥アベルか」
真田としては忘れる事が出来ない人物だ。
メアリーを救出するのにある程度手を抜いていたとはいえ、この世界に来て初めて決着がつけられずいる人物だ。
真田は意外な人物の登場にこれ以上は続けられないと判断したのか、殺気を元から無かったかのように霧散させた。
殺気という拘束が解かれた事に女性達は身体の自由を再び得たが、女性達が現実逃避したくなるかような密度の殺気に当てられていた所為で、体力の消耗は激しく身体を上手く動かす事は出来ず、地面に膝を当てて四つん這いになるしかなかった。
激しい運動はしていない筈なのだが、顔や背中といった身体中の至る所から玉のような汗が滝のように流れていた。
「久方ぶりという程では無いが、久方ぶりだな。あの館での一件以来か」
アベルの口調は久しぶりの友人に会ったかのようなものだった。
「そうですね。あれは貴方のおかげで解決したようなものですからね。‥‥‥なんですか、あの時つけられなかった決着でもつけに来たのですか」
「それも一興だが、今はそれをするべき時では無い。今は我が一族を迎えに来ただけだ」
「一族?」
真田は怪訝な目で亀のようにのろのろとした動作で、体勢を変えようとしている女性達を見た。
女性達はようやくある体勢になると動きを止めた。
右膝を地につけ左足を竪琴のように立て、アベルに向けて頭を垂れていた。
それは主君に絶対の忠誠を誓う騎士ように見えた。
アベルは頭を垂れる2人組を何も言わずに静かに見ていた。
逃げていた動物たちが徐々に自分の住処へと戻ろうとし、平穏を取り戻そうとしている森に葉の波音が響き渡る中、アベルが独り言のように静かに呟いた。。
「手酷くやられたみたいだな。アイーシャ、アーヴィン」
2人組は一瞬ビクッ!!と身体を強張らせた。
女性はおずおずといった様子で口を開いた。
「も、申し訳御座いません、マスター。このような失態を演じたばかりかマスター自ら出向かせるような真似を」
「失態? 何を言っているのだ、アイーシャ」
「「‥‥‥はっ!?」」
アベルからアイーシャと呼ばれた女性は目が点になった。男性のアーヴィンも同様だった。
アベルは出来の悪い教え子に優しく諭す教師かのような口調で。
「我らの失態とは任務の途中放棄や遂行出来ず命を落とす事だ。今のお前達は生きているのではないのか。だから任務は失敗では無く、継続中なのではないのか。お前も1度で仕留めきれなかった奴はいただろう」
「それはそうですが」
アイーシャの言葉には先程までの覇気は見当たらなかった。
アベルは可笑しそうに微笑むと。
「まあ、継続しようにも対象はもう既に此処には居ないのだがな」
「居ない?」
その言葉を表すかのようにアイーシャ達が周囲を探すが、真田の影や姿は何処にも見当たらなかった。
標的を見失うという言い訳もできない失態を演じた事に2人組は、自己嫌悪と激しい怒りに苛まれそうになったが。
「マスター。この失態はアヤツの命をもって、返上させていただきますっ! ‥‥‥いくよ、アーヴィン」
アーヴィンは力強く頷いた。
2人が揃って真田の居そうな所に向かおうと地面を力強く蹴ろうとした。
「‥‥‥へぇっ!?」
しかし2人の眼前に広がるのは空では無く、落ち葉が散乱する地面だった。
2人は何とか受け身の体勢を取り、顔から地面にダイブする事は避けられた。
真田から受けたダメージは2人の想像以上に酷く、身体はその意思に反して動こうとはしなかったのだ
「止めておけ、2人共。その状態で行くのは自殺そのものだ」
アベルは諭すかのように言うが、アイーシャはそれすらも怒りの燃料とした。
「ですが、マスター! このままおめおめと引き下がるのは、ギルトや我が一族にとって不名誉極まりない事。これは一刻も早く、あの者の殺す事しか!」
「それは解っておる。我も行くなとは言っておらぬ。だが、動く事すらままならぬ今の状態で行ったとしても何が出来る。それよりも今は休んで元の状態に戻った時の方が、成功するであろう。それを分からぬお前達ではあるまい」
幾分か冷静になっていたアイーシャ達は、何も出来ない悔しさに顔を歪めた。
アベルは2人の様子に少し嬉しそうに微笑むと、此処には居ない真田が行くであろう場所の方へと視線を向けた。
「(あやつは2人から依頼主を言わせると言ったが、どこまで本気だったのだろうな)」
襲って来た2人をアベルに任せ真田は一旦帝都に戻り、ある場所へと走って向かっていた。
「(あの2人には依頼主を言わせると言ったが、襲って来た時に依頼主は大体の見当はついていた。気の毒だが苦い経験だと思い、これをバネに精進して貰いたいものだな)」
真田は自分でも中々無茶な事を言っているなと苦笑いをした。
そして真田はこの世界に来てからの事を思い出していた。
「(暗殺者に命を狙われるなんて『前の世界』ならともかく、この世界に来てからは命を狙われる事柄。そしてこのタイミングを考えるのならば1つしか心当たりがない。‥‥‥それは)」
真田はある建物の前に到着した。
睨む真田の視線の先には長方形の木製の看板で『アリング商会』と彫られていた。
続きます。




