第60話 【スマートグリッド】と仮想発電所(VPP)。エネルギー独占を打破する『クリーン・マナ・システム』
株式会社エゾの買収とスマートシティのさらなる拡大により、都市のエネルギー消費量はかつてないほどに増大していた。
「レクト理事長。問題はエネルギーの供給源です。現在、我々の電力の8割は隣領のボルツ男爵が支配する『黒魔石鉱山』からの供給に依存しています」
理事長室で、財務顧問のアカザワが深刻な顔でデータを提示した。
「ボルツ男爵は、我々の発展を妬み、供給価格をこれまでの5倍に釣り上げてきました。さらに、彼が供給するエネルギーは『魔力スモッグ』を排出し、市民の健康を脅かしています」
「価格操作と公害、か。エネルギーの独占こそ、最も悪質な既得権益だな」
俺は窓の外で、ボルツの鉱山から流れてくる黒い煙に顔をしかめる市民たちを眺めた。
「供給を止められれば都市は麻痺する……。男爵はそれを人質にしているつもりだろうが、残念ながら俺たちの辞書に『依存』という言葉はない」
俺はシステムのコンソールを展開し、都市全域のエネルギーインフラを根本から書き換えるプログラムを走らせた。
「独占された中央集権的な発電を終わらせる。今日からこの都市は、太陽や風からクリーンな魔力を直接収穫し、市民が自らエネルギーを管理・取引する【スマートグリッド】へと移行する」
【翌日・王都近郊のボルツ男爵領にて】
「ガハハハハ! レクトよ、観念して金貨を積み上げるがいい! 我が黒魔石の供給が止まれば、お前のピカピカの街も一瞬で真っ暗闇のゴミ溜めだ!」
魔力計をジャラジャラさせた肥満体のボルツ男爵が、傲慢に笑っていた。だが、俺はコーヒーを一口飲み、冷たく告げた。
「ボルツ男爵。残念だが、契約更新の通知は送っていない。あんたの黒魔石は、たった今『非推奨(デプロイ対象外)』になった」
「な、なんだと……!? 強がりを! ならば今すぐ送電をストップしてやる!」
その瞬間、都市全域の空中に、無数の淡く光る【魔力収穫機】が展開された。
それらは空気中の微細な魔力や日光、風の振動を吸い込み、一瞬にして膨大な純粋エネルギーへと変換し始めた。
「ば、馬鹿な! あんな玩具で都市の電力が賄えるはずがない!」
「収穫だけじゃない。各家庭に導入した【HEMS(家庭用エネルギー管理システム)】が、AIによって消費電力をリアルタイムで最適化している。さらに、余った電力は【仮想発電所(VPP)】としてクラウド上で統合され、必要な場所へ自動で融通(パケット交換)されるんだ」
ボルツが窓の外を見ると、彼の黒魔石が供給を止めたにもかかわらず、スマートシティの街灯はかつてないほどに明るく、翠色のクリーンな光を放っていた。
「そ、そんな……! 無数の家庭の魔力が、一つの巨大な発電所のように機能しているというのか!?」
「対象者の健康と経済を脅かす『環境汚染バグ』は、我々が排除する!」
いつの間にかボルツの後ろに立っていた特務支援チーム【REDANGEL】のコイケが、彼の首元に冷たい刃を突きつけた。
「ひ、ひぃぃっ! 私のエネルギー帝国が……!」
「アカザワ。男爵には、これまでの環境汚染の賠償金と、不当な価格操作の罰金を請求しておけ」
「承知いたしました。賠償金のカタとして彼の鉱山ごと買い叩き、クリーンエネルギーの蓄電施設として再利用して差し上げましょう」
ボルツはその場に泣き崩れ、彼の汚れた黒魔石ビジネスは完全に崩壊した。
「レクト理事長! 都市の空気もすっかり綺麗になりました!」
カメイが報告にやってきて、澄み切った青空を指差す。
「ああ。独占された汚いエネルギーを捨て、分散型のクリーンなインフラへ。誰もがエネルギーの生産者になれる時代だ」
日本創紀学園がもたらすエネルギー革命は、大陸の資源という概念そのものを、クリーンで絶対的なものへと変革していくのだった。
キャラクター・プロフィール
レクト
役割:主人公(日本創紀学園・理事長)
状況:エネルギー独占と環境汚染を企む貴族に対し、【スマートグリッド】と【仮想発電所(VPP)】を導入。各家庭の電力をAIで最適化・融通させることで、大規模発電所に依存しない究極の分散型エネルギー網を構築した。
ボルツ男爵(New)
役割:エネルギーを独占する悪徳貴族(ざまぁ完了)
状況:黒魔石による公害を撒き散らしながら価格を5倍に吊り上げようとしたが、レクトのVPPによって一瞬で顧客を失う。莫大な賠償金を抱え、鉱山を学園に没収された。
アカザワ
役割:財務顧問
状況:ボルツの自滅を冷笑しながら、環境汚染への損害賠償を名目に鉱山の権利を底値で差し押さえるえげつない手腕を発揮した。
コイケ(REDANGEL)
役割:特務支援チーム・リーダー
状況:環境汚染による健康被害を憂慮しており、公害の元凶であるボルツを物理的に制圧した際はいつも以上に気合が入っていた。




