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第55話 【M&A(企業の合併・買収)】とコーポレート・ガバナンス。巨大商会『エゾ』の株式譲渡契約

スマートシティにおける他施設への実地指導を完璧な電子データでクリアした翌月。

季節は5月を迎え、気候も暖かくなる中、日本創紀学園の経済圏はさらなる拡大のフェーズに入っていた。

理事長室のデスクには、分厚い(もちろん電子化された)財務データがホログラムで展開されていた。

「レクト理事長。先日からAIによる【デューデリジェンス(資産査定)】を進めていた件ですが、対象企業の内部は想像以上に腐敗バグだらけしていますね」

財務顧問のアカザワが、冷徹な目でデータを分析しながら報告する。

「北方地域の物流と資源開発を独占する巨大企業、『株式会社エゾ』か」

俺はコーヒーカップを置き、モニターに映るその商会のデータを見つめた。

株式会社エゾは、大陸でも有数の歴史を持つ大企業だ。しかし、現社長であるゴルドーのワンマン経営と、前時代的なアナログ管理のせいで、現場の労働環境は劣悪を極め、業績は急速に悪化していた。

「社長のゴルドーは、会社の資金を私的流用し、現場の従業員たちには違法な長時間労働を強いています。このままでは数ヶ月以内に経営破綻し、数千人の従業員が路頭に迷うことになります」

「それは見過ごせないな。対象者(従業員)たちの生活を守るためにも、あの商会には抜本的な【コーポレート・ガバナンス(企業統治)】の改善が必要だ」

俺は立ち上がり、コートを羽織った。

「よし、アカザワ。買収テイクオーバーの総仕上げに行くぞ」

【株式会社エゾ・本社ビル 社長室にて】

「ガハハハハ! 日本創紀学園の理事長殿が、直々に何の用かな! 我が株式会社エゾに融資でも頼みに来たのかね?」

豪華な調度品に囲まれた社長室で、丸々と太った社長のゴルドーが、葉巻をふかしながら傲慢に笑っていた。

彼の背後には、いかにもガラの悪い私兵たちが用心棒として立っている。

「融資? 逆だ」

俺はソファに腰を下ろし、ゴルドーを冷たく見据えた。

「ゴルドー社長。あんたの会社は、ずさんな経営で完全にキャッシュフローがショートしている。俺たちは、不当な扱いで苦しんでいる従業員たちを救済し、この会社を根本から立て直す(アップデートする)ために来た」

「立て直すだと? 笑わせるな! この会社は私のものだ! 従業員は私が生殺与奪を握る奴隷に過ぎん! 外部の若造に口出しされる筋合いはないわ!」

ゴルドーが激高して机を叩くと、私兵たちが武器に手をかけた。

しかし、その瞬間。

「対象者の健全な労働環境を阻害する悪質な経営陣は、我々が排除する!」

天井裏から音もなく降臨した特務支援チーム【REDANGEL】のコイケとミクニが、瞬時に私兵たちを床に制圧した。

「な、なんだお前たちは!」

「物理的な排除は彼らに任せるとして。ゴルドー社長、あなたがこの会社を『自分のものだ』と言い張る根拠は、すでに完全に崩壊していますよ」

アカザワが静かに歩み寄り、一枚の電子端末タブレットをゴルドーの目の前に突きつけた。

「な、なんだこれは……『株式譲渡契約書』……!?」

「ええ。我々は先月から、あなたの横暴に不満を持っていた他の大株主(貴族や投資家たち)と水面下で交渉を進め、適正な価格で彼らの持ち株をすべて買い取りました」

俺はホログラムで、株式会社エゾの最新の株主構成比率を空中に投影した。

「5月をもって、最終的な譲渡契約は完了した。現在、俺たち日本創紀学園が保有する株式会社エゾの株式は……【42%】だ」

「よ、よんじゅうにぱーせんと……!?」

ゴルドーが葉巻を落とし、顔面を蒼白にさせる。

「コーポレート・ガバナンスにおいて、議決権の42%という数字が何を意味するか、まさか社長ともあろう者が知らないわけではないでしょう?」

アカザワが冷酷な笑みを浮かべる。

「株式会社の重要な決定(特別決議)には、株主総会で3分の2以上……つまり約66.7%以上の賛成が必要です。我々が42%の議決権を握ったということは、あなたが会社の資産を勝手に売却したり、定款を変更したりする暴走を、我々が単独で【完全に拒否ブロックできる】ということです」

