第42話 【カーナビ・プラス】による兵站構築と、新たな福祉拠点『ナゴミナ』『ナゴミン』
王国の「国家再編計画」が始動し、腐敗していた統治機構は俺のシステムによって次々とクリーンなものへと書き換えられていた。
その改革の第一歩として、俺たちは王都の貧困層や身寄りのない子供たちを保護・支援するための新たな福祉拠点を設立した。
それが、総合支援施設『ナゴミナ』と、その分館である『ナゴミン』だ。
ある日の午後。
日本創紀学園の理事長室に、俺がそれらの施設の【サービス管理責任者】として直々に任命した優秀なスタッフ、カメイが駆け込んできた。
「レクト理事長! 『ナゴミナ』と『ナゴミン』の運営自体は、作成した個別支援計画のおかげで順調なのですが……王都の物流網に異常が発生しています!」
カメイがタブレットを操作し、王都の地図を空中に投影する。
「学園のスマートシティから両施設へ向かっていた支援物資の輸送隊が、王都の迷路のような旧市街で次々と迷子になっているのです。どうやら、再編計画に反対する旧貴族の残党たちが、腹いせに道路標識を偽装し、道を物理的に封鎖しているようで……」
「なるほどな。いくら施設が立派でも、そこに血を通わせる兵站(物流)が断たれれば、福祉は立ち行かなくなる」
俺はコーヒーを飲み干し、システムのコンソールを展開した。
「アナログな看板の偽装や、物理的な封鎖なんて、データの前では何の意味もないってことを教えてやる」
俺は、輸送隊のドライバーたちが持っている高スペック端末に、新たなアプリケーションを強制インストール(プッシュ配信)した。
【Execute:Dynamic_Route_Navigation_Plus(動的経路案内・プラス)】
「これは、上空の監視ドローンと王都のあらゆる交通データをリアルタイムで同期する、究極のナビゲーション・アプリだ」
俺が説明すると、財務顧問のアカザワが興味深そうに眼鏡を押し上げた。
「ただの地図ではないのですね?」
「ああ。渋滞、道の封鎖、さらには天候や路面状況までをAIが瞬時に計算し、『今、最も早く安全に着く最適ルート』を秒単位で再計算し続ける。偽の標識など完全に無視して、到着時間を1分の狂いもなく導き出す」
【その頃・王都の旧市街にて】
「ひゃははっ! あっちの道もこっちの道も、全部『行き止まり』の標識に書き換えてやったぜ!」
旧市街の路地裏で、旧貴族に雇われたゴロツキたちが下品な笑い声を上げていた。
彼らは、学園の輸送隊が迷い込んでくるのを待ち伏せし、物資を強奪する手はずを整えていたのだ。
だが、待てど暮らせど輸送隊はやってこない。
「おい、どうなってんだ? もうとっくに到着する時間だぞ?」
ゴロツキのリーダーが首を傾げた、その時だった。
『目的地周辺です。音声案内を終了します。お疲れ様でした』
ゴロツキたちの背後……絶対に馬車など通れないはずの細い抜け道から、空飛ぶ移動支援車両が音もなく現れ、彼らを完全に飛び越えて、あっさりと『ナゴミナ』の搬入口へと到着してしまったのだ。
「な、なんだと!? なぜ俺たちが仕掛けた罠も偽の看板も、全部完璧に回避してきやがったんだ!」
「対象者の生活を脅かす物流妨害は、我々が排除する!」
パニックに陥るゴロツキたちの前に、真紅のコートを纏った特務支援チームのコイケとミクニが立ちはだかった。
「お前たちが道を塞いだという情報は、数分前にはすでにシステムの【クラウド渋滞情報】にアップロードされていた」
ミクニがタブレットを操作すると、周囲の路地に隠れていたゴロツキたち全員の足元が、光の鎖によって瞬時に拘束された。
「ひぃぃっ! 俺たちの居場所まで完全にバレてる!?」
「カメイ責任者! 害虫の駆除完了です! 物資の搬入をお願いします!」
コイケの呼びかけに応じ、施設からカメイが出てきて、ドライバーたちとスムーズに物資の受け入れを開始した。
「ありがとう、コイケさん、ミクニさん。これでナゴミナとナゴミンの利用者たちに、温かい食事と清潔な衣服を予定通り提供できます」
カメイの的確な指示により、大量の支援物資は瞬く間に施設の倉庫へと最適に配置されていった。
【日本創紀学園・理事長室】
「……というわけで、物流の最適化も完璧に機能しました。カメイのサービス管理能力も申し分ありません」
モニター越しに報告を受けた俺は、満足げに頷いた。
「よし。これで王都の再建も一気に加速するな。今日は大仕事だったし、みんなで美味いものでも食いに行くか」
俺は、アカザワと、帰還したコイケたちを連れて、スマートシティ内に最近オープンしたばかりの超人気店へと向かった。
回転寿司・海竜『トリトン』。
近海で獲れたばかりの極上の新鮮なネタを、AIによる完璧な温度管理で提供する、大行列必至の名店だ。
「うおおおっ! このサーモン、脂が乗ってて最高に美味いです!」
「炙りえんがわも絶品ですね……。物流が最適化されているからこそ、これほど新鮮な海の幸が内陸の都市でも味わえるのですね」
コイケが目を輝かせ、アカザワが感動に震えながら寿司を頬張る。
「しっかり食えよ。明日からも、対象者たちのために完璧な伴走支援を続けるからな」
俺は分厚いホタテの握りを口に運びながら、頼もしい仲間たちと共に笑い合った。
あらゆる障害をシステムで回避し、最短ルートで幸福へと導く。俺たちのナビゲーションは、これからも大陸中を正しく導いていくのだった。
キャラクター・プロフィール
レクト
役割:主人公(日本創紀学園・理事長)
状況:支援施設への物流を妨害する残党に対し、最強の経路案内アプリ【動的経路案内・プラス】を導入。偽装工作をAIのリアルタイム更新で無力化し、兵站を完璧に維持した。
カメイ(New)
役割:総合支援施設『ナゴミナ』『ナゴミン』のサービス管理責任者
状況:レクトから王都の新たな福祉拠点の管理を任された優秀なスタッフ。個別支援計画の作成から現場の物資管理まで、施設運営を完璧にこなすプロフェッショナル。
旧貴族の残党
役割:ざまぁ対象
状況:看板を書き換えて物流を妨害しようとしたが、GPSとAIを駆使するナビアプリの前に完全にスルーされ、待ち伏せしていた所をコイケたちにあっさり捕縛された。
コイケ&ミクニ
役割:特務支援チーム【REDANGEL】
状況:ナビアプリと連動した位置情報共有により、ゴロツキたちの潜伏場所をピンポイントで特定し、瞬時に制圧。カメイの施設運営を物理的にサポートしている。




