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第56話 【生成AI画像生成】とクリエイター・エコノミー。新たな支援プラットフォーム『ファンタスティア』

株式会社エゾの経営権(42%の株式)を掌握し、社内の連絡網を『kokorotokurashi』というフラットなワークスペースへと刷新したことで、企業の風通しは劇的に改善された。

劣悪な環境から解放された従業員たちは活気を取り戻し、生産性は瞬く間に向上していった。

しかし、新体制となったエゾには、早急に解決すべき課題があった。

それは「崩壊したブランドイメージの回復」と、「新規人材の大量採用」である。

「レクト理事長。新生エゾのクリーンなイメージをアピールするための『採用チラシ』と、我々の事業を宣伝する『コンサルティング用バナー画像』の制作が急務です」

理事長室で、財務顧問にしてPR戦略のプロフェッショナルであるヒロアキ・アカザワが、スケジュールのホログラムを前に腕を組んだ。

「ああ。至急、優秀な絵師やデザイナーを手配してくれ」

俺がそう指示を出した時、理事長室の扉を乱暴に開けて、派手なベレー帽を被った中年の男が入ってきた。

王都の芸術とデザインを独占する『宮廷画家ギルド』のギルドマスター、ピクトだ。

「ガハハハハ! エゾの新しい看板を描いてほしいなら、この私に頼むしかなかろう! 採用チラシ一枚につき、金貨百枚! そして納期は半年だ! なにせ、私の芸術は魂を削って描くからな!」

ピクトの後ろには、彼に顎で使われている下働きの少女、ミクが、重い画材を抱えて震えていた。

彼女は自分の描いたキャラクターのラフ画の束を大切そうに抱きしめている。

「納期半年で、あのバカ高い金額だと?」

俺は呆れてため息をついた。

「ビジネスのスピードアジャイルを完全に無視している。それに、あんたの絵は数十年も同じ構図の使い回しじゃないか」

「な、なんだと!? 私の崇高な芸術を愚弄する気か! お前たちのような素人に、ゼロから美しい絵を生み出すことなど不可能だ!」

ピクトは激高し、後ろにいたミクのラフ画の束を払い落とした。

「おいミク! お前もいつまでも『英雄誕生』だの『バグ俺』だのという、くだらないWeb小説のキャラクター設定ばかり描いていないで、私の絵具でも舐めていろ! 平民の落書きに価値などないのだ!」

床に散らばった自分の大切な作品を拾い集めながら、ミクがポロポロと涙をこぼす。

「ピクト・ギルドマスター。あなたの法外な見積もりは【リジェクト(却下)】します。お引き取りを」

アカザワが冷たく言い放つ。

「ふん! 後悔しても遅いからな! せいぜい、文字だけの惨めなチラシでも配るがいい!」

ピクトは捨て台詞を吐いて、ミクを置いて一人で出て行ってしまった。

「……あの、私、お仕事クビになっちゃいました……」

ミクが途方に暮れる中、俺は彼女が描いた『英雄誕生』のキャラクターのラフ画を拾い上げた。

「素晴らしい構成力と、キャラクターへのパッションを感じる。ミク、君のこのアイデアをベースに、最高の採用チラシとバナーを作ってみないか?」

「えっ……? でも私、まだ色塗りの技術もなくて、完成させるのにすごく時間がかかってしまいます……」

「問題ない。作業リソースの大半は、俺のシステムが【伴走】する」

俺は空中にシステム画面を展開し、最新のアプリケーションを起動した。

【Application_Start:Generative_AI_Image(画像生成AIスタジオ)】

ピィンッ!

「君のこのラフ画(Image-to-Image)と、『清潔感のあるオフィス』『希望に満ちた笑顔のスタッフ』という言葉テキストプロンプトを入力する。あとは、AIが君の意図を汲み取り、数秒でプロ品質のイラストにコンパイルしてくれる」

俺が実行エンターボタンを押した瞬間。

ミクの描いたラフ画が光に包まれ、わずか十数秒後には、圧倒的な色彩と完璧な光の陰影を持った「超高精細な採用向けキャラクターイラスト」と「コンサルティング用バナー」が生成された。

「な、ななっ……!? すごい……! 私が頭の中で思い描いていた『理想の色彩』が、一瞬で形に……!」

ミクが感動で目を見開く。

「AIは君の想像力クリエイティビティを奪うものじゃない。技術的な壁を取り払い、君の才能を最速で形にするための『最強の筆』だ」

俺とアカザワは、ミクとAIの協業によって生み出された数々の高品質なバナーやチラシを、即座に都市のネットワークへ配信した。新生エゾのクリーンで魅力的な広報は瞬く間に話題を呼び、優秀な人材の応募が殺到することになる。

