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第49話 【RPA(自動化プログラム)】とペーパーレス化。官僚主義を打ち破る『真の創造性』

ゼロトラスト・アーキテクチャによる鉄壁のセキュリティが確立され、日本創紀学園とスマートシティは、大陸中の国家から「最も安全で豊かな取引拠点」として認知されるようになった。

その結果、学園の外交・行政部門には、連日のように各国からの通商条約や移住申請の書類が殺到していた。

ある日の午後。学園の広大なレセプションルームは、異様な光景に包まれていた。

「ハンコだ! 早く次の決裁書類に承認のハンコを押せ! インクが乾く前に次の束を持ってこい!」

部屋を埋め尽くすほどの羊皮紙の山の中で、南方商業連盟から派遣されてきた筆頭官僚、ゴルディアスが血走った目で怒鳴り散らしていた。

彼の部下である数十人の役人たちも、腱鞘炎で震える手を必死に動かし、ひたすら書類の目視チェックとハンコ押し(承認作業)を繰り返している。

「レクト理事長……。彼ら、南方から通商協定を結びに来たのはいいのですが、あの凄まじい量のアナログ書類を全部手作業で処理していて……もう三日三晩、寝ていないそうです」

システム管理アシスタントのミレナが、ドン引きした顔で俺に耳打ちする。

「南方連盟の行政システムは、大陸でも一番『レガシー(時代遅れ)』だと聞いていたが……ここまで酷いとはな」

俺が呆れながら近づくと、ゴルディアスは自慢げに胸を張った。

「おお、レクト殿! 見てくだされ、この我が連盟が誇る完璧な官僚システムを! 一つの申請を通すのに、十の部署の目視確認と、十五個のハンコを必要とするのです! この『苦労と汗』こそが、仕事の正確さと権威の証明なのですぞ!」

「いや、ただの非効率バグだろ、それ」

俺はため息をつき、彼らが三日かけて処理したという書類の束をパラパラと捲った。

「おまけに、これだけハンコを押しまくっているのに、日付の記入漏れや、計算の『転記ミス』が山ほどあるじゃないか」

「な、ななっ!? 馬鹿な! 我が優秀な部下たちが、血を吐く思いで徹夜してチェックしたのだぞ!?」

「人間が疲労状態で単純作業ルーチンワークを繰り返せば、必ずヒューマンエラーが起きる。人間はロボットじゃないんだからな」

俺はレセプションルームの中央に立ち、システムのコンソールを空中に展開した。

「人間を、ロボットのような無意味な単純作業から解放する。今日からこの都市の行政手続きをすべて【ペーパーレス化】し、作業を全自動化するぞ」

俺がエンターキーを叩いた瞬間。

【Application_Start:RPAロボティック・プロセス・オートメーション& AI-OCR】

ピィンッ!

俺の指先から、無数の小さな「光の妖精マクロ・ボット」たちが飛び出した。

妖精たちは猛烈なスピードで部屋中の羊皮紙の山に群がると、書類の文字を光の走査線で瞬時に読み取っていく(これがAI-OCRによる文字のデータ化だ)。

「な、なんだこの光は!? 書類が、文字が吸い取られていく!?」

読み取られたデータは、即座に空中に展開されたシステム画面(クラウド上のスプレッドシート)へと転送される。

「よし、データのデジタル化完了。次は【RPA】の出番だ」

俺が指示を出すと、システム内の自動化プログラム(RPA)が作動した。

RPAは、あらかじめ俺が設定しておいた「承認ルール」に従い、数万件の申請データを一瞬でチェックしていく。

『Format_Check:OK』

『Credit_Score_Validation:OK』

『Auto_Approve:Complete(自動承認完了)』

「……終わったぞ」

「は? 終わった、とは……?」

ゴルディアスがポカンと口を開ける。

「あんたたちが三日徹夜して、まだ十分の一も終わっていなかった通商申請のチェックと承認作業。たった今、数万件すべてエラーなしで完了コンパイルした」

「ば、馬鹿な!? 十五個のハンコはどうしたのだ! あの重厚な手続きが、たった数秒の光の明滅で終わるなど……! そんな手抜きが許されるはずがない!」

ゴルディアスはパニックを起こし、自分のハンコを握りしめて膝から崩れ落ちた。

「お、俺の三十年の官僚人生は……このハンコを誰よりも早く、正確に押すためにあったのに……! 機械に仕事を奪われたら、俺の存在価値アイデンティティはどうなってしまうのだぁぁっ!」

