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第44話 【ビジネスチャット】の導入と、最強傭兵団の『健康(ダイエット)管理』

学園を中心とした完全環境都市スマートシティは、日々拡大を続けていた。

都市の防衛と治安維持をより強固なものにするため、俺は新たに外部の戦力をアウトソーシング(業務委託)することにした。

理事長室の応接ソファには、大陸全土にその名を轟かせる最強の傭兵団『銀狼の牙』の団長、ガラムが座っていた。

「……はぁ、はぁ。レクト理事長、我々を都市の専属防衛隊として雇ってくれるというのは、本当か……?」

伝説の傭兵と聞いていたが、ガラム団長の姿を見て、俺と財務顧問のアカザワは顔を見合わせた。

彼はかつての筋骨隆々な肉体は見る影もなく、ぽっこりと出たお腹を揺らし、階段を上ってきただけで息切れをしている。背後に立つ副団長や団員たちも、一様に動きが鈍く、不健康な顔色をしていた。

「雇う気はあるが……ガラム団長。ずいぶんと『仕上がり』が悪いようだな。そんな身体で、迅速な防衛任務が務まるのか?」

俺が指摘すると、ガラムは悔しそうにうつむいた。

「面目ない……。最近、各地で平和が続いてな。仕事がない間、安い酒と脂っこいオーク肉ばかり食っていたら、団員全員が重度の肥満(生活習慣病)になってしまったのだ」

「しかも、太って動けなくなったせいで、戦場での『声の掛け合い』が間に合わず、連携がボロボロなんです……!」

副団長が悲痛な声で付け加える。

異世界の戦場では、伝令や大声での指示出しが基本だが、スタミナ不足で声が出せなければ、部隊はあっという間に崩壊してしまう。

「なるほど。フィジカルの劣化と、情報共有コミュニケーションの欠如か。組織が崩壊する典型的なパターンだな」

俺は空中にシステム画面を展開し、傭兵たちのタブレット端末に新たなツールを一斉送信した。

「まずは、情報共有のインフラから立て直す。声が出ないなら、デジタルで連携すればいい。今日から部隊の連絡には、この【ビジネスチャット・ツール】を使用しろ」

「びじねす……ちゃっと?」

「部隊全体に瞬時に情報を共有できる魔法の掲示板だ。用途に合わせて『チャンネル』を分けることができる」

俺は画面を操作し、デモンストレーションを見せた。

「例えば『#全体連絡』で俺からの作戦指示を流し、『#第1部隊_前衛』で現場のリアルタイムな状況を報告させる。敵の弱点や増援の位置も、テキストと画像で一瞬にして全員に共有シェアできるんだ」

「おおおっ……! これなら、わざわざ伝令が戦場を走り回る必要も、大声で喉を枯らす必要もないのか!」

「さらに、このツールは【REDANGEL】の支援チームとも連携(API統合)されている。怪我をしたら『#医療SOS』チャンネルに書き込むだけで、即座に治癒士が飛んでいくぞ」

「なんという効率的で完璧な連携システム……! これなら、今の鈍った我々の身体でもなんとか……」

ガラム団長が歓喜するが、俺は厳しい視線を向けた。

「ツールを入れただけで満足するな。根本的な原因である『不健康な肉体』を改善しなければ、真のパフォーマンスは発揮できない」

俺はさらに、傭兵たちの端末に【AI健康管理ダイエットアプリ】をインストールした。

「今日からお前たちの食事は、AIが完全にコントロール(コンサルティング)する。脂っこい肉と酒は禁止だ」

「そ、そんな殺生な! では俺たちは何を食って力を出せばいいのだ!」

「これだ」

俺がシステムで錬成し、テーブルの上にドサッと置いたのは、見たこともない細長い麺と、緑色の液体が入ったジョッキだった。

「ルチンと食物繊維が豊富で、低カロリーなのに腹持ちが抜群に良い奇跡の健康麺……【魔導・蕎麦そば】だ。そして、不足しがちなビタミンを完全補給する【特製・野菜ジュース】」

「こ、こんな草と泥水みたいなものが飯だと……!?」

ガラムが絶望的な顔で蕎麦をすすった。

ズズッ……。

「……っ!? う、美味い!? なんだこの喉越しの良さと、出汁の効いた深い味わいは! 野菜ジュースも、リンゴの甘みが効いていてスッキリと飲みやすいぞ!」

「カロリーを抑えつつ、満腹感と栄養価を最大化するようAIが成分を最適化してある。これを一ヶ月続ければ、お前たちの身体は全盛期以上のキレを取り戻すはずだ」

【そして一ヶ月後】

スマートシティの防壁前に、突如としてはぐれ魔獣の群れが襲来した。

だが、そこに駆けつけた『銀狼の牙』の傭兵たちは、一ヶ月前とは別人のように引き締まった、無駄のない彫刻のような肉体を取り戻していた。

『#全体連絡:敵はBランク魔獣の群れ。これより迎撃を開始する!』

ガラム団長がタブレットに(あるいは音声入力で)指示を飛ばす。

『#第1部隊:右翼から回り込みます!』

『#狙撃班:高台より牽制射撃開始。対象のタゲ取りをお願いします』

チャットツールを通じた音無しの完璧な連携。

かつての鈍重な動きは完全に消え去り、蕎麦と野菜ジュースの健康生活でスタミナを限界突破した傭兵たちは、流れるような無駄のない動きで魔獣の群れをあっという間に殲滅してしまった。

「素晴らしい……! レクト理事長のツールと食事管理のおかげで、我々はかつてないほどの完璧なチームになれた!」

ガラム団長が、スッキリと痩せた顔で歓喜の涙を流す。

「対象者の健康状態までをも伴走し、組織のポテンシャルを最大限に引き出す……これぞ究極のマネジメントですね」

アカザワが、完璧に機能し始めた都市防衛網を見て満足げに頷いた。

「よし、これで防衛力も盤石だな。今日の昼飯は、俺たちも健康的に蕎麦にするか」

俺たちは、すっかりスリムになってキレキレの動きでパトロールに向かう傭兵たちを見送りながら、冷たいざる蕎麦を啜って平和なスローライフを満喫するのだった。

キャラクター・プロフィール

レクト

役割:主人公(日本創紀学園・理事長)

状況:肥満と連携不足で崩壊しかけていた傭兵団に対し、【ビジネスチャット・ツール】による情報共有の革命と、【蕎麦&野菜ジュース】による徹底したダイエットコンサルティングを実施。最強の都市防衛部隊を完成させた。

アカザワ

役割:財務顧問

状況:傭兵団の劇的なビフォーアフターを見て、学園の提供する健康食(蕎麦と野菜ジュース)を都市の新たな特産品としてブランド化するビジネスチャンスを画策している。

ガラム(New)

役割:傭兵団『銀狼の牙』団長(コンサル対象者)

状況:平和ボケと暴食で重度のメタボになっていたが、レクトの指導によって見事な肉体と健康を取り戻す。チャットツールを使いこなす、ITリテラシーの高い近代的な指揮官へと生まれ変わった。

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