「レクト理事長! ありがとうございます! 私、このAIツールを使えば、自分のWeb小説の挿絵も全部自分で作れます!」

目を輝かせるミクを見て、俺はさらに一つのプラットフォームを立ち上げることにした。

「宮廷画家ギルドのような中抜き組織ミドルマンのせいで、ミクのように才能あるクリエイターが貧困に喘ぐのは間違っている」

俺が全市民の端末にプッシュ配信したのは、独立したクリエイターをファンが直接支援できるプラットフォーム、その名も【ファンタスティア】だ。

「このプラットフォームでは、クリエイターが自分の作品(漫画やWeb小説)を自由に投稿できる。そしてファンは、デジタル通貨の【トラコイン】を購入し、お気に入りのクリエイターに直接『投げスーパーチャット』を送ることができるんだ」

「投げ銭……? ファンの方から、直接支援をいただけるんですか?」

「ああ。間にギルドを挟まないから、収益の大部分が直接君たちの手元に入る。これで君たちは、誰に搾取されることもなく、純粋に創作活動だけで食べていける(クリエイター・エコノミーの確立)というわけだ」

【数週間後】

「ば、馬鹿な!? なぜ誰も私のところに絵の依頼に来ないのだ!」

宮廷画家ギルドのピクトは、誰もいないアトリエで頭を抱えていた。

街の広報物はすべて、ミクたち独立系クリエイターがAIを駆使して作成した、高品質で安価、かつ圧倒的に納期の早いイラストに置き換わっていた。

さらに、プラットフォーム【ファンタスティア】は大流行し、ミクの連載するWeb小説『バグ俺』と『英雄誕生』は、熱狂的なファンからのトラコイン(投げ銭)とスーパーチャットの嵐で、億単位の経済圏を生み出していたのだ。

「ええい、こうなったらあの小娘の絵をトレース(盗作)して、私の名前で売り捌いてやる!」

ピクトがミクの公開しているイラストを無断で保存し、自分の名前を書き込もうとした、その時。

「対象者の正当な著作権ライセンスを侵害する悪質なパクリ行為は、我々がデリートする!」

アトリエの窓を蹴破り、真紅のコートを纏った特務支援チームのコイケが突入した。

「ひぃぃっ! な、なぜ私がトレースしようとしたのが分かったのだ!」

「このプラットフォーム上のすべての作品には、目に見えない電子透かし(ウォーターマーク)と、ブロックチェーンによるタイムスタンプが刻まれている。お前が保存ボタンを押した瞬間に、AIが著作権侵害のアラートを検知したんだよ」

後から悠然と入ってきたアカザワが、冷たく眼鏡を光らせた。

「ピクト氏。あなたのギルドはすでに完全に市場価値を失い、破産手続きに入りました。不正な著作権侵害の賠償金も加わり、あなたは一生、末端の作業員として借金を返すことになります」

「お、おわりだ……。私の芸術が……!」

ピクトが衛兵に連行されていくのを眺めながら、俺はアカザワと共に、活気に満ちたスマートシティの広場へと歩き出した。

広場の巨大モニターでは、ミクがライブ配信を行い、無数の『トラコイン』のスタンプが画面を埋め尽くす中で、ファンに向けて笑顔で手を振っていた。

「クリエイターの情熱にテクノロジーが伴走することで、誰もが輝ける世界が実現しましたね」

アカザワが満足げに微笑む。

「ああ。技術はただ効率化のためだけにあるんじゃない。人々の心にある『表現したい』という想いを解放し、それを正当な価値へと繋ぐ。これこそが、真の文化のアップデートだ」

AIの力と、熱狂的なファンコミュニティ。

日本創紀学園が構築した新たなエコシステムは、異世界に空前のクリエイター・ルネサンスを巻き起こすのだった。

キャラクター・プロフィール

レクト

役割:主人公(日本創紀学園・理事長)

状況:採用活動の停滞とクリエイターの搾取を解決するため、【画像生成AI】と支援プラットフォーム【ファンタスティア】を導入。AIを「クリエイティビティを拡張するツール」として提供し、ダイレクト課金トラコインによるクリエイター・エコノミーを確立した。

ヒロアキ・アカザワ

役割:財務顧問 兼 PR戦略プロフェッショナル

状況:新生エゾのブランド戦略を牽引。高額なだけの旧時代的なギルドを秒で切り捨て、ブロックチェーンを用いた著作権管理システムで悪徳画家に引導を渡した。

ミク(New)

役割:独立系クリエイター(支援対象者)

状況:下働きとして搾取されていたが、レクトから提供された画像生成AIの力で、自身のWeb小説『英雄誕生』『バグ俺』のビジュアルを完璧に具現化。現在はファンからのトラコイン(スーパーチャット)で莫大な支援を受けるトップクリエイターに成長した。

ピクト(New)

役割:宮廷画家ギルドマスター(ざまぁ完了)

状況:法外な価格と遅い納期で利権を貪っていたアナログ絵師。AIとクリエイターたちの圧倒的な生産性の前に仕事を完全に奪われ、盗作に手を染めようとしたところをシステムに検知され逮捕された。

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