「奪ったんじゃない。あんたたちに『本来の仕事』を返してやったんだ」

俺は泣き崩れるゴルディアスの肩に手を置いた。

「考えてもみろ。あんたたち役人の本当の仕事は、薄暗い部屋で紙切れにハンコを押すことか? 違うだろ。街に出て、困っている商人たちの声を聞き、どうすればもっと経済が豊かになるか『人間らしい知恵』を絞ることのはずだ」

「人間らしい……知恵……?」

「ああ。機械にできる単純作業は、全部RPAシステムにやらせればいい。そうして空いた膨大な時間リソースを使って、人間は人間にしかできない『共感』や『創造性クリエイティビティ』を発揮する。それが、俺たちの提供する伴走型支援だ」

俺の言葉に、ゴルディアスと部下の役人たちはハッと顔を上げた。

「……そうか。私はいつの間にか、ハンコを押すこと自体が目的になっていた。若い頃は、もっと市場を歩き回って、人々の笑顔のために働きたかったのに……」

ゴルディアスは固く握りしめていたハンコを、ポロリと床に落とした。

「レクト殿……! 目が覚めました! 私たちは今まで、自分たち自身をロボットに貶めていたのですね!」

すっかり憑き物が落ちたゴルディアスたちは、徹夜の疲労も忘れ、晴れやかな顔で立ち上がった。

「よし! お前たち、書類仕事はもう終わりだ! これより全員でスマートシティの市場へ視察に向かう! 商人たちの生の声をヒアリングし、新たなビジネスモデルを構築するのだ!」

「おおおおっ!!」

活気を取り戻した南方連盟の役人たちが、意気揚々と街へ繰り出していく。

それを見送りながら、レオンティーナが呆れたように言った。

「まったく、アナログな事務作業ほど恐ろしいものはありませんね。私もRPAのおかげで訓練日誌の作成が全自動になったので、余った時間でアリアちゃんの過去のライブ映像を全周回してきます!」

「お前はもうちょっと他のことに創造性を発揮しろ」

俺はレオンティーナに軽くツッコミを入れつつ、完全にペーパーレス化され、すっきりと片付いたレセプションルームでコーヒーを飲んだ。

退屈なルーチンワークを破壊し、人々の心に『真のゆとり』を生み出す。

IT技術がもたらす最高の恩恵は、人間をより人間らしく、自由に羽ばたかせることなのだ。

キャラクター・プロフィール

レクト

役割:主人公(日本創紀学園・理事長)

状況:【AI-OCR】と【RPA(自動化プログラム)】を導入し、都市の行政手続きを完全ペーパーレス化。無意味なハンコ文化を破壊し、官僚たちに「人間らしい創造的な仕事」を取り戻させた。

ゴルディアス(New)

役割:南方商業連盟の筆頭官僚(コンサル対象者)

状況:ハンコを押すことと長時間労働に命を懸ける典型的なアナログ役人だったが、レクトのRPAに秒殺される。その後「人間にしかできない仕事の価値」を諭され改心。現在はフットワークの軽い優秀なフィールドワーカーとして市場を駆け回っている。

ミレナ

役割:システム管理アシスタント

状況:南方連盟の凄まじいアナログ書類の山にドン引きしていたが、RPAの導入で一瞬にして片付いたことに歓喜。浮いた時間で新作のスイーツ開発(創造性)に勤しんでいる。

レオンティーナ

役割:特務チーム研修生

状況:自動化によって生まれた余暇リソースのすべてを、推し(アリア)の動画視聴に全振りするブレない元将軍。

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