「そ、そんな馬鹿な! いつの間に私の足元を……! だ、だが、まだ過半数は取られていない! 日常の業務命令は私が……」

「それも今日で終わりだ」

俺はタブレットを操作し、さらに分厚いデータを開示した。

「AIによる監査で、あんたの横領と脱税の証拠は1円単位で完全に裏付けられている。これらを公的機関に提出すれば、あなたは即座に逮捕。残りの浮動株を持つ株主たちも、こぞってあなたへの解任動議に賛成するだろう」

「お、おわりだ……。私の会社が……!」

ゴルドーは完全に絶望し、膝から崩れ落ちた。

血も涙もない物理的な暴力ではなく、適法で完璧な【M&A(資本提携)】の力によって、腐敗した独裁者はその座から引きずり下ろされたのだ。

「さて。これで株式会社エゾは、晴れて学園の経済圏エコシステムに組み込まれたわけだ」

俺は、社長室の外で不安そうに様子を窺っていた従業員たちに向かって声をかけた。

「安心しろ。不当な搾取は今日で終わる。明日から君たちの労働環境は、学園のシステムによって完全に最適化される」

俺は彼らの手元の端末に、新しいコミュニケーションツールをインストール(プッシュ配信)した。

「まずは風通しの悪い社内政治を破壊する。連絡ツールはすべて【kokorotokurashi】という名前の新しいSlackワークスペースに移行しろ。部署間の壁をなくし、誰でも自由に意見を言えるフラットな環境を構築するんだ」

「おおっ……! こんなに使いやすい連絡網が! これなら、現場のSOSもすぐに届きます!」

「給与も、学園の基準に合わせて再計算ベースアップされる。これからは胸を張って、自分の生活とこころとくらしを豊かにするために働いてくれ」

歓喜の涙を流す従業員たちを見渡し、俺とアカザワは静かに社長室を後にした。

「レクト理事長。株式会社エゾの物流網とリソースが手に入ったことで、我々のスマートシティの供給力はさらに強固なものになりますね」

「ああ。企業を力でねじ伏せるのではなく、資本のルールとシステムで『正しい形』へと導く。これこそが、社会全体を対象とした究極の伴走支援だ」

株式会社エゾの42%の株式という、完璧なコントロール権の掌握。

日本創紀学園が放つITと資本の融合は、大陸の古い経済体制を根本からアップデートしていくのだった。

キャラクター・プロフィール

レクト

役割:主人公(日本創紀学園・理事長)

状況:腐敗した巨大商会を救済するため、M&Aによる事実上の敵対的買収(資本介入)を実行。5月に株式会社エゾの株式の【42%】を握る譲渡契約を完了させ、所有権と議決権による完璧なブロック権限を行使し、悪徳社長を合法的に排除した。

アカザワ

役割:財務顧問

状況:M&Aとデューデリジェンスの専門家として水面下で暗躍。企業の所有権(議決権)という資本主義の絶対ルールを振りかざし、対象を絶望の淵に叩き落とす瞬間に至上の喜びを感じている。

ゴルドー(New)

役割:株式会社エゾの旧社長(ざまぁ完了)

状況:従業員を奴隷扱いするワンマン社長。レクトたちに会社の生殺与奪を握る「議決権42%」を奪われ、さらに横領の証拠を突きつけられて完全に失脚。会社を追放された。

コイケ&ミクニ

役割:特務支援チーム

状況:経営陣同士の高度な資本交渉の裏で、空気を読まない武力介入を試みる私兵たちを、わずか数秒で物理的に制圧する完璧な裏方仕事を果たした。

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